2021年10月13日水曜日

ソロ活動開始とぜいたくな昼ごはん

緊急事態宣言が解除されて通常の時間まで労働しながら、この晩はソロで酒場へ行こうと考えていた。いそいそ帰宅してねまちにごはんを与え、ミルクを平らげたのを見届けていざ、とかばんを持ち上げるとこの日に限ってねまちが絡んでくる。すぐ帰るから、と言い聞かせるも玄関で平べったくなってケケケケと文句を言われて根負けした。
期待はずれの映画を観ながらねまちの耳掃除をして、余震が来たら心配だしこれでよかったと深酒。真夜中の大運動会で眠れず。

翌日もいそいそ帰宅してねまちのごはんの用意をする。私のスプーンと片方の箸がない。これは飲みに出かけてよしというメッセージと解釈し、すぐ帰るからと説き伏せて家を出た。今度は靴箱に隠れてにらんでいた。ここまで反対されても酒場へ行く必要はあるのか、と途中ふと思ったが振り向いたら負けよ。

酒場の暖簾から中を覗くとお豆腐屋さんがサッカーを見ていた。
こんばんは、と腰を下ろすと、どうも、毎度ありがとうございますと言われてあの出来立てのお豆腐と揚げたての厚揚げの味がよみがえった。
いつもはあまり表に出てこない大女将がにこにこしながら、こないだの湯葉とてもおいしかったわ、とお豆腐屋さんに言いに来た。最後の最後の湯葉が好きなお客さんがいるので大女将にもおすそわけしたのだそう。豆乳も湯葉もとろとろでシチューのようなんですよと聞いて、いてもたってもいられなくなった。
近所で工事などがあると昼食にお豆腐を買いに来る作業員さんもいるらしい。お弁当だけではもの足りないのでお豆腐を一丁買って、醤油たらしてくんない、と言って隣の公園で食べるのだそう。それいいですね、と感心していると、昔は商売やってるところは昼どきになると肉屋でコロッケ、魚屋で魚、豆腐屋で豆腐や厚揚げを買って、でかい釜で炊いたごはんでみんなで昼めしにしたもんです、とのこと。なんともぜいたくな昼ごはんだなぁ。
しばらくして常連さんのきれいな女性が現れて、この日はいなかった常連さんの話からお豆腐屋さんの初めての海外旅行の話になり、あんまりおもしろくて酒がすすんだ。
ふと気づけばいい時間。ねまちの顔が浮かんだのでお先にさようなら。

今夜は早めに寝ようと床についたが、この夜も大運動会で眠れなかったのであった。

2021年10月11日月曜日

年に一度のこんにちは

つらい健康診断を終えると必ずうどんを食べる。

(ご存じでしたか、「土俵そば」にはうどんも、丼ものもあるんです)
いつも朝はおそば一択だけれど、ひと仕事終えたあとは必ずうどんと決めている。
古い小さなお店のやさしい味のそのうどんを啜ると秋だなぁとしみじみ思う。うどんは秋の枕詞。

しばらく後に、なかなか効かなかった下剤が効いて突然の腹痛で冷や汗を流すことも知らず、のんびり一服していた朝の自分が憎らしい。

2021年10月10日日曜日

近くの他人はありがたい

深夜の地震は久しぶりに大きかった。
友だちと電話中で気が紛れてよかったけれど、生まれて初めての地震を経験したねまちはあちこちへ走り回っていた。あたし疲れたわ。

棚から貝殻が落ちたくらいで済んだし飲むものがなくなってハブ酒を啜っていたおかげで泥酔もしていなくてよかった。幼なじみや友だちや妹が心配してメッセージをくれたのがありがたかった。落ちた貝殻ってビキニの?と訊いてきた友だち、ずいぶん会っていないけれど変わっていなくて吹き出した。
震度がもっとも大きかった場所に住む友だちの顔が浮かんでメッセージを送る。無事だよとの返信に安心して寝ることにした。

翌朝は、なんとしても朝ソバをキメなければとなぜか強く決心してずんずん歩いた。

先日久しぶりに暖簾をくぐったとき、ずいぶん久しぶりじゃない、とおかあさんに言われた。ここんとこ朝起きれなくて、とソバを啜りながら答えたがその日は昨日のあれ、大丈夫だった?と訊かれたので、あの時間はお店に?と訊ねると、家よぅ、あたしいつも2時に来んのよとおかあさんは薄く笑った。そうだった、このお店は2時からやっているのだった。

お弁当をつくりそこねたのでお昼は顔馴染みの中国人のおねえさんのお店へ。昨日大丈夫だった?と訊かれたので、お店は大丈夫でしたかと訊くとお店は大丈夫よ、ワタシは電車止まって大変だったよ、と顔をしかめた。やっと夜の営業を始めたばかりなのにね、とお互い苦笑いしてさようなら。

実は名前も知らない、でもいつも顔を合わせる人たちとのこんな会話がなにより安心する。
世間話といえばそれまで、でもしみじみ心強い。

2021年10月5日火曜日

ふしぎなまち・土浦

なんとも魅力的、などという言葉ではおさまりきれない熱量の高さのかえるかわる子さんの展示を観に初めての土浦へ。
今年の夏はつくばで、先日は近所で怒濤の個展を見たが、今回はご本人念願のご実家での記念すべき個展。そのご実家は県の指定重要文化財になっている酒屋さんと聞いて、そしてDMに描かれた土浦のまちのお店にも行きたくて楽しみにしていた。

