2021年2月12日金曜日

少年隊はへっぽこランナーをも動かす

急行電車に乗っても1時間以上かかるフンド氏の両親のお墓参りに向かい、そこから走って帰ってくるという酔狂をやってのけた休日。

フンド氏が元気だった頃のお墓参りの愉しみは、駅の近くのラーメン屋さんだった。
そこがいつの間にか閉店しており、すっかり足が遠のいた。
キリスト教式のお墓は線香もたてないしいつ行っても枯葉ひとつ落ちておらずとてもきれいなので、持参したお花を活けるだけでお墓参りは終わり。めったに行くことのない遠方のご両親のいる地にせめて少しでも長くいるために、そのラーメン屋さんは必要だったのだ。
時間をかけて選んだお花を活けて少しお墓の前に佇んだのちに、いつもは気にも留めていなかったがその日にかぎって妙に気になる駅のお蕎麦屋さんへ早足で向かう。
果たしてそこは、都心の駅ソバともまったく違うすばらしくおいしいお店であった。(都心にもあるかもしれないけれど)お墓参りの後、これからはここに来ようと決めた。
舞茸天そばをゆっくり味わって、食後によく寄った喫茶店を横目に、強風の中いよいよスタート。とはいえ食後なので即歩く。野菜の無人販売所がところどころにありとても気になったが、がまんがまん。先日ラン友達が写真を送ってくれた茅葺の屋根の家にもすぐに着いたがまだ先が長いので無念の通過。
そこから先は、街が変わるたびに各党のポスターの顔ぶれが変わるのを見ながら特になにも考えず進むのみ。23区内に入ると少し気が楽になった。住居表示を見て、ここには昔好きだった人が住んでいて遊びに来たことがある気がする、とかここにも昔、妹の受験する学校の見学で来たはずなどといろいろ思い出す。
いい加減に休憩しようと東京ドームへ。いつもは飲まない甘い缶コーヒーを飲んで一服し、ジェットコースターで両手を上げて叫ぶ人たちを見上げる。両国まではあと少し。塩を吹いてざらざらした顔から再度汗を流してラストスパートだ。

結局32㎞も走ったり歩いたりして、シャワーを浴びて酒場に行くにはちょうどよい時間に帰宅。音楽もラジオも一切聞かずに進んだ約4時間、頭の中ではずっと少年隊の「ABC」や「湾岸スキーヤー」が流れていたのであった。

2021年2月10日水曜日

体調不良のにわかファン

珍しくすいていた週末の酒場で飲み友だちにばったり会って飲んだ後に、最近お気に入りの食堂で仕上げのもう一杯。翌日もその飲み友だちと待ち合わせて小さな蚤の市とランチへ。
この日蚤の市で最高にかわいいこけし柄の小箱を入手したところまではよかった。
最近体の調子がよくないなぁと思っていたところに軽く昼酒をかましたせいでなんとなく元気になった気がして明るいうちから「おいてけ堀」へ直行。
たまに会うおじさんに熱燗をごちそうになって調子に乗って飲み上げ、はしご酒好きな飲み友だちに誘われるまま前日と同じ食堂でまた仕上げた翌日から本格的に不調が始まった。

