2021年2月5日金曜日

毎日が金曜日

今週は自宅待機と出勤が交互なので毎日が日曜日と金曜日。
いつぞやのタマフルでそんな勤務形態を願う投稿があったけれど、そのときはそんなことありえないと鼻で笑っていたのが現実になったのだ。
ある日は午後から走りに出た。先月末からちょこちょこ走り始めたので足取りも軽く、そうだ、東京ゲートブリッジに行こうと思い付いた。
味気ない倉庫街の新木場も夢の島公園の森の中を走ると気持ちいい。海が見えてようやく若州公園に着いた。去年みんなで来たときと違って海釣りしている人もおらず、しばらく海を眺めていたが手持ち無沙汰なのでセブンティーンアイスを食べてから夢の島マリーナに向かって走り出した。日が傾いてきて酒場の開店時間が気になりあわてて帰った。
またある日は千葉県の里美公園という場所を目指した。ラジオを聞きながら進むも早くも飽きてきた。以前にも行った江戸川までがあまりにも遠くてイヤになってきたがなんとか千葉県に入った。河川敷で途中出逢ったねこたちがみな毛並みがよくて丸々しており耳に去勢もしくは避妊済みのカットが入っていてなんとも幸せな気分になった。
お目当ての里美公園は見事な桜の木と剪定されたバラが整然と並び、春に来たらさぞかしよいだろうと思ったら「ニューねこ正」の美人女将にそのとおりと言われた。

こんな日もこれでおしまい。
そして自宅待機の意味がわかっていないことに今さら気付いた。

2021年2月1日月曜日

RHYMESTERスタンプ会

まだその姿も見ていないのに感じる圧のようなもの。それは威圧感ではなくてフェロモンという名のオーラだと身をもって知ったSHIBUYA TSUTAYAでの「RHYMESTERスタンプ会」。ラップグループのイベントなのに「押韻」ではなく「押印」会。
書籍「RHYMESTERのライブ哲学」の購入者特典でどんなスタンプなのか楽しみではあった。しかしこのご時世だし厳しい決まりもあるし、きっとお役所仕事スタイルでペタペタ押してもらうだけの会なのだろうとあまり期待しないで参加したが、番号を呼ばれて外階段で待ち少しずつ上に進むうちに、楽しみというより処刑台に向かうような気持ちになってきた。押印が済んで階段を下りてくる皆さんの顔はマスク越しでも分かるくらい高潮していた。途中、思ったより話せて~との会話が聞こえて固まった。
話せて・・・って?なにか話すの?何も考えてないし今だって頭は真っ白。

ついにフロアに到着すると宇多さんが見えた。
透明シート越しとはいえとんでもなく近い。いちゃつくカップルくらい近い。などと考えているうちに自分の番が来た。信じられない至近距離で宇多さんは、スタンプは黒と青があるんですけどどちらがいいですか?と、さっきまで聞いていたタイムフリーのアトロクの声で訊ねた。もう、もう、どちらでもよいに決まってるが、くくくくく黒でお願いしますと言って、ていねいにスタンプを押す宇多さんをガン見。なにか気のきいたことを言わなくてはと思ったが口をついて出たのは、ここここここういうスタンプなんですね、というクソつまんねぇ言葉であった。焦って、ラジオ聞いています、頑張ってください、という輪をかけてクソつまんねぇことを言って落ち込みながらお次はDJ JIN。判子の石の名前が浮かばなくて、いいいいい石のやつだと思ってました、とどうしようもないことを言ってしまい落ち込んでいると、隣から感じるナニかに手が震え始めた。隣はDさん。どっしり構えたその姿に圧倒されて、こここここんにちはと挨拶すると「ウッス」というお返事。黒がいいかな、青がいいかなと言うので、くくくく黒でお願いしますと言いつつもそのアバンギャルドなヘアに釘付け。本を押さえる手の震えが止まらない。乾燥のせいか潤んだ瞳とその全身から漂う圧のようなものに動悸が激しくなり息が苦しくなってきたが、ライブ楽しみにしています、えええええMTVも、とだけなんとか声を絞り出して会場を後にした。
帰りに寄ろうと思っていたお店などもう忘れて一目散に駅へ向かうも息苦しくてたまらない。早く渋谷を離れなければ。なんだかスゴい体験をしてしまったようだ。

総武線に乗り換えてひとごこち。
本当はこのイベントに参加する資格があったけれどこのご時世で参加できず、さらに彼女の分もスタンプを、と思ったがそれもNGで歯噛みしていたであろう幼なじみに即連絡。
長文でこの正体不明の圧のようなものについて説明すると、それはフェロモンじゃないの、と言われた。フェロモンってこんなに強烈なものだったのか。
その晩はもう何十回も観た「人間交差点」のライブを見返してまた息が苦しくなったが、幼なじみが送ってくれた雷電ビールで少し落ち着いた。

