2019年10月31日木曜日

秋の気配が消えた夜

うすうす気づいてはいたけれど、もしかして、もしかしたら、秋かもよ。
だるま:またなんか言い出した

少し前からそうなんじゃないかって思ってたのだけど、やっぱり、秋みたい。
青いかに:もしかして・・・

口に出すと本当になるから言わないでいたけれど、カラダがもう秋だとわかってしまった。
だるまちゃん:出た、熱しにくく醒めやすいやつ。

こないだもいつものあれをサボってしまった。
ぶた:めずらしい。あれだけは欠かさず行っていたのにね。

夜をサボっても朝があるさ、と天気も確認して意気込んで帰ったのに。
肉バッグ:朝もサボるんじゃないの、とうすうす気づいていたくせに。


早朝に下見したい場所があるから、それも兼ねてあれをしようと思っていた。
やる気まんまんだった。
なのに、夜あれをさぼった時点で飲み仲間に連絡しており、さらにその日は振られたというのに、のこのこ赤ちょうちんを目指した。
めずらしくお客さんの少ない「ニューねこ正」で本を開く。そういえばこんな時間を最近すごしていなかった。
禁断の熱燗に手を伸ばして、明日は早起きするから熱燗は1本にしておこう、と熱い酒を啜った。

静かだった店内も気付けばほぼ埋まっており、また引き戸を開ける音がした。
あら、今夜はいらっしゃると思ってたわ、と女将が声をかけると、そうですか、と笑う声。どの常連さんかな、と思いながら大事に酒を啜っていると、こんばんは、と隣に座ったのは、たまにここで会って話すスリムランナー。

彼は相当エリートなランナーのはずだが、愉しむために走っているところがいい。
なんだかもうイヤになっちゃって、と打ち明けると少し黙って、島とかどうですか、と唐突に言う。島でハーフとか楽しいですよ、参加賞で泡盛なんかもらえるし、フェリーで移動するのも面白いですよ、との言葉に一気に引き込まれた。
結局熱燗はもう1本追加して、気持ちは既に島へ飛んでいた。
ざるそば:なんて単純なんだろう・・・

2019年10月30日水曜日

名古屋と和解しなければ

金沢から福井の旅を終えた翌日は、次号の「深川福々」編集会議。
次号のスタッフコラムも担当することになり、前号に続き今回も得意分野なので今から楽しみ。
スタッフのひとりが連れてきた友だち2名が2名ともおもしろそうな人で、翌朝に健康診断を控えていなければもっとお話ししたかった。最近おもしろそうな人とよく出会うが、実に幸せなことだなぁ。


とりかかっていた作品がどうも気に入らなくて一時保留している。
最近なかなか神が降りてこなくて、と先日「秋の収穫祭」で隣り合った画家でアーティストの子に打ちあけたら、そんなときにぴったりの本があると勧められた。勧められた翌日に、その本も見ぬ間に神が降臨。
いいもの、できるかな。


先日の金沢・福井の旅のあと経由した名古屋には、学生時代に住んでいた。
今から思えば学生時代はそれなりに楽しかったはずだけれど、名駅の昔の地下街の匂いを思い出すだけでなぜか気分が沈む。
学校が嫌いで、授業をさぼっては名駅をぶらぶらしていたからだ。
夕方、帰宅時間が迫ったころのあの地下街の匂いは、守口漬とほこりっぽい古びた匂いの混じった絶望的な匂いであった。
そろそろ名古屋とも和解しなければ。

2019年10月29日火曜日

まつぼっくりがあったとさ

初めての金沢は、観光ゼロに終わった。
しかし、地元出身のラン仲間の案内でおいしいものばかり食べて飲んで、忘れちゃなんねぇソウルフードも食べることができたし、念願の駅ソバも堪能した。なんといっても気楽な仲間ばかりの旅だったのでたのしかった。
旅先で友だちに会うのもいいものだった。旅先で友だちになった人たちも気持ちのよい人たちだったし、泊めてくれた友だちの実家も不思議に落ちつく雰囲気で、文句なしの旅だった。マラソンを除いては。


