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2021年7月9日金曜日

かわいい文豪たちと過ごす

我が家のくちなしの最後のつぼみが開いた。
ゆっくり、長く咲くんだよと言い聞かせたおかげで今年はみんなずいぶん長く咲いてくれた。

しかしこの香りも、鼻が悪ければわからない。
鼻炎がひどくなってきたので労働先の近くの耳鼻科へ行くも臨時休業。それでは自宅近くの耳鼻科へと急いでいたら「おいてけ堀」での飲み友だちから珍しくお誘いの電話。来週からはまたしばらく会えないので、耳鼻科を捨てて「おいてけ堀」へ。
この日はいわし刺が美味しかった。
それから近所のお豆腐屋さんがやってきて三人で宴会。お豆腐屋さんは自分が考えていたよりずっと早起きで、そして彼が早朝の配達中に通る「レストラン両国駅」が、今日誘ってくれた飲み友だちの行きつけと知って驚いた。
こんな楽しい時間もまたしばらくおあずけ。今度の自粛期間は本を読むのだ。

先日のアトロクでの特集がおもしろくて、聞き終えてすぐに「オロロン書房」に走って手に入れた本「文豪たちの美味しいことば」がとてもおもしろかった。
小泉八雲の言葉が特によかった。
そのずっと前の特集「文豪たちのずるい謝罪文」もおもしろくて、やはり「オロロン書房」へ走った。内容もさることながら、著者の山口謡司さんの語り口と文章(イラストまで!)がとても気に入ってファンになったし、有名だからこそ敬遠していた文豪たちの著書を読みたくなった。
酒は控えめに・・・できるだろうか。

2021年4月9日金曜日

ほめられて

念願の海のまちへ出かけた、特別な日。
海以外なにもないので、特別な日に行こうと思っていたのだ。

のんびり砂浜を歩いてたまに水平線や遠くの島をながめ、好みの貝殻を探して歩き、ちょうどよい丸太を見つけて腰かけた。日陰で本を読みながらうとうとしたら気持ちよさそうな日。そう思ってこの日のお供に選んだ山口瞳「湖沼学入門」をバッグの上から撫でた。
山に囲まれて育ったから海があるだけでうれしい。

海のまちだけれど、行くのは喫茶店。
春になると登場するここのいちごケーキは自分にとって季節の風物詩であり、甘いものは苦手で、などと言っていられない特別なもの。
ここでしか見たことのない大きなまな板の上で注文の入ったサンドイッチを見事な手さばきで仕上げていくこわもてマスターがよく見える席でじっとその手つきを見る。いちごケーキはいちごがおいしくて、コーヒーをおかわりしてじっくり味わった。
薄暗くてコーヒー豆の香りが木の壁や床にしみこんだ古いお店。ここのブレンドは自宅で飲んでもこのお店の匂いがする。

予定も目的もなくいちごケーキでおなかもふくれて、むかし一度だけ行った森の中の雑貨屋さんがまちなかに越してきたことを思い出して向かう。まちなかといえど3㎞近く離れてはいるが、路上で売る花や野菜をながめたり年季の入ったビルで古書を売っているのを発見したり早くも田んぼに水が張ってありもうつゆ草が咲いていることに驚いたりしているうちに到着。制服姿の女の子とその両親が店主と話しており、店主は入学祝ですとなにかを手渡していた。
小さなそのお店をあちこち見て回っていると、鮮やかな金髪の店主からいい髪色ですね、と言われた。髪をきれいにしてもらっても酒場しか行かない身としてはうれしい。来てよかった。

パン屋さんでフンド氏へのおみやげにホットドックを買って一服しているといつの間にか隣にきれいな顔立ちのおばあさんがにこにこ立っていた。あなた、その赤いスニーカー似合ってるわね、と唐突に言われて、えへへ、ありがとうございますと答えた。新しい靴を履いても酒場しか行かない身としてはうれしい。

