書籍「RHYMESTERのライブ哲学」の購入者特典でどんなスタンプなのか楽しみではあった。しかしこのご時世だし厳しい決まりもあるし、きっとお役所仕事スタイルでペタペタ押してもらうだけの会なのだろうとあまり期待しないで参加したが、番号を呼ばれて外階段で待ち少しずつ上に進むうちに、楽しみというより処刑台に向かうような気持ちになってきた。押印が済んで階段を下りてくる皆さんの顔はマスク越しでも分かるくらい高潮していた。途中、思ったより話せて~との会話が聞こえて固まった。
話せて・・・って?なにか話すの?何も考えてないし今だって頭は真っ白。
ついにフロアに到着すると宇多さんが見えた。
透明シート越しとはいえとんでもなく近い。いちゃつくカップルくらい近い。などと考えているうちに自分の番が来た。信じられない至近距離で宇多さんは、スタンプは黒と青があるんですけどどちらがいいですか?と、さっきまで聞いていたタイムフリーのアトロクの声で訊ねた。もう、もう、どちらでもよいに決まってるが、くくくくく黒でお願いしますと言って、ていねいにスタンプを押す宇多さんをガン見。なにか気のきいたことを言わなくてはと思ったが口をついて出たのは、ここここここういうスタンプなんですね、というクソつまんねぇ言葉であった。焦って、ラジオ聞いています、頑張ってください、という輪をかけてクソつまんねぇことを言って落ち込みながらお次はDJ JIN。判子の石の名前が浮かばなくて、いいいいい石のやつだと思ってました、とどうしようもないことを言ってしまい落ち込んでいると、隣から感じるナニかに手が震え始めた。隣はDさん。どっしり構えたその姿に圧倒されて、こここここんにちはと挨拶すると「ウッス」というお返事。黒がいいかな、青がいいかなと言うので、くくくく黒でお願いしますと言いつつもそのアバンギャルドなヘアに釘付け。本を押さえる手の震えが止まらない。乾燥のせいか潤んだ瞳とその全身から漂う圧のようなものに動悸が激しくなり息が苦しくなってきたが、ライブ楽しみにしています、えええええMTVも、とだけなんとか声を絞り出して会場を後にした。
帰りに寄ろうと思っていたお店などもう忘れて一目散に駅へ向かうも息苦しくてたまらない。早く渋谷を離れなければ。なんだかスゴい体験をしてしまったようだ。
総武線に乗り換えてひとごこち。
本当はこのイベントに参加する資格があったけれどこのご時世で参加できず、さらに彼女の分もスタンプを、と思ったがそれもNGで歯噛みしていたであろう幼なじみに即連絡。
長文でこの正体不明の圧のようなものについて説明すると、それはフェロモンじゃないの、と言われた。フェロモンってこんなに強烈なものだったのか。
その晩はもう何十回も観た「人間交差点」のライブを見返してまた息が苦しくなったが、幼なじみが送ってくれた雷電ビールで少し落ち着いた。
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