金沢まで行って観光しないなんて、と少しは思ったが、じゅうぶん楽しかったからいいや。友だちとは駅でさよなら。普段ゆっくり話すことのないラン仲間と初対面のエリートランナーたち、みんないい人だったな、としんみり。集団行動は苦手なはずなのに、駅で手を振っただけでさみしい気持ちになるから不思議。
前夜の酒で頭も胃も動かないまま、目指すはかこさとしさんの故郷・福井県武生。二度めの訪問だが、今回は逆方向から行くので気分も違う。前日のマラソン大会でのどしゃ降りがウソのような、ぽかぽかしたおだやかな日。先日「秋の収穫祭」で入手した福井の本を開くも、眠気に負けた。
武生駅でも駅ソバを堪能し、石畳を踏みしめながら引接寺へ。
着いたのはお昼どきであり、幼稚園の子どもたちのいただきます、の声が響く。隣の丈生幼稚園の園児たちだろう。このあたりの独特のイントネーションではしゃぐ声がのどかで、すいません赤毛の中年通ります、と心の中で頭をさげて門をくぐった。

実にお寺の多いまちだが、神社仏閣にさして興味のない私がここへ来たのは、かこさとしさんのお墓があると知ったから。ようやく見つけた彼のお墓は、最後までこんなにすてきにしめくくったなんて、と笑いが浮かぶほど彼らしいお墓だった。
そこで拾った青いまつぼっくりの松脂がとてもいい香りで、よいおみやげになった。

それから、金沢のラン仲間のご両親にも武生駅前の観光案内所のお姉さまにも勧められて、武生名物・菊人形のおまつりへ。
菊人形の会場の越前市武生中央公園も隣接する越前市立図書館もかこさとしさんの監修によるもので、一歩も動きたくないくらいたのしい。あんまりすてきな場所なのでしばらく眺めてから、かこさとしふるさと絵本館へ。
気づけば帰りの時間が迫っており、用もないのに市役所へ寄ったり、かこさとしさんが幼少期に入院したという病院の看護師さんと立ち話をしたりして帰宅。次回は泊まりで行こうと決心した頃には、金沢マラソンの苦い思い出などきれいさっぱり忘れていた。

2019年10月24日木曜日

課題はあと2つ

うっかり「はい」と返事をしてしまうことはよくある。
それが4つ続いているだけよ、と自分に言い聞かせているうちに残りあと2つとなった。

毎週月曜日のランの練習会に今週も出席することができなくて、もう金沢マラソンには遊びにだけ行くことに決心。
月に一度のべつの練習会の仲間からイレギュラーな皇居ランのお誘い。この仲間たちとは、ランの後に行くおいしいお店での食事も楽しみなのだが、やることがまだあと3つあったので今回はランのみ参加することに・・・したはずが、誘われてついつい、ちょっとだけよ、と練習後またまたおいしいお店へ。
走ることがとんでもなく早い人たちと、今まさに伸び盛りの人。タイムの話をされるのは苦痛でつまらなくて苦手なはずなのに、この人たちの話がおもしろいのはなぜだろう。



うっかり返事をしたひとつ、こちらもずいぶん昔からお世話になっている湘南ねこ美術館での「ねこたちのクリスマス展13」の作品が、ようやく完成した。
先日お会いした館長さんや美術館2Fの家主・まりんちゃんにまた会いたいので、できたら2回は行きたいものだ。
ぼっちゃんがいなくなってから、ねこの絵がうまく描けなくなってしまった。
ストックがあってよかった。
11/2(土)~12/24(火)の土・日・月曜日、葉山の海が見たくなったらぜひ。



金沢マラソンから戻ったら、次はこちらの制作。
甘夏書店での「本と遊ぶブックカバー・しおり展」のための作品をつくらなければ。
実はこちらにもしばらく遊びに行っていない。
ここへ行かずに今までなにをしていたのだろう、と思い返すも思い出せない。
途中まで描いた絵がどうにも気に喰わないので、金沢から戻ったらやり直すつもり。
11/9(土)~11/30(土)の日・月・木・金・土曜日、知らない本に会いたい方はぜひ。