2021年1月29日金曜日

蝋梅の香り

思い立って葛西臨海公園までよろめきながらジョグしたある日。
もやがかかった中川の向こう側に東京ゲートブリッジが見えた。中川と海の境目辺りがきれいでまぶしかった。久しぶりの海。なぎさ公園の海岸で貝殻を探すもめぼしいものはなかった。家には厳選されためぼしい貝殻があるからもういらないのだけど、時おり海を眺めては貝殻を探すのが好きなのだ。
この日は元気があったので公園を半周しているとマスク越しに甘い香りが漂っていることに気付いた。冬枯れのこの公園のどこにこんな香りがあるのかと探してみると、それは蝋梅だった。
今まで香りを嗅いだことがなかったが、つぼみはおもちゃみたいで薄いロウを重ねたような花びらは甘くて爽やかな香りだった。
蝋梅はいつも都立公園で眺めていたことを思い出して、また行こうと思い立った。

あの公園の近くには必ず行くお蕎麦屋さんがある。
いつもは食べようとも思わない味噌田楽で一杯やって、お行儀悪くおちょこの酒にそばをつけて啜ろう。
などと考えながらにやにや走っていたら、殺人現場のようになぜかチョークで囲まれた犬のうんちを踏みそうになった。

2021年1月27日水曜日

ただいま

浴槽の塗装のためにユニットバスが使用できないので、以前住んでいたマンションの一室で数日間の寝泊まり生活。
寝袋や身の回りのものを運びに4年ぶりに入ったそこは何もかもが懐かしかった。
間取りは少し違うけれど、お風呂は広いしきれいだしやっぱりここはいいなぁ、と思ったのはそのときだけだった。
カーテンもなく、テーブルも椅子も冷蔵庫もWi-FiもPCもTVもない、持ち込んだ数冊の本だけの部屋はなんとも落ち着かなくて、初日の夜はしたたか酔って眠りについたが夜中に目覚めてしまった。
日が昇るのを待って自宅へ戻ると、いつもの部屋はしっかり養生されており他人の顔。コーヒーを淹れて飲んでも間が持たず、そそくさと家を出た。
こんな日があと2日も続くのかと思ったら目の前が暗くなったので、せめて朝食は「おはよう!商店」で。
そしてランチは「レストラン両国駅」で。
美味しいものを食べている間は全部忘れることができた。
午後はのんびりジョグ。すれ違う犬たちに色目を使ったり花の香りを嗅いだりして隅田川を走るも、しばらく洗濯ができないというのにジョグのせいでまた洗濯物を増やしてしまったことを悔やむ自分のみみっちさにがっかり。
増やした洗濯物をランドリーバッグに押し込んでいると、先日「おいてけ堀」で仲良くなったおじさんとのこの日の約束を思い出した。
長いことひとり飲みのお店としてお邪魔していたこのお店、昨年の暮れから顔馴染みのお客さんがぐっと増えた。この晩おじさんを交えて話した方が、私と同じ徒歩通勤でたまに隅田川沿いを走るという。あれ、そういえば週末に隅田川の向こう側を走っていたでしょうと言われてギクッ。いつも汚い格好でふぅふぅ言いながら走っているので気付かれたくはなかった。
話は盛り上がり、気付けば最後の客のひとり。
おじさんがどんどん飲めとそそのかすたびに隣の方が、おごりでもないのになに言ってんだと言う掛け合いを何度聞いたかわからないほど飲んでさようなら。楽しい夜だったけれど、帰るのはあの部屋かと考えたら酔いもさめた。
二日酔いで目覚めて、もうこんな生活はイヤだとしみじみ思う。ボロくて汚くても自分の好きなものだらけの自宅が恋しい。目と鼻の先なのに遠く感じる。
自宅でコーヒーを淹れながら、今朝はソバだなと思ったらもう頭はソバでいっぱいになり「土俵そば」へ急ぐ。
温かい湯気でいっぱいの店内はほぼ埋まっていて、控えめにソバをすする音だけが響く。ここはやはり紅しょうが天そば。しばらく待って出されたそれは、立ち食いそばのお店を始めようとしていた友だちが奨めてくれただけあってとんでもなく美味しかった。

浴槽の塗装が終わったと業者さんから連絡があり、やっと帰れるとうれしくなったがお風呂はまだあと一日使わないでくださいと言われた。昨夜教えてもらった最高の銭湯へ行こうかとも考えたが、なんでもよいから帰りたくて部屋を引き払って帰宅。
寒くてもボロくても汚くても自宅はいいなぁと、ひっそり家でお祝いしたのは言うまでもない。

2021年1月18日月曜日

ブラチスラバ世界絵本原画展

地元の喫茶店で明るいうちから飲んでしまった翌日は、昨年から楽しみにしていた「ブラチスラバ世界絵本原画展」へ。

寒い中をとぼとぼ歩いて到着した千葉市美術館には、さや堂ホールというすてきな空間があった。さや堂ホールは、古い建物をそのまま新しい建物の中に残したえんどう豆のような状態から名づけられたとのこと。
原画展は絵もさることながら物語がおもしろいものもたくさんあって、特に中国や韓国のものがおもしろかった。同時開催の田中一村の絵も素晴らしく、二日酔いながらうっとり長い時間を過ごすことができた。

