2018年10月31日水曜日

匂いを嗅ぐ

近所のお寺でもらった、かりんのおしりの匂いを嗅ぐ。
かりんのおしりは、きりっとした晩秋の匂い。


椅子には、あの古道具屋さんの匂いがまだしみついている。
甘さのない、枯草のような匂い。


朝は一杯のコーヒーを淹れる。
コーヒーは朝の匂い。


寝る前には、部屋を好きな匂いで満たす。
旅に出るときの、浮足立った匂い。
寝るのも、旅に出るようなものだから。


「サロン・ド・こけし」の女主人のオードトワレの香りが好きだ。
あまくてスキャンダラスな、背筋が伸びる匂い。
女主人にとても似合っていて、時間とともに変化するどの香りも好きだ。


寝るときに身にまとうのはシャネルの5番を数滴よ、とマリリン・モンローのように言ってみたいものだけれど、そんなことをほざいたら通報ものだなぁ。
「きせかえブティック メンキー&ノンキー」には、似合う洋服だけでなく、そのときに必要な香りや花なんかも、あるんです。

2018年10月29日月曜日

セネガルの夜は更けて

打合せをしている間ずっと、階下のレンタルスペースからのおいしそうなにおいと複雑なリズムにのせた激しい歌声が気になっていた。
すべてが終わって階下を確認すると、そこにはすらりと背の高い、無駄な肉のついていない、おもいおもいのおしゃれをした黒人男性のみが食事や歌、おしゃべりを愉しんでいた。

これはいったいなんなのだろうね、と友と呆然と眺めていると、ギンガムチェックの布に身を包んだひときわ長身の男性が「どうぞ、セネガルの料理を食べていってください」と、きれいな日本語で言った。
先ほどからのおいしそうなにおいに空腹を刺激されていた私たちは、おそるおそる建物の中へ入った。


オーソドックスな味付けのサラダに始まり
 セネガルの主食らしい短いビーフンや
 大きなチキンやクスクス、
 これまた大きなラム肉
 デザートに、ドーナッツや なつめやし
 くだものもきれいに盛り付けてあった。
驚くべきことにすべて無料で、道行く誰にでもふるまわれていた。



海外出張の多かった友は、セネガルはイスラム教だよね、イスラム教は人に施すことで徳が高くなるらしいよ、だからありがたくいただこう、と言った。

味はどう?おいしい?と声をかけられたり、お肉ばかり食べてちゃだめだよ、野菜も食べなきゃ、と笑われたり。
セネガル男性たちのファッションは実にさまざまで、セクシーなスーツでドレスアップしていたり、民族衣装に身を包んでいたり、太い首飾りをしていたり。

お言葉に甘えて、おなかいっぱいごちそうになりながらも、これは夢かなぁと友と確認し合う。

誰にともなく、ごちそうさまでした、とお礼を言って外へ出た。
外で煙草を愉しんでいたセネガル男性に、なぜ無料なのか訊ねると、その日はイスラム教のマガルトゥーバというお祭りなのだそうで、世界中の信者がお祝いしているんだ、とのことだった。始祖のアーマドゥ=バンバがいかにすばらしいかをアツく説明してもらい、夜22時までやっているから、おなかが空いたらまたおいで、と言われた。

お酒一滴も飲んでないのに酔っちゃったね、と友と「喫茶ニャーゴ」へ。
いまセネガルのごちそうをいただいて、と言うと店主は、ぴったりのコーヒーを淹れてくれた。
さっきまでのできごとが夢でないことを確認するように、まわりのみなさんにセネガルのお料理について語る、語る。帰り道で会ったひともつかまえて、語る、語る。
なんだか落語のようなできごとだったけれど、落語とちがうのは、サゲがなかったこと。
サゲどころかマクラもないような、ある日の不思議なできごと。

2018年10月26日金曜日

ハートにいつも成長痛

ずっと昔に好きだった映画を急に観たくなり、わくわくしながら飲みものなどを用意。
まずは、二番めに好きだった映画をスタンバイ。

すぐねむくなる「うとうとシアター」だけれども、今夜は楽しくなりそう。
懐かしい音楽と映像。
若すぎる出演者たち。
この映画を誰と観たのかは忘れたけれど、だんだんあのころの気持ちに引き戻され・・・



なかった。



あれぇ?
首をかしげたくなるような箇所がいくつもあるぞ。
ここでぐっときたはずなのに、ぴくりとも来ないぞ。
おまけに、さっき飲んだお酒がきいてきた。
ああ
この時間のために今夜は、お酒少なめにしてもらったのに。