うっかり返事をしたうちのひとつ「秋の収穫祭」は、文字通り収穫のあるお祭りだった。
普段コーヒー豆を買うお店だし顔見知りのバッグ屋さんや画家さんもいて気楽に・・・ということはなく、久しぶりのマッチ売りにお客さんが来るたびにうろたえていた。おいしいきのこのハンバーガーに出店者全員が魅了されたり友だちも来てくれたりして、あっという間のお祭りだった。お買上げくださった奇特な方々、ほんとうにありがとうございました。
画家というよりアーティストである彼女と、アイデアについて話した。彼女のあふれる発想がどこから来るのか不思議だったのだ。いい時間だったなぁ。

朝からひどい雨で芯から冷える寒さであったが、お昼すぎにウクレレのライブが始まると同時に陽が射してきたのには驚いた。ハワイアンは祈りの曲が多いそうだし、演奏していた彼が晴れ男とのことで、少しだけ晴れ間を見せてくれたに違いない。
帰宅する途中「メンキー&ノンキー」の店主と遭遇。
その洋服どこかで見たような気が、と言われて己を見ると全身「メンキー&ノンキー」の洋服であり、なんとなく恥ずかしくなった。

2019年10月21日月曜日

明日は秋の収穫祭

いよいよ明日は
年に一度の「秋の収穫祭」だ。

明日は雨。
雨は嫌いじゃないが、せっかくなのでやっぱり降らないでほしい。なんなら小雨で手を打ちませんか。
ねまちのマッチとシールと、旅のおともにぴったりのブックカバーとともに中年がお待ちしております。

このお祭りが終わったら、次はアレとあれとアレの準備が待っている。
いろいろ抱えているわりにどれも滞っているのだが、思いきって葉山の湘南ねこ美術館へ出かけた。締切の迫っている「ねこたちのクリスマス展」とは関係なく、友人の展示を観に行くため。

お久しぶりねの館長さんは変わらずねこに似ており、2階の家主のまりんさんとも初めましてのごあいさつをかわした。展示を眺めて館長さんやまりんさんといろいろお話しするうちに、昔の感覚を少し取り戻せたような気がした。
まりんさんの目の色は、本当にきれいな水色。
海を見ながら海岸を歩いて駅まで戻り、一杯飲んで帰宅。


翌日は正午前から江東区民まつりの角乗のお披露目。
木場角乗保存会の会長や副会長、そして角乗を教えてくださった先生の雄姿を見たくてジョグがてら木場公園へ。
途中からきれいに晴れた10月の空の下での角乗、練習会でお世話になったみなさんの緊張が伝わってきて見終えた後はぐったり疲れた。
会長さんのよく通る口上、紺色の法被姿で次々にみなさんをさばいていく副会長、そして抜群の安定感の先生の姿(特に三方落し)に友だちと黄色い声をあげた。
途中にっこりこちらを見て話しかけてこられた方は江戸文字を生業にされているとのことで、角乗にもくわしくてこれまた江戸弁のかっこいい方。まわりの観客も長年この日に角乗を見ているらしく、批評なぞしていておもしろかった。
角乗を見ている間も漂ってくるしょう油の焼ける香ばしい匂い。
江東区民まつりはとにかく規模が大きく、小銭しか持ってきていない身としては目の毒、鼻の毒。友だちと別れてジョグに出かけた。
遊歩道を進んで見慣れたクローバー橋に出ると、どこをどう間違えたのか目指していた場所とはまったく違う場所に出た。がっくりうなだれて帰宅を決意。のつもりが未練たらしくまた木場公園へ。おいしそうな匂いだけを嗅いですごすご帰宅ジョグ。
ゆっくり昼食をとり、ずっと切らしていたコーヒー豆を求めて「喫茶ニャーゴ」へ。
そこで火曜日の「秋の収穫祭」のことを思い出して(忘れてなんかいないけど)あわてて足りないものなど考えて歩く。

