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2022年6月21日火曜日

忘れもの

教えてもらいたいことがあって義兄の千葉のアトリエへ行ったらお手伝いをすることになり、それはそれでとてもためになってよかったとしみじみ思った翌日は今年で開花70周年という大賀ハスを見に、また千葉は千葉公園へ行った週末。
1週間だけのハスのお祭りはとてもにぎわっており、日の高い時間に行ったにも関わらず薄くてきれいな花びらを見せてくれた。イベントのテントもたいへん面白かった。
千葉公園から稲毛まで走り、せっかくなので海岸にもと思ったが思いの外遠いみたいなので断念。駅の近くのお店の柴犬をじっと見たりお豆腐を買ったりして電車でさようなら。コーヒー豆を買いに行ったら面白そうな本を2冊も見つけた。

よい休日を過ごした翌日はお弁当の箸を忘れた。
図書館に向かう日陰のベンチを確保してお弁当を取り出して気付いたが、コンビニは遠いし手ごろな枝も落ちていなかったので、しばらく考えて親指と人差し指で食べることにした。辺りを見て、どうせ誰も見てないさ、とイキりながらも最初はこそこそつまんで最後は私はインド人と言い聞かせながら3本の指でさらって完食。

その夜は街ラン。むし暑くて、雨の赤坂を走った先日と同じくらいびしょ濡れ。仲間のひとりの様子が違うと思ったらランTシャツを忘れたのでワイシャツの下の肌着で来たとのこと。よくあることよ、と笑ったが、以前私も替えの下着を忘れて気持ち悪い思いをした。それを別の友だちに言うと、私もあったよ、ノーパンで帰ったよとあっさり。しかもそんな日に限って白のジーンズでさあ、早く帰ればいいのに飲みにも行っちゃったと。シューズを忘れて革靴で走っていた友だちもいた。
肌着、ノーパン、革靴ランナーにお弁当を手で食べる母さんか・・・

2021年2月22日月曜日

その程度の思い出

先週のアトロクでの、都築響一さんの「二度と行けないあのお店の話をしよう!」特集を聞いてなつかしいお店をいくつか思い出した。

田舎の商店街の角にあった喫茶店。
昼間でも暗いそのお店は仲の良いおじいさんとおばあさんが営んでおり、生まれて初めて食べたあんみつにラムネがぱらぱら入っていたのを覚えている。のちにそのおじいさんとおばあさんはご夫婦ではなかった(内縁関係)と聞いて、そのお店のことがなぜかますます好きになったのだった。あれからずっと、あんみつは大人の食べもの。
それと母親の友だちが夜連れて行ってくれたやはり薄暗い喫茶店。
なにしろ田舎で夜出歩くことなどなかったので、薄暗い喫茶店を出たら外が真っ暗だったことに驚いたのと、初めて嗅いだアーモンドコーヒーの香りにうっとりしたことを覚えている。
それと小学生のころ通学路に出来たやはり薄暗い喫茶店。
ログハウス調の重い扉を押して入るとコーヒーの香りとケチャップの焦げた匂いがしていっぺんに好きになったが、帰省の折になつかしい思いで行ってみたらどぎつい看板が立てられており気持ちが醒めてしまった。
薄暗い喫茶店が好きなのは子どものころからだったのだなぁ。

「二度と行けない」というのにはいろいろな理由があることにも、この特集で気づいた。お店が移転・閉店してしまっただけではなく、そこで知り合った人と気まずくなったりフラれたりというのもあるらしい。しかしそのようなお店の存在などないという人がいることにも驚いた。

この特集ではパンチラインがたくさんあって、自分のことを言われた気がしてうれしくなった。

本を年間何千冊読むより好きな本を何度も何度も読み返す方が人生が豊かになると思う、とか、知らない場所で飲食店を探すときに食べログなどの星の数や口コミにばかり頼って探すのはつまらない、とか、捨てられないものがなくてなんでも捨てる人にはその程度の思い出しかないんです、断捨離なんて愚の骨頂、など。
どれもこれも、うんうんと頷きすぎてめまいを起こすほどだった。

2020年7月27日月曜日

空振りの一日

海に行ってどうすんだ、と迷いもあったが考えちゃダメだ、早く目覚めたからには海へ行くのだと空腹を抱えて電車にとび乗った。
一番好きな海岸へ到着したもののやることがなく、貝殻を拾ってコーヒー屋でコーヒーを飲んで寒天を食べてすごすご帰宅。
フンド氏にあのお店のホットドッグを買ってきたのはヨシとする。
テレビ桟敷で相撲を観てから手持ちぶさたになって「ふぞろいの林檎たちⅢ」。ずいぶん早い時間に見始めたはずが気づけば午前さま。途中飲み友だちから「おいしい浮世絵展」に行ったとのメッセージが来てへべれけで迷惑メッセージを返したり、今場所のパンフレットを送った両親からの電話にやはりへべれけで阿炎の休場について語ったり、ラン友から来月の大会についてのメッセージが来て緊張が走ったりしたからか。
なんとも苦しい気持ちで心をオニにして途中でPCを落としたが、何がそんなに苦しかったのか。「ふぞろいの林檎たちⅢ」の登場人物か。
時間をかけて海へ行ってきただけの一日。明日こそは走るぞと決心して何度か読んだ田辺聖子を読み返していると、雨音が聞こえてきた。

