2021年2月22日月曜日

その程度の思い出

先週のアトロクでの、都築響一さんの「二度と行けないあのお店の話をしよう!」特集を聞いてなつかしいお店をいくつか思い出した。

田舎の商店街の角にあった喫茶店。
昼間でも暗いそのお店は仲の良いおじいさんとおばあさんが営んでおり、生まれて初めて食べたあんみつにラムネがぱらぱら入っていたのを覚えている。のちにそのおじいさんとおばあさんはご夫婦ではなかった(内縁関係)と聞いて、そのお店のことがなぜかますます好きになったのだった。あれからずっと、あんみつは大人の食べもの。
それと母親の友だちが夜連れて行ってくれたやはり薄暗い喫茶店。
なにしろ田舎で夜出歩くことなどなかったので、薄暗い喫茶店を出たら外が真っ暗だったことに驚いたのと、初めて嗅いだアーモンドコーヒーの香りにうっとりしたことを覚えている。
それと小学生のころ通学路に出来たやはり薄暗い喫茶店。
ログハウス調の重い扉を押して入るとコーヒーの香りとケチャップの焦げた匂いがしていっぺんに好きになったが、帰省の折になつかしい思いで行ってみたらどぎつい看板が立てられており気持ちが醒めてしまった。
薄暗い喫茶店が好きなのは子どものころからだったのだなぁ。

「二度と行けない」というのにはいろいろな理由があることにも、この特集で気づいた。お店が移転・閉店してしまっただけではなく、そこで知り合った人と気まずくなったりフラれたりというのもあるらしい。しかしそのようなお店の存在などないという人がいることにも驚いた。

この特集ではパンチラインがたくさんあって、自分のことを言われた気がしてうれしくなった。

本を年間何千冊読むより好きな本を何度も何度も読み返す方が人生が豊かになると思う、とか、知らない場所で飲食店を探すときに食べログなどの星の数や口コミにばかり頼って探すのはつまらない、とか、捨てられないものがなくてなんでも捨てる人にはその程度の思い出しかないんです、断捨離なんて愚の骨頂、など。
どれもこれも、うんうんと頷きすぎてめまいを起こすほどだった。

2021年2月15日月曜日

こんなに走っても体重はビタイチ減らない

エリートランナーたちと遠方から遠方へLSDの休日。
ペースはさほど早くなかったが、なにしろ週に一日しかランを休まない人たちなのでついていくので精一杯。しかし長距離初挑戦の女子が、湖が見えたら帰りますと言っていたのにうっかりほぼ全行程を走ってしまったほど湖は美しかった。
先日のお墓参りランから間がなかったために足取りは重く、登り坂では何度も歩いたがなんとか湖を一周、コンビニ休憩でいつもは絶対に食べないいちごパフェを食べたらやる気がみなぎってきた。モノレールの始発であり終点である駅で女子とはいったんさようなら。
いよいよ後半、玉川上水をつまづきながら走る。
エリートランナー2名のペースが上がっている気がして、ちょ、ちょ、ちょっと早くないですか、とクレームをつけると、ああそうだね、でも大丈夫でしょうとつれないこたえ。
ほうほうのていでゴール。なんとか30㎞を走り切った。
同じ日の同じ時間に別の場所でLSDをしていた仲間たちから優雅にコーヒータイムをキメている写真が送られてきて、写真さえ忘れて必死で走っていたことに気付いた。
案内された地元の銭湯の露天風呂では、気持ちよくて思わず唸り声が出た。
そして待ちに待った打ち上げはビールがおいしくてずっとビール。先週の胃の不調はきれいさっぱり消えた。

中1日で30㎞ずつ走ったので翌日はさぞかし体がきつかろうと思ったがそうでもなく、ジョグに出てもよかったのだが近所をぶらぶら散歩。
ご夫婦ともにランナーのコーヒー屋さんで筋肉痛自慢をしてからフンド氏邸へ寄り、途中で大好きな白ワインを発見したので、もう何度も見ている「タイガー&ドラゴン」をお供に夜を過ごすことにした。
それにしても何度見ても唸る。唸りつつ酔いが回ってきたころ、古田新太と清水ミチコの夫婦漫才で涙が止まらなくなった。
最終話の手前で電源を落とし「仮面舞踏会」を見てからおやすみなさい。翌朝はまた、まぶたが33に腫れていることだろう。