足りないものだらけだけれど、雨の休日は「秋の収穫祭」にぜひお出かけください。

2019年10月18日金曜日

それとこれとは話が別

どうしても渡したいものがある、という友だちとなつかしい店で飲んだ台風上陸の前日。
雨は降り始めていた。
席につくなり友だちが袋を差しだした。賢くて優しい友だちならではのプレゼントにうれしくなった。

この日は「深川福々」発行日でもあり、最新号を100部ほどわけてもらった。
そのお店では焼酎ハイボールと決めている。
いくら飲んでも酔わない不思議な酒だ、というのは初めて「深川福々」で記事を書かせてもらったときのこと。

台風上陸当日は水道水や風呂水を溜めて、おにぎりや常備菜をつくって冷蔵庫の整理。
本棚の整理を始めたのは、調べたいことがあったから。なのに気付けば模様替えまで始めており、ついでに衣替えもアイロンがけも終えていた。
ひと息つくと、酒を飲んでもよい時間。

これから調べものをするから酒はいかん、でも小腹が減ったな、常備菜つくりすぎたから食べちゃおうか、水分代わりに薄いビールを飲もうか、ああ薄いビール飲んじゃったな、と白ワインを開けたら同じようなことをしている近所の友だちからメッセージが来たのでスマホ越しに励まし合い、余っていた焼酎にも手をつけて、でも調べものについては忘れていないものだから焦りは募るばかりで、じゃあ早くやれば、と思うのだがそれは今ではない、と杯を重ねるうちに外の様子が気になってベランダで一服していると近所の未亡人友だちや幼なじみからメッセージが来て、音楽でも聴きながらいよいよ調べものを始めますか、とRHYMESTERのライブDVDを再生したら、そうだ、RHYMESTERのライブは釘づけになるから「ながら」には向かないんだった、と気付いたが時既に遅し、外の暴風雨の音に負けじと歌って踊っていたら遠方の友だちや同級生からメッセージが来てありがたいな、と日本酒を片手に外を見るといつの間にか静かになっており、急に酔いが回った。
で、調べものは?


台風一過の翌日は借りていた本をものすごいスピードで読みながら「サロン・ド・こけし」の女主人の盟友のもとへ向かう。
秋らしくばっさり髪を切ってもらって、さて今夜はどこへ飲みに行こうかなと歩いていると、台風が怖いと昨晩メッセージを送ってきた未亡人から飲みませんかのお誘い。
珍しく日曜日に営業している、私好みのお店に案内してくれた梯子酒癖のある未亡人。開店から閉店まで飲んだ上に隣町へ移動して真夜中まで営業しているお店でまた飲む。


台風一過のそのまた翌日。
今日こそ走るぞ、と久しぶりのランウェアに着替えて外へ出るも雨。怖気づいて踵を返し、なぜかカレーをつくり始める。
「深川福々」を墨田区内のお店に配布する予定だったので、せめて徒歩で行こうと張り切ったがたいした距離ではなかった。この夜はマラソン友だちと久々に会う予定だった。敵も梯子酒癖があるが今夜は一軒で帰ろう、と思っていたのに。
〽飲ませてよ もう少しだけ、でこの晩も午前様。
翌日約束していたランニングが、仲間のひとりが体調不良となり中止になったのは不幸中の幸いだったのか、不幸だったのか。

2019年10月10日木曜日

待ってろ今から本気出す

新しい世界や本を教えてくれて、愉しい情報をたくさんくれて、さらによいアイデアもくれる、逢うとやる気が出る大好きな本屋さん。
しばらくごぶさたしていたその本屋さんから、久しぶりにイベントのお誘いを受けた。
やる気を失っているときだったが、思いきって参加することにしてメッセージのやりとりを終えたとたんにアイデアが浮かんだ。
顔を見て話してもいないのに、メッセージだけでスイッチを入れてくれるなんて、この店主さん、いったいどんなパワーを持っているのだろう、と不思議な気持ちになった。


