2020年1月13日月曜日

フルーティふたつ

コーヒー豆は「喫茶ニャーゴ」と決めているが、旅先で自分のために選ぶコーヒーは別もの。
用事がありごくたまに行く海辺の街で通りかかった小さなコーヒー屋の扉を押す。

コーヒーは大抵その店のブレンドに決めることが多いがそこにはブレンドはなかったので、コーヒーは好きですけど全然詳しくないので教えてください、と言うと、深煎りがお好きですか?と訊かれ、いえ、たぶん深くないほうが好きですと応えると、フルーティなのはいかがですか?果実がついたまま焙煎するとフルーツのような味になるんですよ、と言われてそれは飲んでみたいと思い即決。改めて店内を見回していると、あ、このコーヒーもフルーティでミルクを入れるとロイヤルミルクティーみたいになるんです、と言われて唸る。ではそれもお願いしますと言ってコーヒー豆をすっかり挽いてもらうまで用事があった場所で用足しをすることにした。

翌朝ていねいに淹れたそれは、本当にフルーティな味わいのコーヒーであった。

別の日、やはり用事があった場所へ行ったのちにそこの一階の、いつもは通りすぎるだけのカフェでなにか飲みたくなって店主おすすめのマダガスカルのココアをいただく。普段はアルコール以外はテイクアウトしかしないせっかちな性質なのにどうした風のふきまわしか。

おすすめのココアとはどのようなものか訊ねると、フルーティな味わいとのこと。マッチさん(私のこと)はコーヒーがお好きだからどうかなと思ったんですけど、と差し出されたそれを口にすると、今までに飲んだことのない甘くないフルーティな味わいのココアであった。そのままでも十二分に美味しかったが、残りわずかになったらお砂糖を入れるとまた美味しいですよと言われたので忘れずにそうしてみたらこれまた味わったことのない味に。

同じ日に異なるフルーティな飲み物を味わって、悩んでいたことを一瞬忘れた。

美味しいものってちょっと怖い、とポルトガル人ガイドが主人公に言っていた小説を思い出したが、悪い気は少しもしなかった。

2020年1月9日木曜日

いまさらながら

明けましておめでとうございます。
今年こそ、去年まで出なかった本気を出す!

と心に決めて本年2度めのおみくじを引くも、まさかの凶。なかったことにしてもう一度引くと末吉。1度めもたしか末吉。
神頼みする気まんまんだったくせに、おみくじの言いなりになんかならないぜ!と鼻息荒くしております。

2019年12月25日水曜日

そしてまた酒を呑んだ

前夜の酒が残っており、意識が朦朧としたまま労働を終えた夜。早く帰ってお風呂につかって本の続きを読んで、とふとんの感触を思って家路を急いでいても、赤ちょうちんが目に入ったとたん引き戸に手を掛けてしまうのはなぜだろうか。
今夜はここだな、ここだもなにもその道を通っているのだから最初からその気なんだよなぁ、と店を覗くと珍しいことにがらがら。そういえばいつも満員のあの店もあの店も今日は閑古鳥が鳴いていた。
店内には知っている顔ばかり。完全に自宅状態。
とにかく冷えていたので熱燗をお願いすると、ハセガワさんこっちへ来なさいよと仲良し社長・社員コンビが赤い顔で手招きするが、まだ飲んでないんだからまずはここよ、と季節の花のある特等席をママが指定。
やってきた熱燗を両手で抱えてホッとしていると、クリスマスなのに熱燗か、と仲良しコンビ。いいんです、私はこれが飲みたかったんです。
カウンターの端にはゴルチェおじさん、後ろはジオラマおじさん。今夜は一段と常連色が濃い。久しぶりに仲良しコンビと話したくて途中から席を移り、愉しい話もまじめな話もした。やっぱりこの人たちはなかなかお目にかかれないほどいい人たちだなぁとしみじみ思ったのは、紙カツをごちそうになったからではない。
よいお年を、と二人とかわしたあいさつがしみじみよかった。


ことり:
この人、いつも酒くさいよね
たぬき:
酒飲んで帰ってきたのに、シメでハブ酒だって
鯛:
見ててごらん
そのうち冷蔵庫を漁ってなにか食べだすよ

2019年12月24日火曜日

二日酔いのろくでなしにも 沈丁花はやさしい

ベランダの沈丁花のつぼみが少しずつ大きくなってきた。
ぼっちゃんとお別れした帰りに花屋さんで見つけた沈丁花。あの香りで真冬だな、と感じる大好きな香り。雑な育て方なのに今年も無事に育ってくれてうれしい。


マラソンの練習会メンバーと、イルミネーションきらめく銀座でしゃぶしゃぶ忘年会。楽しみにしていたのになぜか胃痛が顔を出してきたので、普段は丸腰だけれど沖縄で発見した琉球酒豪伝説(ウコン)と胃腸薬をキメて出陣。なぜそこまでして酒を飲むのか、と考えてはいけない。

