2019年6月24日月曜日

キャンプだホイホイホイ

キャンプというものをしたことがなかった。
飯盒炊さんなら経験はあったが、集団行動が苦手なインドア派。
思春期のころからそういうときに積極的に手を出す・働くのが照れくさく、一周まわってなにもしないというのが身について、キャンプなんてリア充のするこった、と遠ざかっていた。

しかし

キャンプとキャンプ料理のプロ(ディレクター=D)におんぶ&だっこのキャンプ in 河口湖は、最高だった。


週末は雨予報だったにも関わらず、まったく降られなくて(仲間に聞いたら、どうやら私以外は晴れ男女)山々や船を眺めながら、ぺちゃくちゃ喋りながら、きょろきょろしながらのランは心から気持ちよかった。
テーマが「ゆるラン」だったのでさほど走っていないが、ランのあとの温泉も気持ちよかった。

Dが数日前から仕込んでくれた燻製はDが担当し、あとはDの指示でおもしろいごちそうができ上がってゆく。桜のチップの燻される匂いは、思ったより主張の激しい、でもクセになる匂い。

私が担当になった餃子ピザは、とても簡単な上にすぐ食べられるので、自分のレシピにこっそり頂戴しよう。Dや仲間たちの焼いた肉など、実は高価な食材ではないそうだけれど、とても味わい深くてしっかりと噛みしめた。

ふと気づけば、包丁を使ったり調味液をつくったり、食べるものは食べ、飲むものは飲み、とてもリラックスしていた。ついに来たか、リア充のときが。
飲み疲れた仲間たちが先に寝て、明日の朝食の準備も終わり、さてこれからどうするのか、とDに尋ねると、薪を燃やすんだよ、と事もなげに言う。
燃やす?ただ燃やすの?と聞くと、そうだよ、燃やすんだよ、と禅問答。
男性は、火と棒が好きだっていうからねぇ、というとDともうひとりは不思議そうな顔。

きっと炎を見つめながら内緒話なぞするのだろう、と考えるも、ただ炎を見つめてワインをすする中年三人。炎に夢中になる。なんだこれ。クセになりそう。


翌朝もまさにラン日和。
朝食前に軽く行ってみよう、と、湖に浮かぶ六角堂を見に行ったり、願いが叶うという鐘を鳴らして鳴らしたあとに願いごと何にしよう、とあわてたり、ラベンダーやバラの香りを胸いっぱい嗅いだりして気持ちよく走った。


¥100で1分半利用できるシャワーでもたついて泡を残したまま立ちつくしたり、おいしすぎておかわりした朝食の片づけを終えて、慌ただしくコテージを後にする。
いいところあるよ、とD主導で行った神社がとてもおごそかで、樹木信仰という言葉の意味が少しだけ理解できた気がした。
そういえば、河口湖にいながら富士山の存在を完全に忘れていた。
看板につられてその先の山中の滝へ。
すがすがしいってこのことだね、と言いながら山道を下り、滝に沿って木製の階段を上がり、気付けば山道を走る中年たち。次回のキャンプ、2日目はトレラン練習でここに来よう、と早くも次のプランも決定。

帰りに地元のとうもろこし・甘々娘(かんかんむすめ)を手に思案していると、夏になったら今度はここにメグミが並ぶよ、俺がつくってるんだメグミ、とごま塩ヒゲのおじいさんが言う。あの、そのメグミってとうもろこしのことですか、と尋ねると、甘いぞぅ、トンネルの向こうの畑で作ってるからよ、と立て板に水の勢いで話してバイクで去って行った。


その晩は、カラダが自然にかわいこちゃんのいるお店へ。
こんばんは、と縄のれんをかきわけると、大将とたまに会う常連さんが笑っていた。ちょうどさっきまで噂していたんですよ、と言う。かわいこちゃんはまだ出勤していなかった。
話をするうちに、日本酒からなぜかうどんの話になり、長崎港のうどんを思い出した。
九州出身のその常連さんは、桜島からのフェリーの中で食べたうどんが最もおいしかったという。ああ、そういう話、大好物なんだよなぁと酒が進む。だって港だし、船だし、うどんだし。さらに、スポーツマンで話し好きな大将が実は人見知りで絵が好きな少年だったと聞いて、驚きのあまりまた酒が進む。

キャンプ効果なのか、肝臓まで回復していることに気付いた。

愉しく飲んで帰宅する途中、携帯電話が鳴った。大将からだ。
いま、たった今帰ってきました、ごめんなさい遅くなって、と弾む声で大将は、かわいこちゃんの出勤が遅れたことを詫びた。

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