好きだった映画に感動しなくなる日が来るなんて。
ああ・・・



かっぱ:映画のせいじゃなくて飲みすぎのせいじゃない?
ひよこ:本命の映画は観ないほうが賢明ですね

パンダ:もう寝てるし

やどかり:今週もだめな一週間で終わりそうだね

2018年10月24日水曜日

アガるとき

さて、と腰を上げようとしたら、ラジオから好きな曲が流れてきたとき。
上げかけた腰を下ろして、耳を傾ける、とか
横断歩道の信号が点滅を始めたとき。
走らなきゃ、と歩を早めたら、おもいのほか軽く体が動いた、とか
(毎度のことながら)飲みすぎてけだるい朝、なぜか早く目覚めたので軽くジョグをキメたとき。
マジックアワーの時間にあたって、あおさぎ先生にも会えた、とか
夢のなかで、もしくは夢うつつで、あのひとに会えた、とか。
小さなことだけど、アガるときってあるもの。



真夜中のひそひそ話。

かも:なんだか、些細なことばかりですよね
かまきり:あのひと、どれだけ不幸なんでしょうね

はえ:まあまあ、ある意味しあわせなんじゃないですか

やどかり:言えてる
アガるものは、さんぽ道に落ちている。
銘菓「両国のさんぽ道」は、ひとくちめからアガります。

2018年10月23日火曜日

雨に笑えば

傘屋の女房として、ビニール傘は買ってはならない、と固い意志を貫いてきた。
しかし、しとしとやわらかく舞う雨に朝から長時間濡れるのはたまらなく不快で、背に腹はかえられず、禁を破ってしまった。
「しとしとぼっちゃん」のすてきな傘が、家にあるというのに。
今日はこの傘をさしたかったなぁ。
好きな傘をがないと、雨を愉しむことができない。


仕事の電話がかかってきて、開口一番「雨ですねぇ 飲みに行きますか」と言われた。
時計を見たら14時過ぎ。
平日の14時に飲み始めている図を想像してみる。

う~ん
平日はやはり「After 6」を聴いてからでないと、その気になれない。
朝食が「おはよう商店」のものでなければ、その気になれないように。



そうそう
かわらばん「深川福々」秋号ができあがっております。
すご~く久しぶりに、コラムを担当しました。
記事に書いたお店の店主には、ある日突然お渡しして驚かそうと思っていたのに、ご近所のレコード屋さんのツイッターで知ってしまったそう。
SNS全盛の今、サプライズは難しい。

2018年10月19日金曜日

ハセガワさん・再び

たまには会おうよ、ということで友と食事。
洋服を扱う仕事をしているその友は、いつもどこかおもしろい洋服を身に着けている。
そしてたまに同じ靴を履いていたりすることがあって、おかしい。
デザートはあまいものが好きな彼に譲って、私はもう一杯いただくことにする。
白熱した話題がひと段落したとき、またこの名前が耳に飛び込んできた。

「ハセガワさんでしょ、それ」
「ハセガワさんかなぁ」
「たしかにハセガワさん、ハセガワさん」
「そうね、ハセガワさんだったら納得」

お、話題にされてんじゃん、と友は軽口を叩くが、私ハセガワは心臓が止まるかと思った。
前もこんなことがあってさ、と話そうとしたら、今度は隣のテーブルから

「あのときメグミちゃんがさ」
「そうそう、メグミちゃんがねぇ」
「メグミちゃんって、そういうとこあるよね」

との声。
どこかの「メグミちゃん」の話しをしているみたいだったけれど、またも心臓がどきんと音をたてた。
(前回のハセガワさんとちがって、こちらはどこか不穏な空気)

さっきまでの白熱した話題はどこへやら。
さ、もう帰ろう、と席を立った。

2018年10月18日木曜日

うつつをぬかす

短い時間にいろいろなことがあって、脳みそがついてゆけない。
いいことも、かなしいことも、重なるときは重なるもの。

こんなときは、飲んで・・・・
しまうのは、いつものこと。

そうではなくて
たまには「うたごえハウスねんね」で、ぼんやりお気に入りの曲を・・・
聴くのもいいが、やはり飲みすぎるだけ。
(ウッドベースの音が聴きたいなぁ)

仲のよい友だちと、おいしいものを食べて大騒ぎ・・・
しても、結局飲みすぎるだけ。

買いものに走って一瞬忘れる、というテもあるけれど
なんの解決にもならない。

くよくよした気分のときは、活字に逃げよう。
もうなん百回と読んだ本をひっぱりだして、ページをめくってみる。
初めてこの本を読んだときからかなりの時間が経っているけれど、あのときは全然意味が分かっていなかったなぁ。

