2020年10月9日金曜日

頭から離れなくて

お昼どきになっても食欲がわかない。そんなときは蕎麦にかぎる。
前の晩に飲み過ぎて胃がもやもやしている。そんなときも蕎麦にかぎる。そうでないときも蕎麦を食べているけれど。
オフィス街のどまんなかとは思えない、昼間でも薄暗くて有線もテレビもラジオもつけていない、高齢のおじいさんひとりでやっているあのお店に行こう。その日はそう決めた。
幹線道路を渡るときに横目で見たそこはシャッターが閉まっており貼り紙がしてあった。見るまでもないと、悪い予感に慣れた私は別のお店へ向かった。

翌朝はお腹の調子をあわせていつものお蕎麦屋さんへ。しばらく早朝ソバの気分になれなかったが、この日は起きた瞬間から紅しょうが天そばで頭がいっぱいだった。
久しぶりのお店はとても混雑しており、ごぶさたの紅しょうが天そばはやっぱりおいしかった。

労働後に歩いていると、先日「ニューねこ正」でごちそうになったおいしいじゃがいものフライのことが浮かんで頭から離れなくなった。
ファストフードのポテトとはまったく別物のあのポテトフライ、また食べたいなぁ、あとかぼすブリまだあるかな、などと考えながら暖簾をくぐると、台風が来ているってのに飲みに来る人いるのかねぇって話してたら来たよ、と常連さん夫婦に笑われ、鼻がきいたね、と美人女将は小皿を差し出した。それは揚げたてのポテトフライであった。

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