本と遊ぶ!ブックカバー・しおり展2019
日時 11月9日(土)~30日(土) 12~18時 最終日17時まで
※火・水定休

場所 甘夏書店 〒131-0033 東京都墨田区向島3-6-5 一軒家カフェikkA2F


まだひとつも完成していないけれど、頭に浮かんでいるから大丈夫。
その前に締切の迫っている展示の方もあるんですけどね・・・あとマラソン大会・・・

2019年10月7日月曜日

続・旅人よ

RHYMESTERを地方のライブハウスで観るのは初めてで、しかも幼なじみとRHYMESTERのライブ会場にいるなんて、と興奮しているうちにSEが消えて歓声が上がった。


見えない。
男子率が高いので前が見えない。

でも曲が始まり声が聞こえると、どうでもよくなった。
だって、この夜のライブはRHYMESTERミュージアム。普段のライブでは聴くことのできないクラシック=名曲を、結成時から現在に至るまで時系列で聴くことができたから。
噴き出す汗と涙でぐちゃぐちゃになって、合法的にトびまくった。

スペシャルディナーの前に、実はまた行きたかったお店で祝杯をあげた。
しかしあんなに豪華なセットリストある?
アレもアレもアレもよ?贅沢だよ。
あんなカッコいいアラフィフいる?
など、宇多丸さんに負けないほどマシンガントークは冴えわたった。

その後のスペシャルディナーは、彼女の名を冠したメニューが特に最高でお酒が進んで仕方なかった。
ここの大将は野菜は育てているわ、それらを使ったお料理はすべて手間ひまかかっていておいしいわ、お料理のことを聞けばなんでも教えてくれるわ、しかもそれらをすべてひとりでやってのける、それはもうびっくりするほどすごいお店。だからつい食べすぎて途中でお酒が止まった。

たくさんの新鮮な野菜をいただいて、日付が変わってから帰宅。
それにしても、もっとましな恰好で来ればよかったと反省。
深夜に満腹で洋服を脱ぐことができなかったことと、胸より胃が出ているのを見たのは初めてであった。


昨夜の酒はまったく残っていなかったが満腹はおさまらず。
お昼、食べることができるかなぁなどと言っていたのに
リクエストしたお蕎麦屋さんが近付くにつれて鳴り出した我がお腹。
子どもの頃よく食べたいくちなどのきのこと、細く長く切った長いもの乗ったおいしいお蕎麦で、また満腹になった。食べ終えたばかりなのに、また来たくなった。

あちこち連れていってもらって、ここでまたスットコドッコイが勃発。
時間を決めて焦りたくないからと予約していなかった帰りの交通手段。松本マラソンのランナーや登山客でどの便も満席。しかも遊びすぎて頭がぼんやりして検索が進まず、幼なじみに調べてもらって、普通電車を乗り継いで帰ることに。
最初から最後まで幼なじみに世話になりっぱなしでお礼もできないまま、駅まで送ってもらってお別れ。

車窓を流れる景色を見ながら、普通電車でもやはり立ちっぱなしか、と笑いがこみあげてきた。甲府駅に到着する際に、今ごろRHYMESTERはここでライブ中だな、と思いだして電車を飛び降りたくなったが我慢がまん。

乗換えの駅でホームに降り立つと、風が明らかに冷たくなっている。
昨日駅ビルで購入したものの一度も袖を通していなかったカーディガンが初めて役に立ったのはこのときであった。

旅人よ

これまでの旅史上、もっともスットコドッコイなスタートを切った週末。
まずは二度寝による寝坊。
あんなに早く寝たのになぜ寝坊したのか。お年頃なのだろうか。

あわてて家を出てから信号を待つ間、イヤな予感が背中を走った。
・・・スマホを忘れたのではないか。
時間は迫っている。やはりスマホはなかった。
しかし待ち合わせをしている友だちは幼なじみなので、最悪、実家に電話して幼なじみの実家の電話番号を聞き出し彼女の携帯番号を教えてもらえばなんとかなるだろう。
時間は迫っているが、なんとか間に合いそうだ。
しかしそこでまたイヤな感覚が背中を走った。