朝から胃が重苦しく食欲も酒欲も出ない。最近続いていたジョグに行く気力もなく引きこもり、フンド氏の月命日の夜もついぞ「ニューねこ正」には行けなかった。
唸って過ごしていたところにLSDのお誘い。
少々遠い場所だけれどみんなで走れば楽しいし、なにより今月はオンラインマラソンなるものに申し込んでいるので少しでも走れたらと気軽に参加表明するも、よく見たら参加者はエリートランナーしかいなかった。しまった、早まったか。
エリートランナーしかいない中でへっぽこランナーが迷惑をかけるわけにはいかないので、重い腰を上げてジョグに出発。
アトロクをタイムフリーで聞きながら走り出すと、先日の少年隊特集を聞き逃したことを知った。苦しくてもアトロクさえあればなんとかなるのでコースを長めに変更。
当時からアイドルにはビタイチ興味はなかったが、さすがに大抵の楽曲は聞いたことがあって懐かしい。昨年末の少年隊特集や筒美京平特集から見る目(聴く耳)が変わり、なんてカッコいいんだろうと今さらながら感動。
その翌日はやはり聞き逃したアトロクのゲレンデDJ特集を聞きながら徒歩出勤。
信州に生まれ育ちながらスキーは大の苦手で授業以外でスキー場には行ったことのない私には知るよしもないゲレンデDJの世界。そのお仕事内容も選曲も何もかもがすばらしくて、脳内には一面の銀世界が広がった。
しかしなにより心を(耳を)射貫かれたのは、最後にかかった少年隊の「湾岸スキーヤー」。
前夜の少年隊特集をリスペクトしてとの南部広美さんの選曲に朝からシビれてつかの間、不調を忘れた。今夜もおとなしく帰って少年隊ナイトだ。

2021年2月5日金曜日

毎日が金曜日

今週は自宅待機と出勤が交互なので毎日が日曜日と金曜日。
いつぞやのタマフルでそんな勤務形態を願う投稿があったけれど、そのときはそんなことありえないと鼻で笑っていたのが現実になったのだ。
ある日は午後から走りに出た。先月末からちょこちょこ走り始めたので足取りも軽く、そうだ、東京ゲートブリッジに行こうと思い付いた。
味気ない倉庫街の新木場も夢の島公園の森の中を走ると気持ちいい。海が見えてようやく若州公園に着いた。去年みんなで来たときと違って海釣りしている人もおらず、しばらく海を眺めていたが手持ち無沙汰なのでセブンティーンアイスを食べてから夢の島マリーナに向かって走り出した。日が傾いてきて酒場の開店時間が気になりあわてて帰った。
またある日は千葉県の里美公園という場所を目指した。ラジオを聞きながら進むも早くも飽きてきた。以前にも行った江戸川までがあまりにも遠くてイヤになってきたがなんとか千葉県に入った。河川敷で途中出逢ったねこたちがみな毛並みがよくて丸々しており耳に去勢もしくは避妊済みのカットが入っていてなんとも幸せな気分になった。
お目当ての里美公園は見事な桜の木と剪定されたバラが整然と並び、春に来たらさぞかしよいだろうと思ったら「ニューねこ正」の美人女将にそのとおりと言われた。

こんな日もこれでおしまい。
そして自宅待機の意味がわかっていないことに今さら気付いた。

2021年2月1日月曜日

RHYMESTERスタンプ会

まだその姿も見ていないのに感じる圧のようなもの。それは威圧感ではなくてフェロモンという名のオーラだと身をもって知ったSHIBUYA TSUTAYAでの「RHYMESTERスタンプ会」。ラップグループのイベントなのに「押韻」ではなく「押印」会。
書籍「RHYMESTERのライブ哲学」の購入者特典でどんなスタンプなのか楽しみではあった。しかしこのご時世だし厳しい決まりもあるし、きっとお役所仕事スタイルでペタペタ押してもらうだけの会なのだろうとあまり期待しないで参加したが、番号を呼ばれて外階段で待ち少しずつ上に進むうちに、楽しみというより処刑台に向かうような気持ちになってきた。押印が済んで階段を下りてくる皆さんの顔はマスク越しでも分かるくらい高潮していた。途中、思ったより話せて~との会話が聞こえて固まった。
話せて・・・って?なにか話すの?何も考えてないし今だって頭は真っ白。