2020年1月13日月曜日

フルーティふたつ

コーヒー豆は「喫茶ニャーゴ」と決めているが、旅先で自分のために選ぶコーヒーは別もの。
用事がありごくたまに行く海辺の街で通りかかった小さなコーヒー屋の扉を押す。

コーヒーは大抵その店のブレンドに決めることが多いがそこにはブレンドはなかったので、コーヒーは好きですけど全然詳しくないので教えてください、と言うと、深煎りがお好きですか?と訊かれ、いえ、たぶん深くないほうが好きですと応えると、フルーティなのはいかがですか?果実がついたまま焙煎するとフルーツのような味になるんですよ、と言われてそれは飲んでみたいと思い即決。改めて店内を見回していると、あ、このコーヒーもフルーティでミルクを入れるとロイヤルミルクティーみたいになるんです、と言われて唸る。ではそれもお願いしますと言ってコーヒー豆をすっかり挽いてもらうまで用事があった場所で用足しをすることにした。

翌朝ていねいに淹れたそれは、本当にフルーティな味わいのコーヒーであった。

別の日、やはり用事があった場所へ行ったのちにそこの一階の、いつもは通りすぎるだけのカフェでなにか飲みたくなって店主おすすめのマダガスカルのココアをいただく。普段はアルコール以外はテイクアウトしかしないせっかちな性質なのにどうした風のふきまわしか。

おすすめのココアとはどのようなものか訊ねると、フルーティな味わいとのこと。マッチさん(私のこと)はコーヒーがお好きだからどうかなと思ったんですけど、と差し出されたそれを口にすると、今までに飲んだことのない甘くないフルーティな味わいのココアであった。そのままでも十二分に美味しかったが、残りわずかになったらお砂糖を入れるとまた美味しいですよと言われたので忘れずにそうしてみたらこれまた味わったことのない味に。

同じ日に異なるフルーティな飲み物を味わって、悩んでいたことを一瞬忘れた。

美味しいものってちょっと怖い、とポルトガル人ガイドが主人公に言っていた小説を思い出したが、悪い気は少しもしなかった。

2019年11月26日火曜日

雨の土曜日

思い立って美容院へ。
もう25年以上のお付き合いになる、少し離れた場所のお店。
こちらのオーナーは「サロン・ド・こけし」のマダムとは異なり、おとなしそうな見た目なのにはっきりした人で、その腕前はもちろん、個人的にも信頼している。
今までもなにかと相談したことはあったけれど、そのとき困っていたことを話のついでに相談したら、あれよあれよと解決に導いてくれた。
話に夢中になっているうちにヘアスタイルもきれいに整えてくれて、うれしい気持ちで大雨の中、初めて行く場所へ向かった。
それは年に一度、コーヒー屋さんでの秋の収穫祭でご一緒するアーティストの個展を行っているべつのコーヒー屋さん。
急に連絡したので用事があるとのことで彼女には会えなかった。でもいいのいいの、作品が見れたらいいんです。
お店に入る前にぐるっとまわりを歩くと、外から見える場所に2枚の油絵。彼女の作品だ、と傘をさしたまま見入る。
お店に入って中を見まわすと、カウンター上部の壁に描かれたチョークアートも彼女の手によるものくさい。なるほど、外の作品とこの絵が個展ということなのか。

シックな店内をきょろきょろ、うろうろしていると、○○ちゃんのお友だちのマッチ作家さんですか?とお店の方に声をかけられた。は、はい、と消え入りそうな声で答えると、赤毛のおかっぱのマッチ作家さんが来るから、とだけ彼女から聞いていたので、とお店の方は笑った。そういえばお互い名前を知らなかった。
おいしいコーヒーをいただきながらのんびり過ごし、お勘定をする段になって、奥の扉の向こうにギャラリーを発見。あやうく彼女の作品すべてを見ずに帰るところだった。

キャンバスだけでなく段ボールや茶紙にも描かれた彼女の絵は、たまに会うときに見かけるいたずら描きのようなスケッチを思い出させた。絵にはその人が出るんだなぁ。自由で元気がみなぎる絵を見て、ここへ来てよかったと思った。

このお店のブレンドに横綱ブレンドというのがあったので(稀勢の里の故郷だからだろう)それをおみやげにして次に向かうは明日一緒にマラソン大会を走る姪の待つ家。
「はとエアライン」でピュッと行きたいところだったが、雨の日は運休なんです。
荷物を少なめにして、お気に入りのレインコートとブーツ、傘で歩きましょう。