2021年8月27日金曜日

紅しょうが天そばに焦がれる

しばらくなりをひそめていたソバ熱が静かに高まってきた。
晩酌とおつまみを厳選して堪能しているせいで朝ソバをする食欲がわかない毎日。猛暑日で体に堪える暑さになるでしょうと天気予報で言っていたある日、決心して隅田川を走って(歩いて)からお久しぶりねのお蕎麦屋さんに登場。

お昼はとうに過ぎた時間で静かな店内。いったいいつ以来か忘れたくらい久しぶりの紅しょうが天そばを待つ。暑いさなかを走って(歩いて)脚が疲れているが紅しょうが天そばのためならば気にならない。
待ちに待った愛しい紅しょうが天そばはとても美味しかったが、普段食べなれたあの数秒で供される真っ黒なつゆのそばがなぜか恋しくなった。

2021年8月25日水曜日

ねまちがやってきた

夏休みに入ってすぐ彼女が来ることは先月の半ばくらいに決まっていたのだが、二転三転して休みも終盤の大雨の日にやってきた。というより迎えに行ってきた。新幹線に乗って。

生後2ヶ月で新幹線移動プラスタクシーにまで乗って、我が家に着いた時にはクルマ酔いで泡を吹いていた彼女はごはんもミルクも平らげて数時間後にはゴロゴロいいながらすり寄ってきた。その上布団に横たわったら脇の下にすべりこんだ。
よかった、仲良くやっていけそうと眠りに落ちたのもつかの間、夜中に大運動会が始まり顔を踏まれて三度も起こされたのであった。
ねまちです。
ねまちの総裁です。
偶然、ぼっちゃんにそっくりな女の子。

2021年8月14日土曜日

雨の沼

いつものコーヒー屋さんに教えてもらった、印旛沼の公園とサイクリングコースを目指して家を出た休日。予報通り雨が降っていたが、こんな日に引きこもっていたらよくないと強行した、沼を見ながら走る雨の沼ラン。
最寄り駅から線路沿いに走ると白鷺が田んぼにちらほら。誰もいないのでマスクを外して走ると清々しい匂い。途中ちらっと見てしまったへびの死骸に気持ちとお尻の穴がキュッとした。
第一の目的地の公園はオランダ風の風車があり、強くなった雨と回らない風車を眺めながらソフトクリームを食べた。
沼に注ぐ川に沿った細い道は整備されており葛の花がこぼれていていい香り。あっという間に見えてきた沼はちょうどボートが出たところでその水跡のほかはとろりとしていた。これが沼なのか。
快適な道路を走っていると、懐かしい田舎の土の匂いとひぐらしの声。まだ昼前だったが気持ちは初秋の夕方でしんみりきたが「この柵はいのししを避けるため電流が流れています」とか「ハンターの皆さんへ  この辺りには学校があるので気を付けて狩猟をしてください」との看板の多さにまたお尻の穴がキュッとした。
気付けば舗装されていない細い道に入っており、伸びた雑草が雨に濡れてがっくりしている。このまま行ったら山に入ることになるのではないかと不安になった頃に現れた看板に、あのお二人はここを走っていたのかと脱帽してホッとした。
道はやはり山奥へと続き、大きな水たまりの連続に泥だらけになりながら進むとようやく民家が見えてきた。ずぶ濡れで泥だらけの中年はようやく振り出しに戻った。

最寄り駅で預けていた荷物を取り出して、本当はお風呂に行くつもりだったがやめた。朝からソフトクリームしか食べていなかったのはお昼にうなぎを狙っていたからだがそれもやめて、電車に揺られてフンド氏の家の近くの銭湯へ。
近所のお姐さまたちに大人気の炭酸泉で体が泡だらけになるのを見届けてお風呂を上がり、ロビーのミニギャラリーを見てお疲れさま。

結局、沼を見たのは正味5分ほどだったけれど、雨の日に行ったのはよかった。

2021年8月7日土曜日

名付ける

わけあって女の子の名前を考えている。
先代のねこ ぼっちゃんは仔ねこのときよく鳴いていたので救急車と呼んでいた。その翌日は声が高いのでオペラという名にしてペッちゃんと呼んでいたがしっくりこなくて、そのまた翌日フンド氏がひらめいたぼっちゃんという名がぴったりで全員一致で決定した。
今も候補はいくつかあるが、しばらくは決まらなそうだ。人間の女の子の名前を挙げていくと、どれも同名の苦手な知り合いやなにかをしでかした有名人と重なる。歳をとって知り合いが増えたからなのか。苦悩の日は続く。

2021年8月5日木曜日

夏の親子

8月の始めのある日、義兄から誕生日プレゼントが送られてきた。
本体の手提げは誰がつくったのかわかったが付属のえびフライと海苔巻きが謎であった。
懐かしい字で書かれた手紙も入っていた。フンド氏と字が似ているが筆圧などやはり少し違う。
お礼の電話をしたら長電話になってしまった。フンド氏と声が似ているが強さなどやはり違う。義兄とこんなに話したのは初めてかもしれない。愉しい夜だった。