ついにフロアに到着すると宇多さんが見えた。
透明シート越しとはいえとんでもなく近い。いちゃつくカップルくらい近い。などと考えているうちに自分の番が来た。信じられない至近距離で宇多さんは、スタンプは黒と青があるんですけどどちらがいいですか?と、さっきまで聞いていたタイムフリーのアトロクの声で訊ねた。もう、もう、どちらでもよいに決まってるが、くくくくく黒でお願いしますと言って、ていねいにスタンプを押す宇多さんをガン見。なにか気のきいたことを言わなくてはと思ったが口をついて出たのは、ここここここういうスタンプなんですね、というクソつまんねぇ言葉であった。焦って、ラジオ聞いています、頑張ってください、という輪をかけてクソつまんねぇことを言って落ち込みながらお次はDJ JIN。判子の石の名前が浮かばなくて、いいいいい石のやつだと思ってました、とどうしようもないことを言ってしまい落ち込んでいると、隣から感じるナニかに手が震え始めた。隣はDさん。どっしり構えたその姿に圧倒されて、こここここんにちはと挨拶すると「ウッス」というお返事。黒がいいかな、青がいいかなと言うので、くくくく黒でお願いしますと言いつつもそのアバンギャルドなヘアに釘付け。本を押さえる手の震えが止まらない。乾燥のせいか潤んだ瞳とその全身から漂う圧のようなものに動悸が激しくなり息が苦しくなってきたが、ライブ楽しみにしています、えええええMTVも、とだけなんとか声を絞り出して会場を後にした。
帰りに寄ろうと思っていたお店などもう忘れて一目散に駅へ向かうも息苦しくてたまらない。早く渋谷を離れなければ。なんだかスゴい体験をしてしまったようだ。

総武線に乗り換えてひとごこち。
本当はこのイベントに参加する資格があったけれどこのご時世で参加できず、さらに彼女の分もスタンプを、と思ったがそれもNGで歯噛みしていたであろう幼なじみに即連絡。
長文でこの正体不明の圧のようなものについて説明すると、それはフェロモンじゃないの、と言われた。フェロモンってこんなに強烈なものだったのか。
その晩はもう何十回も観た「人間交差点」のライブを見返してまた息が苦しくなったが、幼なじみが送ってくれた雷電ビールで少し落ち着いた。

2021年1月29日金曜日

蝋梅の香り

思い立って葛西臨海公園までよろめきながらジョグしたある日。
もやがかかった中川の向こう側に東京ゲートブリッジが見えた。中川と海の境目辺りがきれいでまぶしかった。久しぶりの海。なぎさ公園の海岸で貝殻を探すもめぼしいものはなかった。家には厳選されためぼしい貝殻があるからもういらないのだけど、時おり海を眺めては貝殻を探すのが好きなのだ。
この日は元気があったので公園を半周しているとマスク越しに甘い香りが漂っていることに気付いた。冬枯れのこの公園のどこにこんな香りがあるのかと探してみると、それは蝋梅だった。
今まで香りを嗅いだことがなかったが、つぼみはおもちゃみたいで薄いロウを重ねたような花びらは甘くて爽やかな香りだった。
蝋梅はいつも都立公園で眺めていたことを思い出して、また行こうと思い立った。

あの公園の近くには必ず行くお蕎麦屋さんがある。
いつもは食べようとも思わない味噌田楽で一杯やって、お行儀悪くおちょこの酒にそばをつけて啜ろう。
などと考えながらにやにや走っていたら、殺人現場のようになぜかチョークで囲まれた犬のうんちを踏みそうになった。

