窓の外から雨音。そっとカーテンを開けると夜明けなのに外は真っ暗であった。
どこもかしこも晴れて暑いだろうこの時期、着いたその場所は震えるほど寒かった。
街も電車も動いていない早朝4時。昨年の夏初めて訪れた美術館へ再訪する旅の第一歩で時間を誤ったことに気付いた。でもまあ、どうということはない。
始発電車に揺られて次なる駅へ。幼なじみに貸してもらった本がおもしろくてどんどん進むが気づいたら眠っていた。予定がひとつしかない旅だからこそできるゆっくりした時間がうれしい。しかしこのご時世、長居は無用の日帰り旅だ。
乗り換えの駅の去年と同じ蕎麦屋で朝ソバをキメて、去年と同じくホームを間違えてあわてる。車両が新しくなっていたが、何人掛けの座席であっても向かいの椅子に足を投げ出すスタイルは変わらず。去年いのししを見かけた田んぼのあたりでウトウト。あっという間に最寄りの駅へ到着。
変わらない駅舎を見ながら、しばし駅前で一服。ついにまた来たのだと、からだ中の血液まで喜んでいるのがわかった。まずは美術館へ、日傘がいらないほど涼しい中を歩く。開館直後の誰もいない美術館でこころゆくまで作品を観て、去年は寄らなかったお寺を見たり葛の花の匂いの漂う高台の公園でまちを見下ろしたり魚をながめたりお蕎麦を食べたり。なにもなければ温泉にも寄りたいところだったが、それはまたいつか。
そこで出逢った彼とは長い付き合いになりそうだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