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2019年11月5日火曜日

去りがたいまち・京丹波町と長いランチ

毎年一度、関西に住む叔父と出るマラソン大会。
今年は
黒豆で有名な京丹波町「京都丹波ロードレース」に、叔父叔母とともに参加。

今回はめずらしく気持ちもわくわくしていたが、やはり疲れるものは疲れる。へとへとでゴール。
前日に叔父叔母とビール・ワイン・日本酒を飲んだせいではない。

いわゆる「京都」にはまったく興味はないのだけれど、田辺聖子の小説に出てくるこのあたりは時間が止まったようで、なつかしい気持ちになるなんとも好きなまち。去りがたかったなぁ。丹波の黒豆はもちろん、他にも名物だという巨大なしめじや丹波ワインなどをおみやげに買ってもらった。
ふだんマラソン帰りは疲れて飲みに出かけてしまうのだけれど、試食させてもらった巨大しめじがあまりにおいしかったので香りを愉しみながら、発売前のワインとともに夜更けにいただいた。
丹波の黒豆も、こんなに新鮮なものは初めてで、ワインがすすんだ。


優雅な晩酌を終えた翌朝は、祝日のマラソン練習会。
カラダは疲れていなかったが、朝から課題に少し手をつけるうちにサボっちゃおうかなぁという考えがむくむくと頭をもたげてきた。このまま課題を続けて果たして進むのか、二度寝するのが関の山ではないのか、しかし練習会に出たら昼酒してしまうし、いやそれを断って帰宅すればランと課題ともにできて今夜は美味しいお酒が飲めるはず、などと逡巡してひとまず顔を洗った。

お天気が最高によいこの日の練習会は、先日金沢で知り合ったエリートランナーたちが参加しての街ラン。オリンピック会場を目指して気持ちよく走るうちに前日の筋肉痛が出てきた。外苑や青山墓地、国立新美術館や六本木ミッドタウンなどを駆け抜けるうちに腹の虫がにぎやかになり、早くなにか食べたいな、と考え始めた頃には課題のことはすっかり忘れていた。

ランチに出かけたはずなのに、外に出たら辺りには夜のとばりが降りていた。
走った時間より長く飲んでしまった。


昼間の街ランで見たクリスマスツリーはきれいだった。湘南ねこ美術館ではクリスマスのマッチが待っています。
甘いものはあまり好きではなかったのに、おみやげでもらった丹波栗のシフォンケーキがおいしくて、また好物が増えてしまった。
銘菓「両国の恋人」も、無性に食べたくなるときがあるんだよなぁ。

2019年8月20日火曜日

会津柳津ひとり旅

西へ向かうときは東京から、北へ向かうときは上野から。

いくつかある不文律に従って、夏休み突入前夜はフンド氏の父上行きつけの店で一杯。
「相撲茶屋さばねこ」に不文律はビタイチないが、生まれ故郷が会津である父上が行きつけだった店にいるだけで、会津旅の気分が高まるってもんよ。

数時間後に夜行バスに乗り、うとうとしているうちに郡山へ到着。
顔を洗って顔面をつくって会津若松へ。調子にのって会津若松駅で朝ラーをキメて、ついにあこがれの只見線に乗り込んだ。

今回はフンド氏の父上の生まれ故郷をたどる旅ではなく、先日見た展示で出逢った木版画家・斎藤清氏の美術館に行く旅。思い立ったら行ってしまおうと、強行したのだ。

只見線の車窓からは、私の田舎に似た田園風景が広がる。ぼんやり眺めていると、田圃から突然いのししの子が現れた。
通路を隔てた隣席の中学生に倣って靴を脱いで向かいの座席に足を投げ出し、途中から並走する只見川に見入っているうちに、目指していた会津柳津駅に到着。
しばし鄙びた駅舎を観察したのち、お手洗いの前でもがいていたくわがたを救助して坂道を歩き始めた。
「メンキー&ノンキー」でみつけたワンピースで気持ちだけめかしこんだこの日。
強い日差しの下、日傘を差して大きな只見川を横目に歩き進むと、すぐにおめあての斎藤清美術館に到着。
ぱりっと清潔な暖簾をくぐって中に入ると、窓の外には只見川や山や田圃がひろがり、いっぺんにここが気に入った。作品を見る前にしばし館内を見て歩く。

