前日アトロクで映画評を聞いた「透明人間」は早朝から観るのに向くだろうか。早朝というほど早い時間でもないけれど朝から映画を観るのは初めてで楽しい。映画はとてもとてもおもしろかった。こんな「透明人間」になっていたとは!
朝からなにも食べていなかったので、さてどうしようかと考え、コロナのニュースが出始めた頃に行ったきりの不思議なおそば屋さんへ向かうことにした。思いきって引き戸に手を掛けてから始まった不思議なあの夜の宴。あの人々は本当にいるのだろうか、と角を曲がる。はたしてそこにあの提灯はあった。暖簾も「営業中」の札も出ている。こんにちは、と声をかけると「いらっしゃ~い」の声。ひょいと顔を出したのは、あのママ。昼間見てもお肌がきれいだ。
どうぞどうぞ、と通されたのはなつかしい座敷。厨房のママさんと話しながら寛いでいると、常連らしき近所の奥さまたちが次々にやってきた。とりあえず目の前のポットの湯でお茶をいれてみなさんに差し出す。どこの誰だか知らない私にも、今日は寒いわねぇとか旦那が薬ばっかり飲んでるけどそんなに薬が好きかねぇとか隣のお風呂屋さんの工事の音がうるさいったらありゃしないのよとか次々に話しかけてくる。なぜか全員うどんを注文しているのがおかしい。力うどんに生姜焼きなんてツワモノもいた。
私が注文した天ざるセットには、天ぷらとざるそばの他にこまごまと小鉢がついており、あの晩の記憶がよみがえった。お勘定を、と立ち上がると、ダメよコーヒー飲んでいかなきゃ、とご近所さんに止められてカップにコーヒーの粉を入れたものとお菓子をつけてハイどうぞ。しばし考えて、目の前のポットの湯を入れた。
あなたのこと思い出したわ、また来てね、とママさんにドーナッツの入った袋を渡された。
夢じゃなかった!
それから何年ぶりかで行ったアンティーク屋さんでステキなテーブルマットやオリジナルのジャケットを見つけて、今日はいい日だと確信。こうなったら完璧な日にしてやるぞと帰宅してからちょびジョグに出かけ、お久しぶりねの「ニューねこ正」に登場。
あら枡酒にしたんだ、と美人女将に笑われた。
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