いつの間にかもう8月。
毎朝会うあの親子がいつの間にか夏仕様。
この親子も長いことマスク生活だったが、いつの間にかパリピになっていた。

2021年8月4日水曜日

不思議なまち つくば

今までに二度ほどお会いしただけの間柄で、その作品や送ってくださるDMにかなりの熱量を感じていた、かえるとこけしのイラストの方。
いただいた手描きの新聞を改めて読んだら個展が翌日までとのこと。これは行くしかないと朝早く起きて向かった先は初めてのつくばであった。

茨城県には縁もゆかりもなく、とはいえいつも行くコーヒー屋さんからつくばや茨城空港周辺のランニングコースを教えてもらったり、そこでのイベントで親しくなったアーティストさんの個展を観に牛久まで行ったこともあり、じわじわと茨城への道すじができたように感じていた。
早めに到着して、手描きの新聞におすすめと書いてあった駅前のコーヒー屋さんでおしゃれに朝食をキメた。

運ばれてきた枝豆とゴルゴンゾーラのキッシュを食い入るように見ると、キッシュの味が濃いのでサラダにはドレッシングをかけていませんがそのままで召し上がってくださいと店員さん。ほうほう、と背筋を伸ばしてナイフとフォークを使う。
他の席では親子連れや仲睦まじいカップル(もしくは若夫婦)がのんびりコーヒーを啜っていた。いただいたキッシュもコーヒーも、そしてサラダまでもおいしかった。

焦げつきそうな炎天下を歩き出すといきなりロケットが現れた。
しばらく進むと駐輪場の脇にロボット実験用道路と書いてある看板がありあたりを見回したがロボットも休日なのだろう、誰もいなかった。暑すぎて白く見える道を進んでコンクリートのなにかがそびえ立つ不思議な公園でひと休み。汗がぽろぽろ落ちてくる。
あまりの暑さと不思議な景色の連続に白昼夢を見ているような気がして、ふと気づけばギャラリーに到着していた。
クルマは何台も停まっているがひと気のない建物の階段を上がると、はたしてそこにはたくさんの人たちとDMをくれたかえるの人がいた。
あ、マッチの人と言われてうれしくなった。
壁面には今までの新聞がずらり圧巻。たまにある造形物もかえるの人の味がある。新聞を端からじっくり見ると、かえるの人の地元、土浦愛がいっぱいで次回は土浦に行こうと決心した。
かえるの人に、あなたのおすすめのお店で朝食をとってきたがとてもよいお店だった、ついてはもうひとつのおすすめのコーヒー屋さんにも行きたいがどこを行けばよいかと訊ねると、少し待ってくださいと外へ出ていった。
どなたか道のわかる賢い方、東京からわざわざ来てくれたこの方をあのお店に連れてってもらえませんかね、とかえるの人が言うとふたりの女性が立ち上がった。いいんですかと言うと、どうぞどうぞと仰るのでご好意に甘えてもうひとつのコーヒー屋さんへ。車内では初対面のこのおふたりの案内してくれるつくばのまちがとてもおもしろくてGoogleマップも知らない道やおすすめのお店を教えてもらった。
この人、東京からわざわざかえるの展示を観に来たのよ、とあちこちで紹介してもらいたいへん恐縮しながらもうひとつのコーヒー屋さんへ。ほどよきところでギャラリーへ戻るおふたりに、もし今日お店に行けなくてもきっとまた来るよね、と言われてハイもちろんと胸を張ったが、そういえば名前知らなかったと言われてあわてて自己紹介した。

普段は食べないのにおいしくて感激したキーマカレーのサンドイッチとコーヒー、そして親切なお店の方に満足して外へ出るとすべてを忘れそうなほどの炎天下。とても街歩きなどできず、さっき教えてもらったGoogle先生も知らない小径を歩いてバス停にたどり着いた。

今度来るときは絶対に迎えに行くからね、と言ってくれたふたりといい、かえるとこけしの人といい、つくばっていいところだなぁ。

2021年8月2日月曜日

スマホを忘れて

少し早めに髪を整えておこうと「MOD BARBER こけし」姉妹店へ。
その前にこの日までの展示を観て、それから一度ゆっくり見たかったあのお店に寄って、それには何時にギャラリーを出たらいいかなとバッグを漁るとスマホがない。ああ、またスマホを忘れてしまった。
しかしこの日は誰とも約束がないからいいかと開き直ったが、ふとした瞬間に調べものをしようとするたびスマホを忘れたことに気付く。
帰ってから調べればいいさ、と思うもこんな時に限って調べたいことが次々に浮かぶ。
「MOD BARBER こけし」の姉妹店で秘密にしていた話をして髪をきれいにしてもらって楽しく過ごした後もつい手がスマホを探す。

翌日は何時に家を出たらよいか考える。スマホがないので考える。昔はこんな感じだったよなぁと思い出して少しだけ頭を使った。