2021年1月27日水曜日

ただいま

浴槽の塗装のためにユニットバスが使用できないので、以前住んでいたマンションの一室で数日間の寝泊まり生活。
寝袋や身の回りのものを運びに4年ぶりに入ったそこは何もかもが懐かしかった。
間取りは少し違うけれど、お風呂は広いしきれいだしやっぱりここはいいなぁ、と思ったのはそのときだけだった。
カーテンもなく、テーブルも椅子も冷蔵庫もWi-FiもPCもTVもない、持ち込んだ数冊の本だけの部屋はなんとも落ち着かなくて、初日の夜はしたたか酔って眠りについたが夜中に目覚めてしまった。
日が昇るのを待って自宅へ戻ると、いつもの部屋はしっかり養生されており他人の顔。コーヒーを淹れて飲んでも間が持たず、そそくさと家を出た。
こんな日があと2日も続くのかと思ったら目の前が暗くなったので、せめて朝食は「おはよう!商店」で。
そしてランチは「レストラン両国駅」で。
美味しいものを食べている間は全部忘れることができた。
午後はのんびりジョグ。すれ違う犬たちに色目を使ったり花の香りを嗅いだりして隅田川を走るも、しばらく洗濯ができないというのにジョグのせいでまた洗濯物を増やしてしまったことを悔やむ自分のみみっちさにがっかり。
増やした洗濯物をランドリーバッグに押し込んでいると、先日「おいてけ堀」で仲良くなったおじさんとのこの日の約束を思い出した。
長いことひとり飲みのお店としてお邪魔していたこのお店、昨年の暮れから顔馴染みのお客さんがぐっと増えた。この晩おじさんを交えて話した方が、私と同じ徒歩通勤でたまに隅田川沿いを走るという。あれ、そういえば週末に隅田川の向こう側を走っていたでしょうと言われてギクッ。いつも汚い格好でふぅふぅ言いながら走っているので気付かれたくはなかった。
話は盛り上がり、気付けば最後の客のひとり。
おじさんがどんどん飲めとそそのかすたびに隣の方が、おごりでもないのになに言ってんだと言う掛け合いを何度聞いたかわからないほど飲んでさようなら。楽しい夜だったけれど、帰るのはあの部屋かと考えたら酔いもさめた。
二日酔いで目覚めて、もうこんな生活はイヤだとしみじみ思う。ボロくて汚くても自分の好きなものだらけの自宅が恋しい。目と鼻の先なのに遠く感じる。
自宅でコーヒーを淹れながら、今朝はソバだなと思ったらもう頭はソバでいっぱいになり「土俵そば」へ急ぐ。
温かい湯気でいっぱいの店内はほぼ埋まっていて、控えめにソバをすする音だけが響く。ここはやはり紅しょうが天そば。しばらく待って出されたそれは、立ち食いそばのお店を始めようとしていた友だちが奨めてくれただけあってとんでもなく美味しかった。

浴槽の塗装が終わったと業者さんから連絡があり、やっと帰れるとうれしくなったがお風呂はまだあと一日使わないでくださいと言われた。昨夜教えてもらった最高の銭湯へ行こうかとも考えたが、なんでもよいから帰りたくて部屋を引き払って帰宅。
寒くてもボロくても汚くても自宅はいいなぁと、ひっそり家でお祝いしたのは言うまでもない。

2021年1月18日月曜日

ブラチスラバ世界絵本原画展

地元の喫茶店で明るいうちから飲んでしまった翌日は、昨年から楽しみにしていた「ブラチスラバ世界絵本原画展」へ。

寒い中をとぼとぼ歩いて到着した千葉市美術館には、さや堂ホールというすてきな空間があった。さや堂ホールは、古い建物をそのまま新しい建物の中に残したえんどう豆のような状態から名づけられたとのこと。
原画展は絵もさることながら物語がおもしろいものもたくさんあって、特に中国や韓国のものがおもしろかった。同時開催の田中一村の絵も素晴らしく、二日酔いながらうっとり長い時間を過ごすことができた。

帰り道、今宵はお弁当にしようとひらめいた。
お弁当ならば「ぺろり弁当」でしょう。
今晩は酒はそこそこにしてお弁当をつついて旅気分を味わい、温かいお風呂で本を読んで寝ようと心に決めた。

わざと各駅停車の電車に乗って先日から読み始めた本を開いて読み始めると旅気分が高まってきた。これはこれで、よい休日。