2021年2月12日金曜日

少年隊はへっぽこランナーをも動かす

急行電車に乗っても1時間以上かかるフンド氏の両親のお墓参りに向かい、そこから走って帰ってくるという酔狂をやってのけた休日。

フンド氏が元気だった頃のお墓参りの愉しみは、駅の近くのラーメン屋さんだった。
そこがいつの間にか閉店しており、すっかり足が遠のいた。
キリスト教式のお墓は線香もたてないしいつ行っても枯葉ひとつ落ちておらずとてもきれいなので、持参したお花を活けるだけでお墓参りは終わり。めったに行くことのない遠方のご両親のいる地にせめて少しでも長くいるために、そのラーメン屋さんは必要だったのだ。
時間をかけて選んだお花を活けて少しお墓の前に佇んだのちに、いつもは気にも留めていなかったがその日にかぎって妙に気になる駅のお蕎麦屋さんへ早足で向かう。
果たしてそこは、都心の駅ソバともまったく違うすばらしくおいしいお店であった。(都心にもあるかもしれないけれど)お墓参りの後、これからはここに来ようと決めた。
舞茸天そばをゆっくり味わって、食後によく寄った喫茶店を横目に、強風の中いよいよスタート。とはいえ食後なので即歩く。野菜の無人販売所がところどころにありとても気になったが、がまんがまん。先日ラン友達が写真を送ってくれた茅葺の屋根の家にもすぐに着いたがまだ先が長いので無念の通過。
そこから先は、街が変わるたびに各党のポスターの顔ぶれが変わるのを見ながら特になにも考えず進むのみ。23区内に入ると少し気が楽になった。住居表示を見て、ここには昔好きだった人が住んでいて遊びに来たことがある気がする、とかここにも昔、妹の受験する学校の見学で来たはずなどといろいろ思い出す。
いい加減に休憩しようと東京ドームへ。いつもは飲まない甘い缶コーヒーを飲んで一服し、ジェットコースターで両手を上げて叫ぶ人たちを見上げる。両国まではあと少し。塩を吹いてざらざらした顔から再度汗を流してラストスパートだ。

結局32㎞も走ったり歩いたりして、シャワーを浴びて酒場に行くにはちょうどよい時間に帰宅。音楽もラジオも一切聞かずに進んだ約4時間、頭の中ではずっと少年隊の「ABC」や「湾岸スキーヤー」が流れていたのであった。

2021年2月10日水曜日

体調不良のにわかファン

珍しくすいていた週末の酒場で飲み友だちにばったり会って飲んだ後に、最近お気に入りの食堂で仕上げのもう一杯。翌日もその飲み友だちと待ち合わせて小さな蚤の市とランチへ。
この日蚤の市で最高にかわいいこけし柄の小箱を入手したところまではよかった。
最近体の調子がよくないなぁと思っていたところに軽く昼酒をかましたせいでなんとなく元気になった気がして明るいうちから「おいてけ堀」へ直行。
たまに会うおじさんに熱燗をごちそうになって調子に乗って飲み上げ、はしご酒好きな飲み友だちに誘われるまま前日と同じ食堂でまた仕上げた翌日から本格的に不調が始まった。

朝から胃が重苦しく食欲も酒欲も出ない。最近続いていたジョグに行く気力もなく引きこもり、フンド氏の月命日の夜もついぞ「ニューねこ正」には行けなかった。
唸って過ごしていたところにLSDのお誘い。
少々遠い場所だけれどみんなで走れば楽しいし、なにより今月はオンラインマラソンなるものに申し込んでいるので少しでも走れたらと気軽に参加表明するも、よく見たら参加者はエリートランナーしかいなかった。しまった、早まったか。
エリートランナーしかいない中でへっぽこランナーが迷惑をかけるわけにはいかないので、重い腰を上げてジョグに出発。
アトロクをタイムフリーで聞きながら走り出すと、先日の少年隊特集を聞き逃したことを知った。苦しくてもアトロクさえあればなんとかなるのでコースを長めに変更。
当時からアイドルにはビタイチ興味はなかったが、さすがに大抵の楽曲は聞いたことがあって懐かしい。昨年末の少年隊特集や筒美京平特集から見る目(聴く耳)が変わり、なんてカッコいいんだろうと今さらながら感動。
その翌日はやはり聞き逃したアトロクのゲレンデDJ特集を聞きながら徒歩出勤。
信州に生まれ育ちながらスキーは大の苦手で授業以外でスキー場には行ったことのない私には知るよしもないゲレンデDJの世界。そのお仕事内容も選曲も何もかもがすばらしくて、脳内には一面の銀世界が広がった。
しかしなにより心を(耳を)射貫かれたのは、最後にかかった少年隊の「湾岸スキーヤー」。
前夜の少年隊特集をリスペクトしてとの南部広美さんの選曲に朝からシビれてつかの間、不調を忘れた。今夜もおとなしく帰って少年隊ナイトだ。