ーーーーーー乗車券は、スマホの中ーーーーーー

びっしょりだった冷汗が一度に引き、荷物が急に重く感じられた。

この旅は、そもそもRHYMESTERの47都道府県ライブ初日のチケットを取りそこねたことを幼なじみに愚痴ったことから始まった。
いっそ松本市でのライブに行っちゃおうかな、と口走ったら、付き合うよと彼女が言ってくれたのだ。しかも、別荘のような彼女のすてきな自宅にまた泊めてくれるという。
さらに、私の愛する鰻屋さんでのランチからスタート、ライブ後は彼女の長年のお付き合いの、とにかくおいしいお店でスペシャルディナーの予定まで組んでくれていた。
目当てはRHYMESTERだけれど、スタートは愛する鰻屋さん。ここでしくじったら鰻が去ってしまうではないか。
どうにか約束の時間より少し早く到着する電車に乗ることができて、デッキから外の景色を眺める。
RHYMESTERのライブなのに普段着で来てしまったが、鰻に逃げられるよりはましだろう。特急電車でずっと立ちっぱなしだけれど、ベストコンディションで鰻に逢うためだ。

もはやRHYMESTERが目的なのか鰻が目的なのかわからなくなってきた。
団体旅行のみなさんが絶えずお手洗いに行列をつくっておりデッキはにぎやかだったが、前日聞いた「アフター6ジャンクション」を再度Radikoで聞いて気持ちを高める。(先日iPodを洗濯してしまったのでRHYMESTERを聴く術がなかった)

立ちっぱなしはさほど辛くなかったが10月の松本の風は冷たく、駅ビルで厚手のカーディガンを購入。まだ午前中なのにもういくら散財したのか、と肩を落とす。
しかし、迎えにきてくれた幼なじみの顔を見たら全て忘れた。彼女の自宅に入るともっと忘れた。木のよい香りがするきれいな家。そしてしばらく見ないうちに大きくなった庭木と裏を流れる川に生えている梅花藻というかわいい花。
それから愛しの鰻屋さんで食べたひつまぶしのおいしさといったら、食べるほどに減っていく鰻がさみしくてしばしば手を止めたほどだ。

ライブの時間が迫り、汗くさい普段着のまま致し方なく出発。
私の初デートの地・松本にRHYMESTERがいるなんて、と信じられない気持ちで幼なじみとライブハウスの階段を下りる。

2019年10月4日金曜日

転んでもタダでは起きない

遅刻魔の友人を一時間ほど待つことになり、どうしたものかとあまり知らない街を歩いていると、数ある中でも特に魅力的な赤ちょうちんのひとつの前で足が止まった。
遅刻魔の友人は下戸だし、軽く飲もうかな、と店内を覗くとそこは立ち飲みのお店で、にぎやかだけれどうるさくなく、店内のおじさん客は仲よしで楽しそうだし、さっと飲むにはよさそうだ。
せわしく働くお姉さまは一見の私にもとても親切で居心地もまずまず。さて飲みものをなににしようか、と店内の短冊を見まわして驚愕。とにかく安価だ。増税後の令和のご時世に、本物のせんべろのお店が実在していたなんて。中島らもの時代にせんべろは無くなったと思っていた。
ただし定食にビールなんてのはせんべろとして認めない。ビール1杯でべろべろになるかっての。などと興奮しながら3杯めのホッピーに口をつける。
隣りのテーブルの紳士はこのお店の顔らしく、はい差し入れ、と近くの顔見知りのおじさんにアジフライの皿を渡していた。
最後のしいたけをくわえてホッピーを飲み干したらいい時間。遅刻魔の友人をほろ酔いで迎えると、顔赤いねと言われた。

ただし
もともとこの日行こうと約束していたお店の料理が、おいしいのに苦しくて入らなかったのが誤算であった。

2019年10月3日木曜日

かつお風味のふんどし

いいことがあった友だちと飲んだ帰り道
たまに出くわす「これ」が道に長々と横たわっていた。
力士のふんどし。
両国に住んでいるとこういったものが干してあるのをよく見かけるが、深夜の道端で出会うとは。

