たまには本なぞ読みながら静かに呑むか、
と思い立って「おいてけ堀」へ行った。
途中、うずらの玉子が爆発したりと小さなハプニングはあったが少し遅い時間のここは、いつもより静かだ。
しばらくして、後ろのテーブルから「ハセガワさん」の名前が聞こえてきた。
「ハセガワさんが言ったんだよ」
「あのときハセガワさんがいたら」
「それはハセガワさんだよ」
まちがいなく「ハセガワさん」の話しだ。
「ハセガワさん」が気になり、本から顔を上げて耳をすます。
「ハセガワさんがね」
「ハセガワさんだったらさ」
「ハセガワさんはそれを・・・」
どうやら「ハセガワさん」は悪いひとではなさそうだ。
後ろを振りかえりたい気持ちをぐっとこらえて
また本に目を落としたけれど
私「ハセガワ」は、落ち着かないことこの上なく
目は同じページをいったりきたり。
気分を変えて、河岸も変えよう。
ひさしぶりに「両国図書館」へ登場。
いつもの席ではなく、いちばん奥の席に陣取ると
カウンターに並んだ本が、どれもおもしろそう。
あまくないレモンハイを啜りながら、
本棚によりかかった。
壁に貼ってあったふしぎなポスターを眺めていると
それはお芝居のポスターですよ、
と隣の紳士。
広い芝生の広場に点在する、ふしぎないでたちのひとたち。
いつもなら、ふうん、とすぐ忘れるところだが
その晩はなぜか気になった。
「ハセガワさん」のことは忘れていた。
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