2021年2月5日金曜日

毎日が金曜日

今週は自宅待機と出勤が交互なので毎日が日曜日と金曜日。
いつぞやのタマフルでそんな勤務形態を願う投稿があったけれど、そのときはそんなことありえないと鼻で笑っていたのが現実になったのだ。
ある日は午後から走りに出た。先月末からちょこちょこ走り始めたので足取りも軽く、そうだ、東京ゲートブリッジに行こうと思い付いた。
味気ない倉庫街の新木場も夢の島公園の森の中を走ると気持ちいい。海が見えてようやく若州公園に着いた。去年みんなで来たときと違って海釣りしている人もおらず、しばらく海を眺めていたが手持ち無沙汰なのでセブンティーンアイスを食べてから夢の島マリーナに向かって走り出した。日が傾いてきて酒場の開店時間が気になりあわてて帰った。
またある日は千葉県の里美公園という場所を目指した。ラジオを聞きながら進むも早くも飽きてきた。以前にも行った江戸川までがあまりにも遠くてイヤになってきたがなんとか千葉県に入った。河川敷で途中出逢ったねこたちがみな毛並みがよくて丸々しており耳に去勢もしくは避妊済みのカットが入っていてなんとも幸せな気分になった。
お目当ての里美公園は見事な桜の木と剪定されたバラが整然と並び、春に来たらさぞかしよいだろうと思ったら「ニューねこ正」の美人女将にそのとおりと言われた。

こんな日もこれでおしまい。
そして自宅待機の意味がわかっていないことに今さら気付いた。

2021年2月1日月曜日

RHYMESTERスタンプ会

まだその姿も見ていないのに感じる圧のようなもの。それは威圧感ではなくてフェロモンという名のオーラだと身をもって知ったSHIBUYA TSUTAYAでの「RHYMESTERスタンプ会」。ラップグループのイベントなのに「押韻」ではなく「押印」会。
書籍「RHYMESTERのライブ哲学」の購入者特典でどんなスタンプなのか楽しみではあった。しかしこのご時世だし厳しい決まりもあるし、きっとお役所仕事スタイルでペタペタ押してもらうだけの会なのだろうとあまり期待しないで参加したが、番号を呼ばれて外階段で待ち少しずつ上に進むうちに、楽しみというより処刑台に向かうような気持ちになってきた。押印が済んで階段を下りてくる皆さんの顔はマスク越しでも分かるくらい高潮していた。途中、思ったより話せて~との会話が聞こえて固まった。
話せて・・・って?なにか話すの?何も考えてないし今だって頭は真っ白。

ついにフロアに到着すると宇多さんが見えた。
透明シート越しとはいえとんでもなく近い。いちゃつくカップルくらい近い。などと考えているうちに自分の番が来た。信じられない至近距離で宇多さんは、スタンプは黒と青があるんですけどどちらがいいですか?と、さっきまで聞いていたタイムフリーのアトロクの声で訊ねた。もう、もう、どちらでもよいに決まってるが、くくくくく黒でお願いしますと言って、ていねいにスタンプを押す宇多さんをガン見。なにか気のきいたことを言わなくてはと思ったが口をついて出たのは、ここここここういうスタンプなんですね、というクソつまんねぇ言葉であった。焦って、ラジオ聞いています、頑張ってください、という輪をかけてクソつまんねぇことを言って落ち込みながらお次はDJ JIN。判子の石の名前が浮かばなくて、いいいいい石のやつだと思ってました、とどうしようもないことを言ってしまい落ち込んでいると、隣から感じるナニかに手が震え始めた。隣はDさん。どっしり構えたその姿に圧倒されて、こここここんにちはと挨拶すると「ウッス」というお返事。黒がいいかな、青がいいかなと言うので、くくくく黒でお願いしますと言いつつもそのアバンギャルドなヘアに釘付け。本を押さえる手の震えが止まらない。乾燥のせいか潤んだ瞳とその全身から漂う圧のようなものに動悸が激しくなり息が苦しくなってきたが、ライブ楽しみにしています、えええええMTVも、とだけなんとか声を絞り出して会場を後にした。
帰りに寄ろうと思っていたお店などもう忘れて一目散に駅へ向かうも息苦しくてたまらない。早く渋谷を離れなければ。なんだかスゴい体験をしてしまったようだ。

総武線に乗り換えてひとごこち。
本当はこのイベントに参加する資格があったけれどこのご時世で参加できず、さらに彼女の分もスタンプを、と思ったがそれもNGで歯噛みしていたであろう幼なじみに即連絡。
長文でこの正体不明の圧のようなものについて説明すると、それはフェロモンじゃないの、と言われた。フェロモンってこんなに強烈なものだったのか。
その晩はもう何十回も観た「人間交差点」のライブを見返してまた息が苦しくなったが、幼なじみが送ってくれた雷電ビールで少し落ち着いた。