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2021年5月15日土曜日

土曜日の気分

遠くのヘリコプターの音はのどかな休日の象徴だ。
ラストにその音を聞きながら「家族ゲーム」を観終わったのは金曜日の深夜だった。
土曜日の始まりだ。
洗濯物とふとんを干して、音楽をシャッフルしたら懐かしい「Saturday in tha park」が始まった。この曲を聴くと休日に実家の四畳半の隙間に挟まって小さな窓からぼんやり空を見ていたことを思い出す。
そうだ、久しぶりにフラットホワイトを飲もう、と家を出たがいつものお店を通りかかって唐突にカレーライス。
この日は今までになく美味しい切り干し大根の煮物をつけてくれた。カレーライスは土曜日らしく最後の最後のカレーの様子でそれもよかった。
食後にフラットホワイトを求めてコーヒー屋さんにようやく到着。
またもやマラソン話に花を咲かせてぶらぶら帰宅する途中で、暖かくなるとリード付きで玄関から出てくる三毛猫に再会して思う存分撫でくりまわす。隣の犬が通っても道のど真ん中から動かない三毛猫は可憐で毛並みがよい。

この日は相撲のパイセンと大相撲観戦。着替えていそいそ出かけると、とんかつ屋さんの前で貴闘力に遭遇。そういえば王鵬は今場所どんな感じだったかなと考えながら国技館へ向かう。

取組はあっという間で、伊勢ヶ浜親方をじっと見つめたり幕内土俵入りで豊昇龍と若隆景が並んでいる姿に見とれたり血まみれの剣翔に驚いたり応援タオルをとっかえひっかえしているうちにもう御嶽海が控えに出てきた。途中、自分の応援している関取たちがどうやら北勝富士以外全員負けていることに気付いて照ノ富士だけは験担ぎにタオルなしで応援しようと思ったが、照ノ富士だもん大丈夫だよとパイセンが言うので思いきってタオルを広げた。結果危なげなく勝ってホッとしたのもつかの間、結びの霧馬山は負けた。
緊急事態宣言下でヤミ営業をしているお店のない両国で、それでもなにか食事でもとノンアルコールビールでパイセンと乾杯。杯を重ねるうちにノンアルコールでも次第に酔った気になってきた。
自宅で二次会を始めたらもう深夜で、完璧な土曜日が名残惜しくて深酒をキメたのはいうまでもない。

2021年4月9日金曜日

ほめられて

念願の海のまちへ出かけた、特別な日。
海以外なにもないので、特別な日に行こうと思っていたのだ。

のんびり砂浜を歩いてたまに水平線や遠くの島をながめ、好みの貝殻を探して歩き、ちょうどよい丸太を見つけて腰かけた。日陰で本を読みながらうとうとしたら気持ちよさそうな日。そう思ってこの日のお供に選んだ山口瞳「湖沼学入門」をバッグの上から撫でた。
山に囲まれて育ったから海があるだけでうれしい。

海のまちだけれど、行くのは喫茶店。
春になると登場するここのいちごケーキは自分にとって季節の風物詩であり、甘いものは苦手で、などと言っていられない特別なもの。
ここでしか見たことのない大きなまな板の上で注文の入ったサンドイッチを見事な手さばきで仕上げていくこわもてマスターがよく見える席でじっとその手つきを見る。いちごケーキはいちごがおいしくて、コーヒーをおかわりしてじっくり味わった。
薄暗くてコーヒー豆の香りが木の壁や床にしみこんだ古いお店。ここのブレンドは自宅で飲んでもこのお店の匂いがする。

予定も目的もなくいちごケーキでおなかもふくれて、むかし一度だけ行った森の中の雑貨屋さんがまちなかに越してきたことを思い出して向かう。まちなかといえど3㎞近く離れてはいるが、路上で売る花や野菜をながめたり年季の入ったビルで古書を売っているのを発見したり早くも田んぼに水が張ってありもうつゆ草が咲いていることに驚いたりしているうちに到着。制服姿の女の子とその両親が店主と話しており、店主は入学祝ですとなにかを手渡していた。
小さなそのお店をあちこち見て回っていると、鮮やかな金髪の店主からいい髪色ですね、と言われた。髪をきれいにしてもらっても酒場しか行かない身としてはうれしい。来てよかった。

パン屋さんでフンド氏へのおみやげにホットドックを買って一服しているといつの間にか隣にきれいな顔立ちのおばあさんがにこにこ立っていた。あなた、その赤いスニーカー似合ってるわね、と唐突に言われて、えへへ、ありがとうございますと答えた。新しい靴を履いても酒場しか行かない身としてはうれしい。