目的だった木版画の数々はそれはもうすてきだった。
晩年の作品である会津の冬景色は何点もあり、暖かい家の中から雪深いこの地をながめているような気になった。かこさとしさんにも感じることだが、絵を学んでいない人ならではの巧さと味があふれている。
その後立ち寄った彼のアトリエで窓から見える作品そのままの風景に驚き、またアトリエの持ち主であった彼の従姉妹にあたる方のていねいな暮らしぶりや毎日の食事、綿々と続くこの地の人びとの暮らしなどを聞いて、再度美術館に戻りたくなったがおなかも空いた。
会津柳津は、たいていの場所は徒歩で行けるのに見どころの多い不思議なまち。温泉街もあるがこの旅はゼロ泊なので時間がなく、足湯に入ったり魚渕でうぐいをながめたり、この晩おこなわれるという大きなお祭りのために町中がわくわくしているのを感じながら町なかをほっつき歩いたりしているうちに時間がきた。
そばでも食べたかったが時間がなく、通りすがりの商店でメンチコロッケと缶ビールを手に入れて駅へと急ぐ。途中、この地の名物であるあわまんじゅうをお祭りのためにフル回転でつくる湯気に誘われて、それもひとつ。
両国名物「両国の恋人」に負けず劣らず、見ため以上においしいメンチコロッケとあわまんじゅうに、次回は必ず泊まりで来ようと、後ろ髪を引かれすぎて首がもげそうになりながら帰りの電車に揺られた。

2019年3月19日火曜日

両国の恋人とオランダせんべい

あまり大きな声では言えないが、両国にはパッとしたおみやげがない。
国技館の焼鳥だって、そう簡単に手に入らない。
そこでつくられたのが「銘菓 両国のさんぽ道」であった。
ふつうのおまんじゅうと侮るなかれ。
見ためは地味でも、味には自信あり!
まるで両国のまちのよう。


続いて誕生したのが「銘菓 両国の恋人」
あまくないビスケットは、資生堂の例のアレを参考にしたとか、しないとか。
(本当は私があまいものが苦手なので、おまんじゅうで限界だったのだけど)
パッケージに へくそかずらをあしらっており、甘くないぜという姿勢を見せつけている(か?)。
くさいけど、可憐な花なんです。


先日の旅で連れていってもらった、オランダせんべいの工場。
うなぎの寝床なんてもんじゃないくらい細長いつくりで、めずらしい機械がつぎつぎにオランダせんべいを作り出していた。
普通の塩味のおせんべいでしょ、と一枚かじると、奥深い味に驚く。
それは、あの「つや姫」でつくられているから。
友は、試食のしすぎで夜遅くまで苦しいと唸っていた。

2018年10月19日金曜日

ハセガワさん・再び

たまには会おうよ、ということで友と食事。
洋服を扱う仕事をしているその友は、いつもどこかおもしろい洋服を身に着けている。
そしてたまに同じ靴を履いていたりすることがあって、おかしい。
デザートはあまいものが好きな彼に譲って、私はもう一杯いただくことにする。
白熱した話題がひと段落したとき、またこの名前が耳に飛び込んできた。

「ハセガワさんでしょ、それ」
「ハセガワさんかなぁ」
「たしかにハセガワさん、ハセガワさん」
「そうね、ハセガワさんだったら納得」

お、話題にされてんじゃん、と友は軽口を叩くが、私ハセガワは心臓が止まるかと思った。
前もこんなことがあってさ、と話そうとしたら、今度は隣のテーブルから

「あのときメグミちゃんがさ」
「そうそう、メグミちゃんがねぇ」
「メグミちゃんって、そういうとこあるよね」

との声。
どこかの「メグミちゃん」の話しをしているみたいだったけれど、またも心臓がどきんと音をたてた。
(前回のハセガワさんとちがって、こちらはどこか不穏な空気)

さっきまでの白熱した話題はどこへやら。
さ、もう帰ろう、と席を立った。