ほめられたからではないけれど、やっぱりこのまちが好きだなぁ。
愉しかった、いい一日だったな、とマスクの中でつぶやいた。

2019年9月27日金曜日

だがそれでいい

秋が深まったら着たいジャケットを「メンキー&ノンキー」で発見。
そういえばむかしむかし、やはりここである洋服にひとめ惚れしたとき店主に、サイズ大丈夫ですか、とぼそっと言われたことがある。なんと失礼な!と思ったが、試着するまでもなくどう見ても当時の自分には入らない洋服だった。

そういえば、何年になりますか、と唐突に店主。
その日はお彼岸で、フンド氏がお世話になっているお寺さんの秋の法事で、クラシックギターとソプラノ歌手の生演奏と精進料理と、未亡人友だちとのおしゃべりを愉しんだ帰りだった。
店主がジャケットを畳みながら、カラダ、いい感じに戻ってよかったですね、とぼそっと言った。そんなに痩せていましたか私、と訊くと、一時期ね、今の方がいいですよ、と店主は応えた。
そうですかねぇ、とつぶやきながら、半年以上量っていない己の目方はいったい今どうなっているのか、恐ろしくて目を背け続けているとは言えなかった。


エッセイ以外もう全作読み尽くしたと思っていた作家の、未読の本を5冊も発見。
それは仕事帰りの「オロロン書房」にて。
その作家の小説を読みながら湯舟に浸かったり、お酒を飲んだり、眠りに落ちたりする幸せといったらない。これでしばらくは禁断症状に怯えることもない。


相変わらず、マラソンの練習にはやる気が出なくて、締切の迫っている案件も手つかず。
やる気のないときは、やる気が出るまで休むべし、と決めて早や3年。本気出す、と意気込んで早や半年。
季節とともに空の様子や道端の雑草や古ぼけた建物が変わっていくのを眺めながら、焦りがないことに焦る。
とはいえ、秋から冬にかけて行くライブと旅のことで、頭はいっぱい。

2017年9月29日金曜日

そりゃだめだよ

愛する酒場に背を向けてさっさと帰宅し
毎晩毎晩、飽きもせずに
厚揚げと豆腐と納豆をつまみ
ノンアルコールビールを2本飲む。

本棚の本をめくりながら
ウイスキーをひとくちだけ飲んで早々に寝る。
たまには早朝ジョグもして
さらに歩いて出勤。

こんな生活をしているのは
健康診断と、マラソン大会のため。
マラソン大会はともかく
また旅ができるのが、うれしい。

終わったら、帰りの車内で
たくさん飲んで食べて
おっと
この旅に合う本も持っていかなきゃ。


最近読んでいる本は
特になにも起こらない、寝る前に最適な本。
しかし
あまりにもひんぱんに
「併し」
という言葉が出てくる。
1ページに5回は出てくる。

気になって気になって
文章が頭に入ってこないので、
また戻って読み直しているうちに
本が顔面に落ちて、寝るのが常である。

2017年5月31日水曜日

アーティチョークに似た花と獅子文六

朝は、花の話しをしてから、出かける。

きんかんについていた虫、
さなぎになる前に、ひよどりに喰われてしまったよ、とか
今年は、あじさいが見事だこと、とか
枯木に水をやっていたら、新芽が出たけれど、なんの木かしら、とか
花をそだてるのがじょうずなひとと、
マンションのぐるりを歩きながら、花の話し。
まだか、まだか、と待ちわびていた、
アーティチョークに似た花が、開花していた。
大きめのあざみみたいだったのに
毎年確実に、たくましくなっている。


「この本を読むと、なぜかあなたを思いだすわ」
と、駄菓子屋さんに言われ、年季の入った文庫本をもらった。
その本の作家は明治生まれで、私が生まれる前に亡くなっている。
もらった本がおもしろくて、また、ニクい本屋さんで手に取った
その作家のべつの本も、とてもおもしろかった。
さらに、著者近影の写真にひとめぼれした旨、
ニクい本屋さんに打ちあけたら
そのうちの1冊が、ドラマ化されることを、教えてくれた。

ドラマ化されるのは、私小説のようなものなので、
主演俳優が気になるなぁ、と思っていたら
ニクい本屋さんから、続報が入った。

・・・悪くはない、かもしれないけれど、できたら
小林薫あたりが、よかったかな(小声)