新鮮な気持ちでなつかしい本に「溺れる」のは、アルコールを伴わない酔いのよう。
とかいって、結局飲んでしまうのだけど。

2018年10月15日月曜日

心は、ごはんのようなもの

思いがけず、女子会(の、ようなもの)2DAYS。

歳の離れた友だちのお宅へお邪魔して、遅くまでチョキチョキちくちく。
あっという間に、懸念だったものができ上がっていく。
歳こそ離れているが、彼女とは同じような境遇にあるので、作業しながらぶつぶつぼやいていると互いに「わかる!」ってことばかり。
しまいには口調が荒くなって、「ばかやろう」「なめんなよ」「ふざけんなっつの」と、悪態つき大会に。

ひと段落して、彼女がほうれんそうを指さして「次はごま和えつくってね」との指示。
おくちに合いますか?と聞いたら「ちゃんと主婦やってたのね」と彼女。
なんとも落ち着く、たのしい晩ごはんだった。



べつの日。
閉店間際の「喫茶ニャーゴ」へコーヒー豆を買いに行ったら、とても混んでいた。
急いでいなかったので注文はあとまわしにしてもらって、くるくる働く店主の仕事ぶりを眺めたり、外へ出て近所をぶらぶらしたり。
戻って店主と長話。
サービスしてもらったしっかりめのコーヒーを啜りながら、さようなら。
いつもの窓辺に、その夜はふたりの犬。
コーギーの氷のような目がおかしくて笑いを堪えながら、次の場所へ。
作業を終えて、ごはんでも、と「ぺろりレストラン」。
ふと気づけば、この夜も女性のみ。
めずらしい!

境遇や年齢はそれぞれだけれど、現状全員ひとりもの。
ひとりものが4人そろうと、揚げものが食べたくなる。
よって、おもうぞんぶん、揚げものナイトとなった。
いいんです。
昼間、因縁の地まで走ったのだから。

2018年10月11日木曜日

あなたと夜と音楽と

ある日の帰り道。
バーやクラブが林立する路地を歩いていたら、なぜか気になる看板があった。

まじまじと見たら、やっぱりそうだった。
学生のころ好きだった、あのイラストレーターの描いた、すてきなバーの看板だった。
当時よりぐっと大人の雰囲気のタッチ。
変わらないのは、音楽を感じるところ。

『ぼくは特別絵の勉強はしていませんが、描くのは好きです』

大阪の小娘からのファンレターに、イラスト同様の踊るような文字でていねいに返信してくれたハガキは、今でもたからもの。
うれしくなって、聴いていた曲の音量を上げた。


朝のいつものとおり道。
いつものブルドッグが・・・防災訓練でもしているのかと思ったら、ハロウィン仕様になっていた。
ちびブルに至っては、いったいなにをしているのか聞きたくなる風体。

2018年10月10日水曜日

宇宙から眺めてみればミクロな世間話かな

夜遅くまで映画を観ていたのに、いきなりスイッチが入って、翌朝は久しぶりに早朝ジョグをキメた。
柳橋のかんざしも、おひさしぶり。
大きめのしらさぎにも逢えた。


時間がないのに、お弁当もつくっちゃって
いつも通り徒歩で出勤していたら、毎朝こっそり手を振ってあいさつしている犬が、忙しそうな料理人のご主人に抱かれて甘えていた。
いつもクールな彼のしどけない姿をニヤニヤ見ていると、目が合った犬はバツの悪い顔をした。




毎年出店していた、近所のコーヒーやさんでのマッチ売りに、今年は参加できないことに気付いた。
うっかり予定を入れてしまっていた。
痛恨のミス!


来年こそは・・・(鬼も苦笑)

2018年10月9日火曜日

なんという日!

「MOD BARBERこけし」で、伸びに伸びた髪をMODに戻してもらった。
ここはMODのためのサロンなので、男女関係なく入ることができる。
よそにはないスタイルで、きちんとMODなのだ。

毎度のことながら、とても気に入って、お店を出たらすご~くいいお天気だったこともあり、調子に乗りそうな気がしてきた。
予感は的中。
きせかえブティック「メンキー&ノンキー」をなんの気なしにのぞいたら、好みの靴に出逢ってしまった。


サイズはぴったり。
しかも、スタイルとして完全にMOD。
めためたとくずおれそうになりながらも、落ち着かねばと、ほかのものにも目を向けたら
今度は、とてもきれいなワンピースに出逢ってしまった。
なんという日!


最後の休日、「しとしとぼっちゃん」へ。
また傘の柄を描くことになりました。
(国内用ではないけれど)
途中おひさしぶりねの「喫茶ニャーゴ」で、いつものコーヒーではなく、おしゃれななにかを注文。
それをすすりながら、なんだか照れてきた。
なんという日!