いいことがあった友だちと会う前に、お久しぶりねの未亡人会会長とその息子さんとご一緒。
みんなご主人と長年「ニューねこ正」へ通っていて、未亡人になってから改めて通うようになった。案外見られているもので、あなたのご主人素敵な方だったわね、などと今も言われる。

いいことがあった友だちは、えいっと出かけたひとり旅がとても愉しかったと写真を見せてくれた。目当ての場所はひとつだったけれど、偶然行った美術館も大当たりだったとのこと。
年若い友だちで、とても賢くてやさしくて愉しみが多い。そんな彼女の話を聞いているうちに禁断の熱燗に手を出してしまった。ふと隣をみると彼女も手酌で熱燗を味わっていた。

その帰り道に出会ったのが、例のふんどしであった。

2019年10月1日火曜日

初めての信州駒ヶ根ハーフマラソン

文太といつもの道を散歩していたら現れた「3㎞」の看板。
 振り向くと「18㎞」の看板。
翌日は、生まれ育った田舎での「信州駒ヶ根ハーフマラソン」。
どうにもやる気が出ないので、文太に練習に付き合ってもらったものの、みちくさばかりで愉しくて進まなかった。ああ、翌日ここを通るときは、さぞかしくたびれていることだろうなぁ。
文太はなぜかこの道が好きだが、私も好きだ。
文太の選ぶ散歩道と川はセンスがよい。
きんもくせいがあちこちで匂っているのに、ひんやりしていない空気が不思議であった。
翌日は雨の予報だった。
雨の予報だったはずなのに。
どうなってるんだ、と同級生と文句を言っているうちにスタート。

昨日文太と散歩したあたりはスタート後15分ほどだし下りなので、なつかしい風景を眺めながら・・・というわけにもいかず(前週も帰省していたのでさほどなつかしくない)早くもだめな予感。わかっていたこととはいえ、なんだこの坂道は、と毒づきながらヨタヨタ進む。
エイドのアイスを食べていたら見知らぬおじさんが振り返って、それ何個め?と尋ねるので、1個め!と応える。それからそのおじさんと抜きつ抜かれつ、追い抜きざまに互いに声を掛け合い、最後はなんとか追い抜いてへとへとでゴール。(ところであのおじさんは誰だったのだろうか)

見るも無残なタイムであったが、部門別40位でラッキー賞なるものをいただく。
あとはエイドでもおいしくいただいた梨。

大会100選にも選ばれているだけあって、坂道の辛さ以外は文句なくよい大会だった。中央アルプスや南アルプス、天竜川などの写真を撮っているランナーもたくさんいた。
スタッフのおじさんたちの言葉に方言を聞いたのが、知っているだけになんとも脱力ものであった。
暑さのために食欲が湧かず、エイドの手打ちそばを食べることができなかったことだけが心のこり。
山帰りとマラソン帰りの人でごった返す温泉の入り口で、あけびを発見。
種のまわりが甘くておいしい。久しぶりにお目にかかった。

子どもの頃あけびを教えてくれたのは
「メンキー&ノンキー」の名前の由来でもある、幼なじみのノンキー。
あけびは高いところにしか実がならないから、いつも見るだけだった。その場所も、この日のマラソンコースの近くだった。


夕方には帰らないといけないため同級生たちとの打ち上げにも参加せず、文太と名残惜しく散歩。きんもくせいの香りはずっと漂っていた。
疲れているから、ゆっくりね、軽くだよ、と言ったのに、この日は全力で駆け抜ける文太。それ、昨日したかった。
着替えたばかりのCreepy NutsのTシャツは汗で濡れていたが、時間がなかったので汗くさいまま暫しのさよなら。
帰りの車中で本を1冊読み終えた。放心状態だった。
衝撃のラストで衝撃を受けたと同時に、これ前に読んだ、と気付いたからだ。

気分転換にGoogleのニュースを見ると、なんと!Creepy NutsのDJ松永が、ロンドンで行われたDMC世界大会で優勝したとの記事が目に飛び込んできた。
びっしょり汗くさかったTシャツは、いつの間にか乾いていた。