空腹で土浦駅にたどりついてまずはお蕎麦屋さん。気になる喫茶店や天ぷら屋さんがあったので、軽めのたぬきそばにした。醤油の味が我が東東京より濃くて新鮮だった。
あちこち寄り道してようやくたどり着いた会場は思った以上に重厚で彼女の作品にぴったりだった。
活けられていたお花まで、季節にも作品にも気分にもぴったり。
近所のお年寄りやたくさんのお友だちでほどよくいっぱいの古い建物の中で、しばし友だちの実家にお邪魔した気分で作品だけでなく飾られた手拭いや梁などにも見入った。階段が梯子のようで緊張した。
地元愛の大きさと、自分を変えようとして変えた姿にまた圧倒された。行ってよかった。

この日は結局、スマホをまったく見ずにDMの手描きの地図のみを見て歩いた。久しぶりのこの感じ、わくわくして楽しかったなぁ。間違いないだろうと思ったお店はやはり間違いなくて、それでも寄ることができたのは蓮根カレーパイのお店と古書センターと天ぷら屋さんまで。また来月のこちらでの個展にも来ようと思った。

そういえば私もフリーペーパーやかわら版が好きで「深川福々」のお手伝いをしたり、自分でも一度作ったこともあったのだった。
その名も「ねまち新聞」。
このときは広告が好きで広告のためにお店をつくって新聞で宣伝したのだけれど、かわる子さんの新聞をたくさん見るうちにまちの新聞をつくってみたくなった。

酒場巡礼の日々

緊急事態宣言が解除になり、近所の飲み友だちに誘われてあちこちこんばんは。
とはいえ心から安心はできないのだが、一軒一軒訪ねるたびに以前の感覚がよみがえる。最初に行ったのは「おいてけ堀」。
水茎の跡うるわしきメニューを見ずともすらすら注文。お馴染みのメンバーとも会えたし、しみじみ美味しかった。
次の日は別の「おいてけ堀」。(実はいくつもあるのだ)ここでも美人女将や大将たちの元気そうな顔を見ながら、ありがたく美味しく飲んだ。
また別の日は自家製チーズが特に美味しいお店。翌日から緊急事態宣言でしばらく来ることができないと目を皿のようにしてメニューを探したときそのチーズを発見した。食べたらおいしくて、たしか6皿も食べた。それでも嫌いになるどころかもっと好きになった。今回は3皿食べた。

どのお店の風景も味もそのままでうれしかったが、以前と違うのは家にねまちがいること。あまり泥酔する気にはなれず優等生的にごちそうさま。酒もいいがねまちが気になる。それにしてもみなさんお元気でよかった。
落ち着いたらソロ活動も始めようと帰宅すると、ねまちの顔を見てやっぱり我があばら家が一番かもしれないとも思った。
いいのよ、帰ってこなくても。ごちそうさえ用意してくれればね。

2021年9月30日木曜日

都内屈指の鈍感

この頃、労働を終えて帰宅すると必ずラジオがついている。朝、家を出るとき必ず消しているので、ねまちがつけているのは明白だ。自分でラジオをつけて「荻上チキ session」を聞いていたのかと思うと、日に日に巧妙になるいたずらにも納得。

妹と姪たちとで「ひびのこづえ展」を楽しんだあと、こっくりこっくり遠くのホームセンターへ。せっかく久しぶりに横浜駅へ行ったのに、ぶらぶらしていてもねまちのごはんやミルクが気になって仕方がない。洋服はしばらく買っていないし毎朝のメイクも雑になった。それでも「ひびのこづえ展」のすごさは忘れずにいたい。

急に思い立って都市農業公園を目指して走ったある日。隅田川と荒川がくっつきそうなほど近い。ラジオの交通情報でよく耳にする扇大橋から河川敷を見下ろして、この草むらを整備したら死体が最低2つは出てきそうだなと思い、そういえばとその近くに住む友だちにメッセージを送った。
お目当ての公園は都内とは思えないほど静かでのどか。田舎にいる気分になりしばらく園内を見てまわったが、あなたがくぐったあの橋は都内屈指の心霊スポットだよと先ほどメッセージを送った友だちから言われたのが気になり早々にさようなら。行きに通った河川敷ではなく整備された堤防の上の五色桜の道を走った。霊感は皆無だが例の橋の下は見ないようにして扇大橋にたどり着いたときはホッとした。
暗くなり始めた街なかを走り買い物をすませて帰宅すると、ねまちが熱烈に迎えてくれた。ねまちにも霊感がないことがわかった。

2021年9月26日日曜日

同じ名前

ぐずぐず走りに出たある日、おじさんの顔の看板が目を引くパン屋さんがあった。

普段パンは食べないのだけれど、なぜか気になって引き返した。まちのパン屋さんといった風情だが中を覗くと意外にも大人のパンが多く見受けられる。先ほどまで外で待つお客さんもいたが運良く空いていたのでイン。あんパンが人気のようだけれど売り切れたとみて見当たらない。
さんざん悩んで酒のアテにぴったりなパンを3つ選んだが、どれも見た目以上に美味しくて止まらなかった。

別の日、やはりいやいや走りに出かけて見つけたお蕎麦屋さん。

ちょうどお昼時だったのでまだビタイチ走っていなかったが迷わずイン。座って食べるソバは天せいろと決めている。お蕎麦も天ぷらも昨日耳鼻科に行ったおかげもありとても美味しくてうっとり食べた。
愛読している「低み」に出てくる、美味しいものを食べたあとの自分のげっぷも好きだという人にまったく同意できなかったのに、この日ばかりは激しく同意。干潟のカニや野鳥を見て走りながら余韻を楽しんだ。

近所のお花屋さんも大好きなまちのパン屋さんも、このパン屋さんとお蕎麦屋さんと同じ名前。
うれしい偶然と、途中で手に入れた揚げたての厚揚げに浮かれて前のめりで走ったそのタイムがその日のベストタイムであった。