2020年5月27日水曜日

カモたちよ

たまに飲みに出かけても酒はほどほど、しかしとにかく食べ過ぎるクセがついたので、これではイカンと走りに出た。
前に行った松の木の東の横綱にごあいさつしてから橋を渡って千葉県は市川市の看板を見てさようなら。
帰り道は気になっていた親水公園をパトロール。細長い川に沿って走っていると一羽のカモが並走していた。
ほぼ同じペースでしばらく走ると川はふたまたに分かれた。あなたは右に私は左に、ふり向いたら負けよ。

心なしかペースアップした後ろ姿を見送っていると小さな橋の下へもぐった彼もしくは彼女がものすごい勢いでこちらへ飛びだした。と同時に小さな毛玉が何個もはじけた。
いくつもの毛玉、それは子ガモたちであった。
達者でやるんだよ、とそのせわしない毛玉たちと彼もしくは彼女たちのうしろ姿を見送った。

2020年5月18日月曜日

FSDで始まり黒革の手帖で終わる

我慢ならなくて、ブローチをたくさんつけたバッグで妄想旅行へでかけた。
きれいな海岸を思う存分歩いて最高の貝殻を拾い、春のケーキを食べてコーヒーを味わい、びわも入手した。
たいへん満足したがそのあとは酒という感じではなく、それなら映画でもと所定の位置に座るもフリースタイルダンジョンに夢中になり挙げ句懐かしいMVなぞ見続けて目が疲れた。寝るか、とぼっちゃん椅子で本棚を見ていたらもう何度も観たDVDが目についた。
気付けば終いまで観てしまった「黒革の手帖」。本当に観たかったのは「ストレイトアウタコンプトン」だったのに。
その晩は、やはりというかなんというか、わけのわからない夢を見た。

2020年5月14日木曜日

朝の匂い

お弁当をつくらなくなったのとマスクのせいでメイクがおろそかになったために朝家を出るのが早くなり毎朝少し違うルートで徒歩出勤。
洋食屋さんを通りすぎると濃いナポリタンの匂い。
路地を抜けるとパンのたねの匂い。
マスク越しでもわかる朝の匂いを楽しみながら、マスクをしているおかげで声を出さずに歌っていると出汁のいい匂いが漂ってきた。お気に入りの朝ソバのお店だ。
外に貼り出されたメニューを見て腕組みをする若きサラリーマンに、ここはアタリだからさっさと入って紅しょうが天そばを頼みなさいよ、と声に出さずにつぶやきこっそり親指を上げて通りすぎた。
晩酌を控えめにすると体調がいいなぁとあたりまえのことに感心しながら歩く朝のこの時間が気に入っている。

2020年5月13日水曜日

東京ヘリポート

起きるなり海を見に行くことに決めた休日。
暑くなりそうだぜ、と思っているうちにどんどん暑くなってきた中を走り出した。
数週間前に見たブラシの木はほぼ満開で花が重そう。私のカラダのようだ。
人っこひとり歩いていない道路を走ってお目当ての東京ヘリポートに到着。
霞んで見えなくてもその気になれば見える気がしないでもない房総半島は左前方か。静かで気持ちよいのでマスクを外してしばし海を眺めた。
歌でも歌っちゃおうかなぁなんて気分よく写真なぞ撮っていたが、あとで写真をよく見たら、日焼け中の殿方が!どうりで私を追い越して走っていった人がびっくりしていたわけだ。
二度ほどヘリコプターが飛び立つのを眺めたのちに帰路についた。

その晩は営業再開した「おいてけ堀」に全員集合。
みんな元気そうで、なによりここの再開を願っていた人たちと愉しい酒席をもつことができたのがうれしくて飲みすぎたのは当然のこと。

2020年5月3日日曜日

ガリーボーイ

先日もランニングウェアに着替えて出かけたが、ほぼ歩いて帰ってきた。
収穫は、何軒めかの森鴎外の居住地跡を通ったことと西新橋のスナックでもなかなか聞くことのできないクオリティの「人生いろいろ」をギターの弾き語りのおじさんと通りすがりのおじさんに励まされながら歌うおじさんを見たこと。

その翌日はずっと観たかった「ガリーボーイ」を観た。自宅でPCで映画を観るのは初めてだったが我ながらチョイスがよかった。ムンバイのスラムの中の青年からわきあがるリリックが!
映画館で観たかったけれど自宅だと酒も肴も追加できるし一服にもお手洗いにも行けるし踊れるしたまに出てくる耳の垂れた山羊にこのかわいこちゃんめとつぶやきながら目尻を下げることもできる。

HIPHOPは生きざまだとジェーン・スーが言っていたことを改めて理解して砕けるほど膝を打ったがそれにしても酔いすぎた。

2020年5月1日金曜日

海を見ていた午後

行き当たりばったりでいこう、とランニングウェアに着替えてひとまず家を出た。
木場公園であやめの匂いをかいでから青看板を見て適当に進み、夢の島公園へ。
早くもブラシの木の花が咲いていた。
先日遠くから見た東京ゲートブリッジをもっと近くから見たくてひと気のない倉庫街をひたすら進むと
初めての角度から見る葛西臨海公園。
誰もいないのでマスクを外すと、ここは厳密にいうと川だが海の匂いがした。
お目当ての東京ヘリポートはあと少しのはずだけれど、まだ先は長そうだ。
お楽しみは後日にとっておこうと帰路についた。
海を見ることができてうれしかった。
ブローチも少しだけ増えた。

海からの帰り道、中東系のハーフと思われる幼い男の子が自転車にまたがってこちらをじっと見ていたのでマスクをつけているのを忘れて笑いかけて通りすぎると、走ってるの?と声をかけられた。そうだよ、とふりむいて応えるとしばらくして、ランナーなの?との声。またふりむいて大きくうなずくとしばらくして何事か叫ぶ彼の声が聞こえた気がしたがもう姿は見えなかった。