帰り道、今宵はお弁当にしようとひらめいた。
お弁当ならば「ぺろり弁当」でしょう。
今晩は酒はそこそこにしてお弁当をつついて旅気分を味わい、温かいお風呂で本を読んで寝ようと心に決めた。

わざと各駅停車の電車に乗って先日から読み始めた本を開いて読み始めると旅気分が高まってきた。これはこれで、よい休日。

2021年1月15日金曜日

石岡瑛子展をはしご

ラジオで熱量の高い感想を聞いてすぐに予約した石岡瑛子展「血が、汗が、涙が、デザインできるか」を観に出かけた。

今年初めての美術館。真っ赤な入口を入るとすぐに展示に引き込まれて気付けば2時間以上経っていた。彼女の手掛けた作品の幅が広いこともあり、たくさんの本と映画を一度に観たようだった。
なぜだか昔の雑誌や広告が好きで、古い雑誌の広告を見てはにっこりうっとりしていた理由が、彼女の誰にも敵わないセンスと妥協を許さない意思の伝わる資生堂の前田美波里の広告やホネケーキの広告の非常に細かい直しから伝わった気がした。ホネケーキで洗顔してみたくなるもの。
それにしても沢田研二の広告、素敵だったなぁ。それと最後に展示されていた学生のときにつくったという「えこの一代記」がほんとうによかった。

朝から何も食べていなかったので「ぺろりレストラン」でランチ。
もう何度も作っているミートソースを先日失敗しちゃったんですよ、とこわもて料理人に言おうと思ったが、あんまりおいしくて言うのを忘れた。あーおいしかった、とわざとらしく大声で言ってごちそうさま。

その翌日、銀座グラフィックギャラリーで開催されている石岡瑛子展「グラフィックデザインはサバイブできるか」へ。
なにかを得ようとかなにかを感じなければなどと気負わずにこの日もふらりと寄ったのだが、クロッキーが数点あったのと改めてPARCOの広告を見られたこと、膨大な数の広告作品を映像で一度に見られる場所もあり、広告に特化した展示だったのがよかった。
もう本は買わないぞ、買わないぞと思っていたが、帰りについに本を手にしてしまった。図録でなく評伝。とても分厚い本だが早く読みたくて、帰り道その重さを何度もうれしく思った。

本は買ってもなかなか手を出さない悪い癖が今回は出ず、適当に晩酌を済ませたあとにそのピンクの本を開いた。

2021年1月14日木曜日

大相撲初場所二日目

寒い朝、ラン友たちと待ち合わせて隅田川沿いをLSD。
この日は相撲観戦ほぼ初心者のラン友たちと4人で国技館へ。でもせっかくだから少し走ろうということになったが一人は品川の向こうの自宅から走ってやってきた。
いつもはひとりで走るこのコースを友だちと話しながらゆるゆる走り、鷲神社でお参りしてからあしたのジョーにご挨拶を、と思っていたのだが道を間違えてジョーには失礼した。ランステで着替えて隅田川沿いを歩いて両国へ向かい、船着場で階段を登ったら一同がおおおと声を上げた。ちょうど幟はためく国技館の正面に出たからだ。実は適当に道を選んだのだが私も感激した。
両国に来てもらったからには「レストラン両国駅」へお連れしたかったがこの日は餃子の気分。餃子にビールとレバニラなどで満足していざ国技館へ。
パンフレットがサイズも価格もリニューアルしていたり国技館カレーに続いて国技館ハヤシが新発売になっていたり2階席にも親方たちのいる売店ができていたりで気分が上がったが、肝心の相撲はというと応援タオルを掲げて応援した関取がことごとく負けてしまった。しかし照ノ富士だけは負けて欲しくないとせめてものゲン担ぎに応援タオルを開かず握り締めて見守ったがまさかの黒星。でも呼出の邦夫と利樹之丞と啓輔、行司の吉之介はチェックしたし、大相撲初観戦の友だちにどうでもいい情報を吹き込んだり一応やることはやったのでヨシとしよう。

緊急事態宣言を受けて飲食店の営業時間が短縮になっているので、はね太鼓に送られながら「ちゃんこ えびすこ」へ急ぐ。
「ちゃんこ えびすこ」は久しぶりだったので味が変わっていたらどうしよう、名物の焼鳥が小さくなっていたらどうしよう、こんな時だしお客さんが誰もいなかったらどうしようと色々不安だったが、お店の方はみなさん感じがいいしよい雰囲気で賑わっており、塩ちゃんこは変わらず美味しくて焼鳥も大きいままで美味しかった。辛口の日本酒でいいココロモチになったところで締めの中華麺で満腹。
企画上手でおいしいものに目がない友だちもこのラン&相撲観戦を喜んでくれてよかった。

みんなを見送って公園で一服してから、とうに暖簾がしまわれた「ニューねこ正」を覗くと飲み友だちを発見。
以前こんなときに引き戸のガラスを小さく叩き手を振って帰ろうとしたら、お兄さんが黙って席をつくってくれたことがあった。思いがけず締めの一杯にありつき、やっぱり両国はいいなぁとしみじみ思った夜だった。