山に囲まれて育ったが、登山は嫌いだ。
なぜなら初登山が大雨で、想像していた楽しい山歩きとはまったく違う恐ろしいものだったからだ。
あのとき同じ大雨の初登山を経験していながら毎夏あちこちの山に登っている同級生たちに誘われて30年以上ぶりの登山に挑戦したのは、来月に迫っている初トレイルランニングの大会の練習になるかなぁと思ったから。
しかし記念すべきセカンド初登山の日は、台風により豪雨警報が発令されていた。
事前に行われた登山会議で初めて会った山男は、目が醒めるようなイケメン。
眼福、眼福、とイケメン山男を拝みながら飲んでいるうちにいつの間にやら泥酔、どのような話し合いになったのか覚えていない。
そして豪雨の中登った北アルプス燕岳。
その山小屋でもまた、同級生やイケメン山男が担いできてくれた大量の酒を浴びるように飲み、二日酔いで目覚めた翌朝は快晴。
下山前、痛む頭と動かない胃を抱えて山頂まで軽く走る。山頂は岩場で、風が強くて足が震えた。りんどうの花がきれいで、ホシガラスという鳥の姿も見ることができた。いつの間にか体調はよくなっていた。
下山はなにより気を張らねばいけないので、常に目の前のイケメン山男の足運びを見ながらもくもくと進む。晴れたこの日は登山道も大渋滞。前日はホットコーヒーを求める客がちらほらいただけだった合戦小屋も、この日はスイカを求める登山客でごった返していた。
ケガなく無事に下山することができたが、実は体調不良であった上に二日酔いが重なり、来年もまた行こう、というみんなの声に即答はできなかった。