2018年8月23日木曜日

つかのまの紅一点

いつものお店をのぞいたら、超のつくほどの満席。
仕方ないのでいったん帰宅して、返す刀で再登場。
相席でいいよね、とスリムママが通してくれたのは、
すっかりでき上がっている紳士たち三人のテーブル。

失礼します、と椅子を引くと
「オレもいま来たんだよ」
と向かいの紳士。
な~んだ
たまに隣り合わせて話すおじさんばかりじゃないの。
三人とも地元生まれ・地元育ちで
きれいな江戸弁を操る。
こないだ終わったばかりの祭りの話でしばし盛りあがった。
たいへんきれいな酒飲み紳士たちであった。
「おっ紅一点!」
と言うので辺りを見回すと
スリムママ以外は見事にオトコ客のみ。

こんな「紅」ですいません、と小さくなりながらも
となりのおじさんのウインナいためは、ちゃっかりいただいた。

2018年8月21日火曜日

夏休みは終わった

うなぎで始まり
ホッピーで終わった、夏休み。

実家の文太くんは元気だったが
散歩の後半ではいつも、
歩く早さが私より遅い。
(このうしろ足!)


同級生が迎えに来てくれて、
まだしらさぎたちも集まっていない早朝の川沿いを走ったり


またまた今年も、
花火大会に連れていってもらって

地元信州の関取・御嶽海の優勝を祝って、
やはり地元信州の雷電のビールから始まり
幼なじみお手製の
豪華おつまみ付きで
ぜいたくにも、とてもいい席で
きれいな花火を見せてもらった。


自宅に戻って
いつもの場所へ行ったら
未亡人と、これまた気持ちのよいおじさんと遭遇。
酒量は、規定量をはるかに超えた。

2018年8月10日金曜日

誕生日の一日

いつから、自分の誕生日がどうでもよくなったのか。

あまいものはさほど好きじゃないし
特に行きたいところもなし。
でも、この日はいつも休みをとっている。


先日、御年94歳の絵本作家・ルース・スタイルス・ガネットさんの
パネルディスカッションに参加する機会に恵まれて、
その可憐な姿(ワンピースの柄もすてきだった)と、凛とした声に魅了され
そのあと、誘ってくれた友だちと話しているうちに、思い出した。




かこさとしさんの展示を観に行こう。
最近とみにダメな生活を送っている自分に
かこさとしさんの生まじめさは、改めてまぶしいくらいだった。
学生の頃の気持ちのまま、
92歳までずっと本をつくりつづけてきたなんて。

勉強熱心で学者肌なのに描く絵はかわいいし、
説教めいたことは言わないのに考えさせる本ばかり。

虫歯の怖さも、食べものがからだをいかに冒険するかも、
すべてかこさんの絵本で知ったし、まだ覚えている。



気付けばかなりの時間そこにいたが、
ふと気を抜いたとたんに、腹の虫が大音量で鳴りだした。
朝からなにも食べていなかった。



新しい年齢になって一番に話すのは誰かな、なんて考えていたが
さっき道を尋ねたときに、とても親切に教えてくれたコワモテの作業員であった。

新しい年齢になって一番に口にするのはなにかな、なんて考えたが
気付いたらうどん屋さんへ入っていた。
おそばにしようと思っていたのに。

まあ、それすらもどうでもいいこと。
むかしはあんなにこだわっていたのに。


夜は思いがけず、義兄と「ニューねこ正」。
蜜の多い桃を、美人女将がこっそりごちそうしてくれた。

2018年8月7日火曜日

テーブルのある暮らし

忙しくない週末のために
ていねいにつくる、ミートソース。
それだけで満たされていたのに
テーブルのない暮らしって、かなしいものなのね。

友だちが送ってくれた、めずらしい野菜。
バナナピーマンや、ピンキーとキラーズ(トマト)、大きいなす。
頭をひねってお料理して
ワインなぞ用意して
読みたい本もスタンバイ。
こんなにステキなラインナップなのに
テーブルのない暮らしって、かなしいものなのね。