久しぶりに顔を見る面々にうれしくなってテンションが天井を突破。もはや家族同様、気楽な存在になりつつある好きな人たちばかりなのだ。
途中からピッチャーハイボールの色が濃くなり始め、ぎょうざハイボール会のデジャヴかと思ったあたりまで覚えている。あとはメンバーの撮ってくれた写真を見て落ち込むのが常だが、どうやら今回は何事もなかったようだ。と思ったが、朝ゴミ箱の奥まで押しこめられた記憶にない食べもののゴミを発見してやはり落ち込む。翌朝の自分に気を遣って隠ぺいしたつもりだろうが、そんなやさしさはノーサンキューだ。

二日酔いのときはカレーと昼寝にかぎる、という金言は「深川福々」編集長のもの。激しく同意。しかし二日酔いではなく酒が残っているときはどうしたらよいのか。そんなときは、温かいおそば。
お弁当のおかずはたっぷりつくってあるが、こんな日のランチはおそば。そば出汁の匂いでアルコール臭さも消える。
しかし、こんな食べかたをしてはおそばに失礼ではないだろうか。と反省するも、やはりおそばのおかげで気分はすっきり。今夜こそ、早く寝るのだ。

2019年12月23日月曜日

たまにおさわりOKな両国図書館

日曜日、ごくたまに飲みに行く「両国図書館」はフンド氏が見つけたお店。
フンド氏と行くときにはどのお店でもおしゃべりと食べることに夢中で店主と話したことはなかったが、ソロ活動するようになってお店の人はお客さんのことをよく見ているのだなぁということがわかり、またお客さんも他のお客さんを見ていることがわかって気恥ずかしくなることもしばしば。

そこは店主夫婦が無類のねこ好きであり、お店の裏のガレージに通いのねこを3匹住まわせている。おさわりOKの子が出勤(出勤?)しているときには、あの子来てますよ、と教えてくれる。あるときは重要な役目を仰せつかった。ぼっちゃんはあまり好まなかったチャオちゅーるをあげてほしいと。またあるときは、なにか不満があるのか大声で鳴く子の相手をしてほしいと乞われ日ごろのねこ不足を補うがごとくモミモミ。
マラソンと読書が好きなお客さんを紹介してくださったり、矢沢永吉の熱狂的なファンのお客さんが武道館帰りにDVDを観たいというのでご一緒させてもらったり。
このお店でめずらしく深酒したある日のこと。
店主が他のお客さんと話すのを聞くともなしに聞いていると、聞き覚えのある店名が耳に飛び込んできた。それは、フンド氏の父上行きつけで今では私が行きつけとなった少し離れた場所の酒場。思わず店名を聞き返すと、行ったことありますか、と店主。聞くと店主どうしが幼なじみで互いの店を行き来しているという。世間はせまいが墨田区もせまい。


フトコロがさみしいのでおとなしく家で晩酌していたある雨の晩。
突然いたいけな子ねこたちが箱の中を動き回る動画が店主から送られてきた。メッセージはなし。これはもしや、捨てねこではないか。
このとき既に白ワインを半分以上空けていた。RHYMESTERのDVDのオーディオ生(ビール)コメンタリーをBGMに、創作意欲がむくむくふくらんで一心不乱に料理をしながらそこそこ酔っていたが、これは一大事と上着をひっかけて参上。
あれ、来てくれたんですか、とのんびりした声の店主が出迎えてくれた。
捨てねこたちはどこに?と尋ねると、ああ、あれはうちの子たちの赤ちゃんの頃。かわいいでしょう、と店主。
もうねこは飼わないと心に決めていた。しかし今なら飼うことのできる家に住んでいるので決心して駆けつけたのだが、ああ、それならよかった、と気が抜けて一杯。おっと今日はフトコロがさみしいのであった、ときっちり2杯で立ち上がろうとするも、とっておきのハイボールをごちそうになり、やっぱり酩酊。

クリスマス翌日の正月ムードは嫌いじゃない

なぜ毎日毎日クリスマスソングが流れているんだろうと少々うるさく思っていたが、知らぬ間にクリスマスに近づいているということに、友達に誘われて参加したイルミネーションランで気付いた。
文句を言いながらも、立教大学のツリーには顔が緩んだ。写真はなぜか東洋大学だけど。
クリスマスには関係ないけれど、椿山荘のお庭はすてきだった。冬の夕暮れの庭園には着物姿の女性がちらほら。あれはもしやお見合いかしら、などと下世話なことを言い合いながらハードな階段を及び腰で走った。
KITTEに到着する頃には脚が疲れてへとへと。丸の内のあまりの混雑ぶりにミレナリオを思い出した。好奇心旺盛なステキ奥さまである友だちとちょっとだけ飲んで、次回飲むお店も決めてミッドタウンのイルミネーションを横目にグッバイ。