ほめられたからではないけれど、やっぱりこのまちが好きだなぁ。
愉しかった、いい一日だったな、とマスクの中でつぶやいた。

2021年2月15日月曜日

こんなに走っても体重はビタイチ減らない

エリートランナーたちと遠方から遠方へLSDの休日。
ペースはさほど早くなかったが、なにしろ週に一日しかランを休まない人たちなのでついていくので精一杯。しかし長距離初挑戦の女子が、湖が見えたら帰りますと言っていたのにうっかりほぼ全行程を走ってしまったほど湖は美しかった。
先日のお墓参りランから間がなかったために足取りは重く、登り坂では何度も歩いたがなんとか湖を一周、コンビニ休憩でいつもは絶対に食べないいちごパフェを食べたらやる気がみなぎってきた。モノレールの始発であり終点である駅で女子とはいったんさようなら。
いよいよ後半、玉川上水をつまづきながら走る。
エリートランナー2名のペースが上がっている気がして、ちょ、ちょ、ちょっと早くないですか、とクレームをつけると、ああそうだね、でも大丈夫でしょうとつれないこたえ。
ほうほうのていでゴール。なんとか30㎞を走り切った。
同じ日の同じ時間に別の場所でLSDをしていた仲間たちから優雅にコーヒータイムをキメている写真が送られてきて、写真さえ忘れて必死で走っていたことに気付いた。
案内された地元の銭湯の露天風呂では、気持ちよくて思わず唸り声が出た。
そして待ちに待った打ち上げはビールがおいしくてずっとビール。先週の胃の不調はきれいさっぱり消えた。

中1日で30㎞ずつ走ったので翌日はさぞかし体がきつかろうと思ったがそうでもなく、ジョグに出てもよかったのだが近所をぶらぶら散歩。
ご夫婦ともにランナーのコーヒー屋さんで筋肉痛自慢をしてからフンド氏邸へ寄り、途中で大好きな白ワインを発見したので、もう何度も見ている「タイガー&ドラゴン」をお供に夜を過ごすことにした。
それにしても何度見ても唸る。唸りつつ酔いが回ってきたころ、古田新太と清水ミチコの夫婦漫才で涙が止まらなくなった。
最終話の手前で電源を落とし「仮面舞踏会」を見てからおやすみなさい。翌朝はまた、まぶたが33に腫れていることだろう。

2019年9月26日木曜日

秋の収穫祭とマフィアカ―

初めてウインナコーヒーを覚えたのは「喫茶ニャーゴ」。
カウンターには小さな線路が敷かれており、注文したものがトロッコに乗って運ばれてくる。
白いシャツとベストを着た背の高いマスターと、髪を高々と結った年配のウェイトレスがいる。広くてうす暗い店内で味わったそれは、信じられないほどおいしかった。
別の日には、アーモンドコーヒーというものも飲んだ。
コーヒーの匂いのしみついた壁とアーモンドの香りに、子どもながら酔ったような気分になったものだ。

コーヒー豆ならここのものと決めている。
それは、年に一度たのしいイベントをおこなう「SUNSHINE STATE ESPRESSO」。

そのたのしいイベント「秋の収穫祭」に、今年はマッチ売りの中年が参加します。
マッチ売りが久しぶりすぎて緊張が高まっている。
しかも、その前に締切が迫っているモノがあるのに手つかずだ。

マラソン大会も迫っているのにひとりではやる気が起きないので、誰かに誘ってもらったら練習に参加するようにしている。
先日は12月におこなわれる那覇マラソンのクリニックなるものに誘われて参加。
いつもの練習会とは違う練習もおもしろかったし、コーチが目の醒めるようなイケメンだったので景色もばつぐん。少し無茶しつつ楽しくクリニックを終えて友だちと別れランステに戻る途中、近道をしたつもりが元の場所に戻っていたことに背筋が寒くなった。


先日会ったイタリアンマフィアのクルマは、ナントカいう名前のクラシックなクルマだった。
シックなオリーブグリーンの車体のそのクルマ、なんと助手席のドアが外からしか開けることができないらしい。ということは、お気に入りの女性を助手席に乗せたら、彼がいちいち外からドアを開けにいくか、もしくはそのままあのステキなマフィア邸に・・・

なんという悪いマフィア!
「はっしゃオーライ!」のクリスマスタクシーには、そんな色っぽい仕掛けはありませんのでご安心を。

2017年8月22日火曜日

うとうとシアターで うとうと

たまには映画でも観るか、と
向かった「うとうとシアター」で、うとうと。
映画のせいなのか
それとも、
新進気鋭の監督の感覚についていけなくなった
おのれのせいなのか。
(おそらく後者)
もやもやした思いを抱えて、開店したばかりの酒場へ。
この日は、美人姉妹が出勤しており
女将さんと大将と隣客とで、ねこ話。
30年前のねこの話で涙ぐむ、生まじめそうな隣客は
この晩、私に禁断の4杯目を呑ませた。



コーヒーを飲む習慣のないあなたでも
「喫茶ニャーゴ」のコーヒーが恋しくなる日があるはず。
それはもちろん、コーヒーだけじゃないんですけどね。
長年淹れてきた、コーヒーの匂いのしみついたお店のにおいや
手に入れたばかりの本を開くときの、静かな昂揚感。
あのどしゃ降りの花火大会は
人が少なくて、初めてきれいに花火が見られましたよ、とか

あの、しとしと雨の花火大会の夜は
湖のほとりで、優雅にビールを飲みながら見ることができたけれど
見えたのは、花火のしっぽばかりで
かんじんの花火は雲の中だったんですよ、とか

他愛もない話をしながら
マスターがていねいに淹れたコーヒーを飲む。
そんな時間も、ねまちで。