日曜日に我が家にやってきた、お待ちかねのテーブル。
あの、オモシロがにじみ出ているお兄さんが、運んでくれたテーブル。
受け取ったあとに、着ていた服が後ろ前だったことに気付いたけれど
まあいいさ。

その晩は、いつものお店にも行かず
ぶらぶら散歩もせず
どすこいドリンクには目もくれず
そば屋で一杯、のお誘いも断り
いつもよりていねいに弁当をつくったりして
読みかけの本をめくりながら
ワインなぞかたむけて
バナナピーマンのマリネをつまむ。

たまにテーブルを撫でたりして
ほどほどに酔っぱらった。

2018年8月3日金曜日

ワルクチを言い合う

念願かなって、3年ぶりにあのお店へ。
おだやかでオモシロ味のにじみ出ている店主さんは、変わらずそこにいた。

そういえば、便座のふたのような座面の椅子も
毎晩使っているミキサースタンドも
読みかけの本を入れる青いざるも
そこで見つけたものだった。
今度は、テーブルが仲間に加わる。

たのしい買いものの帰り道
激しい喉のかわきと空腹をおぼえて、新しい椅子をかついで寄りみち。
ホッピーばかり飲んでいる私を見て
すごいやつがいるな、といつも見ていたという未亡人と隣り合わせて
のっけからハイペースで、飲む飲む。

しばらくして
ママとその妹さんが渋い顔をして言った。
「さっき帰った人、誰だかわかった?」
冷奴に夢中で、もちろん見ていない。
「ほら、あいつよ、出禁にしようかと思ってる」

そのひとことで、カウンターのみんなが渋い顔になり
いかにその男が気持ち悪いかを、みんなが語り始めた。
語るというより、口角泡をとばして、といった感じ。

近所の人や、このお店を好きで集まるお客さんばかりの中で
あきらかに浮いているその男は、
酔うと連れの女性にさわりまくったりして、
見ていられないそう。

北方謙三の「ソープへ行け!」ならぬ
「ホテル(錦糸町)へ行け!」というのが結論であった。

ワルクチを言い合う、というのはいい肴になるもので
まずまず酔っぱらって、また椅子をかついで帰宅した。

2018年8月1日水曜日

夢で逢えたが

花火の日の両国は、
早い時間からそわそわしていた。
すでに焼かれた焼き鳥や焼きそばが山積みになり
鮎の塩焼は満員電車のように炭の中に林立、
きゅうりやビールはたくさんの氷で冷やされ
早くも浴衣でめかしこんでやってきたひとたちや
警備にあたる警官や警備員、町内会のひとたちで
たいへんにぎやかだった。
もちろん私も、焼きそばを昼食とした。


その夜は、なじみのお店でのんびり飲み、
テレビで花火大会が始まったのを確認して勘定を済ませた。
店主にいってらっしゃい、と声をかけられると
ちょっと見てすぐ帰るんだけどさ、となぜかみな
照れくさそうに言って縄のれんをくぐる。

人ごみをひょいひょい掻き分けて歩くうちに
なつかしい小路へ出た。
ここだけは、いつ来ても花火がよく見えたもので
今でもそうであることに安堵した。

何年か続けて、偶然同じ場所で一緒に花火を見ていた婦人。
来年もここでお会いしましょうね、というのが
いつものあいさつだった。
道が混む前にさっさと帰宅して、
いま見てきた花火の続きをテレビで見る。
ま、どっちでもいいんだけどさ、と
さっきのお店のお客さんたちのようにつぶやきながら
まずまず酔った。


その晩。
たまには夢にくらい出てきてよ、と思っていたひとが
夢に出てきたが
髪が真っ白になっており、相応に歳をとっていたのがおかしかった。