毎年クリスマスは特別な気持ちで「ニューねこ正」の暖簾をくぐる。(うそ)
チキンには違いないし、そもそもずいぶん前から特別感など失せている。
プレゼントだって、もらうのもあげるのも欲しいものがあったとき・お金を持っているときでよい。
そうだ、プレゼントを買おうか、と家を出るも「喫茶ニャーゴ」へ寄ったり
ついでに足を延ばしてぶらぶら歩いていて食パンを2斤分も買ってしまったり
ちょっと一服、と寄ったデパートで衝動買いしてしまったり
降りだした雨のせいで店じまいしていたフリーマーケットの会場を通りがかって、雑貨には興味がなくなっていたのにあれこれ衝動買いしてしまったり。

ひよこ:
あら、こんなお皿あったかしら。
ことり1:
しけてるわね。木の実全部枯れてるじゃない。
ことり2:
ぺっぺっ
ことり3:
こっちはなに?食べられないじゃないの。


かっぱ:
(誰だろう あの子たち)
パンダ:
またヘンな子たちを連れてきた・・・

2019年12月17日火曜日

今年も元禄市

友だちに連れられて、男らしい店名の立ち飲み屋からしっとりした雰囲気の立ち飲み屋へはしご酒した週末。
今年初の海老しんじょやいわし刺等の新鮮な魚とずっと誰かに聞いてほしかった黒い話題を肴に飲んで飲んで、暗闇に光る銀杏の木を眺めながら歩いて帰宅。立ち飲みのはしごは罪悪感少なめでいいかもしれない。

翌朝は「深川福々」最新号の配布のお手伝い。徒歩圏内にこんなにたくさんステキカフェがあったのか、と驚いたうちのひとつでみんなとランチした後にずっしり重いふかぷくを担いで配り歩く。ごぶさたしていた深川のみなさんは変わりなくて安心。
この日は年に一度の大好きなお祭り・元禄市が朝から行われているために両国(のほんの一部)は大にぎわい。元禄市初日のこの日はご主人の転勤で秋田からやってきた友だち夫婦と待ち合わせており、配布を終えて両国駅へと急ぐ。
秋田で「生活選手」という雑貨店を営んでいた友だちは、仕入れなどでよく上京していて問屋街に程近い両国のホテルを利用していた。ご主人にあのホテルだよ、と説明しながら、東京の地酒が飲める立ち飲みで駆けつけ一杯。秋田に遊びに行ったときは寝起きのぶちゃむくれの顔も見せていたというのに、明るいところでしらふで会うと照れる。

それから回向院でねずみ小僧のお墓を冷やかして、待ちに待った(私が)元禄市へ。
毎年楽しみにしているグリューワインは、こんなに美味しかったっけ、と毎年驚く美味しさで、初めて飲んだという夫婦も感激していた。しめしめ。
道の駅以外で買いものをする姿を見たことがなかった友だちが、光の早さで買いものをしていた。自分の大好きなお祭りで友だちが買いものをしている姿を見るのはうれしい。
さらにそのあと行った「おいてけ堀」で酔った彼女を見たのもおもしろかった。
元禄市は、毎年12月第二週の土日の2日間、討ち入りの舞台となった吉良邸跡地を中心に開催される。小さな小さな吉良邸跡地の周辺のほんの小さなエリアで、ちゃんこや元禄そば、おしるこ、ふかしいもに焼きそばなど町内会が運営するお店や、あなぐらのような近所のイタリアンレストランの供する先ほどのグリューワインにトリッパ、近隣のアパレル会社などの洋服や下着に靴、ここでしか入手できない靴下やメイクブラシにパフ、佃煮や和菓子に大相撲カレンダーも扱うお店などがひしめき、墨田区太鼓連盟の太鼓演奏に相撲甚句まで聞くことができるのだ。そのほかに駅近くの毛糸の会社でも珍しい毛糸や洋服を販売しているし、近隣の小さな会社もお店を出しているので、くまなく歩くことが必須。
祭りの準備を始める様子を横目に「深川福々」の配布に出かけ、お客さんがじわじわ増えて身動きとれない中をかきわけて友だち夫婦と落ちあい、さらっと様子を見て回った翌日にやってきた母と妹一家で何往復もして暗くなるまでお店を見て回り、いろいろなものが売り切れて店じまいをするお店が増えて、母を見送った帰りにはきれいさっぱり、祭りのあとはなくなっていた。

今年いただいたのは元禄そば、焼きそば、ちゃんこ、トリッパ、きびだんご、樽酒、グリューワイン3杯。今年入手したのは大相撲カレンダーにドレッシングと豆。買ってもらったのはステキタオル。
ふくらはぎがやけに疲労していると思ったら、ずっと歩きまわっていた上に週末から立ち飲みのお店ばかり5件も行っていたことを思い出した。