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2019年11月12日火曜日

時は流れるが戻るすべはなくはない

それは、じわじわとやってきた。
お風呂にためていたお湯があふれるように少しずつ、
毛糸がセーターになってゆくように少しずつ、
季節がいつの間にか変わるように少しずつ、飽きの気配がやってきた。


いつかはこの日が来るだろうと思っていた。
走ることが楽しくなくなったから仕方ない。
熱しにくく醒めやすいわりには長く続いたじゃないのと、無理をするのをやめた。それでもイベントごとはまだあるが、これはもう粛々とこなすしかない。

またいつか、散歩のように走りたくなったら再開しよう。

2019年10月30日水曜日

名古屋と和解しなければ

金沢から福井の旅を終えた翌日は、次号の「深川福々」編集会議。
次号のスタッフコラムも担当することになり、前号に続き今回も得意分野なので今から楽しみ。
スタッフのひとりが連れてきた友だち2名が2名ともおもしろそうな人で、翌朝に健康診断を控えていなければもっとお話ししたかった。最近おもしろそうな人とよく出会うが、実に幸せなことだなぁ。


とりかかっていた作品がどうも気に入らなくて一時保留している。
最近なかなか神が降りてこなくて、と先日「秋の収穫祭」で隣り合った画家でアーティストの子に打ちあけたら、そんなときにぴったりの本があると勧められた。勧められた翌日に、その本も見ぬ間に神が降臨。
いいもの、できるかな。


先日の金沢・福井の旅のあと経由した名古屋には、学生時代に住んでいた。
今から思えば学生時代はそれなりに楽しかったはずだけれど、名駅の昔の地下街の匂いを思い出すだけでなぜか気分が沈む。
学校が嫌いで、授業をさぼっては名駅をぶらぶらしていたからだ。
夕方、帰宅時間が迫ったころのあの地下街の匂いは、守口漬とほこりっぽい古びた匂いの混じった絶望的な匂いであった。
そろそろ名古屋とも和解しなければ。

2019年10月24日木曜日

課題はあと2つ

うっかり「はい」と返事をしてしまうことはよくある。
それが4つ続いているだけよ、と自分に言い聞かせているうちに残りあと2つとなった。

毎週月曜日のランの練習会に今週も出席することができなくて、もう金沢マラソンには遊びにだけ行くことに決心。
月に一度のべつの練習会の仲間からイレギュラーな皇居ランのお誘い。この仲間たちとは、ランの後に行くおいしいお店での食事も楽しみなのだが、やることがまだあと3つあったので今回はランのみ参加することに・・・したはずが、誘われてついつい、ちょっとだけよ、と練習後またまたおいしいお店へ。
走ることがとんでもなく早い人たちと、今まさに伸び盛りの人。タイムの話をされるのは苦痛でつまらなくて苦手なはずなのに、この人たちの話がおもしろいのはなぜだろう。



うっかり返事をしたひとつ、こちらもずいぶん昔からお世話になっている湘南ねこ美術館での「ねこたちのクリスマス展13」の作品が、ようやく完成した。
先日お会いした館長さんや美術館2Fの家主・まりんちゃんにまた会いたいので、できたら2回は行きたいものだ。
ぼっちゃんがいなくなってから、ねこの絵がうまく描けなくなってしまった。
ストックがあってよかった。
11/2(土)~12/24(火)の土・日・月曜日、葉山の海が見たくなったらぜひ。



金沢マラソンから戻ったら、次はこちらの制作。
甘夏書店での「本と遊ぶブックカバー・しおり展」のための作品をつくらなければ。
実はこちらにもしばらく遊びに行っていない。
ここへ行かずに今までなにをしていたのだろう、と思い返すも思い出せない。
途中まで描いた絵がどうにも気に喰わないので、金沢から戻ったらやり直すつもり。
11/9(土)~11/30(土)の日・月・木・金・土曜日、知らない本に会いたい方はぜひ。



うっかり返事をしたうちのひとつ「秋の収穫祭」は、文字通り収穫のあるお祭りだった。
普段コーヒー豆を買うお店だし顔見知りのバッグ屋さんや画家さんもいて気楽に・・・ということはなく、久しぶりのマッチ売りにお客さんが来るたびにうろたえていた。おいしいきのこのハンバーガーに出店者全員が魅了されたり友だちも来てくれたりして、あっという間のお祭りだった。お買上げくださった奇特な方々、ほんとうにありがとうございました。
画家というよりアーティストである彼女と、アイデアについて話した。彼女のあふれる発想がどこから来るのか不思議だったのだ。いい時間だったなぁ。

朝からひどい雨で芯から冷える寒さであったが、お昼すぎにウクレレのライブが始まると同時に陽が射してきたのには驚いた。ハワイアンは祈りの曲が多いそうだし、演奏していた彼が晴れ男とのことで、少しだけ晴れ間を見せてくれたに違いない。
帰宅する途中「メンキー&ノンキー」の店主と遭遇。
その洋服どこかで見たような気が、と言われて己を見ると全身「メンキー&ノンキー」の洋服であり、なんとなく恥ずかしくなった。

2019年10月7日月曜日

続・旅人よ

RHYMESTERを地方のライブハウスで観るのは初めてで、しかも幼なじみとRHYMESTERのライブ会場にいるなんて、と興奮しているうちにSEが消えて歓声が上がった。


見えない。
男子率が高いので前が見えない。

でも曲が始まり声が聞こえると、どうでもよくなった。
だって、この夜のライブはRHYMESTERミュージアム。普段のライブでは聴くことのできないクラシック=名曲を、結成時から現在に至るまで時系列で聴くことができたから。
噴き出す汗と涙でぐちゃぐちゃになって、合法的にトびまくった。

スペシャルディナーの前に、実はまた行きたかったお店で祝杯をあげた。
しかしあんなに豪華なセットリストある?
アレもアレもアレもよ?贅沢だよ。
あんなカッコいいアラフィフいる?
など、宇多丸さんに負けないほどマシンガントークは冴えわたった。

その後のスペシャルディナーは、彼女の名を冠したメニューが特に最高でお酒が進んで仕方なかった。
ここの大将は野菜は育てているわ、それらを使ったお料理はすべて手間ひまかかっていておいしいわ、お料理のことを聞けばなんでも教えてくれるわ、しかもそれらをすべてひとりでやってのける、それはもうびっくりするほどすごいお店。だからつい食べすぎて途中でお酒が止まった。

たくさんの新鮮な野菜をいただいて、日付が変わってから帰宅。
それにしても、もっとましな恰好で来ればよかったと反省。
深夜に満腹で洋服を脱ぐことができなかったことと、胸より胃が出ているのを見たのは初めてであった。


昨夜の酒はまったく残っていなかったが満腹はおさまらず。
お昼、食べることができるかなぁなどと言っていたのに
リクエストしたお蕎麦屋さんが近付くにつれて鳴り出した我がお腹。
子どもの頃よく食べたいくちなどのきのこと、細く長く切った長いもの乗ったおいしいお蕎麦で、また満腹になった。食べ終えたばかりなのに、また来たくなった。

あちこち連れていってもらって、ここでまたスットコドッコイが勃発。
時間を決めて焦りたくないからと予約していなかった帰りの交通手段。松本マラソンのランナーや登山客でどの便も満席。しかも遊びすぎて頭がぼんやりして検索が進まず、幼なじみに調べてもらって、普通電車を乗り継いで帰ることに。
最初から最後まで幼なじみに世話になりっぱなしでお礼もできないまま、駅まで送ってもらってお別れ。

車窓を流れる景色を見ながら、普通電車でもやはり立ちっぱなしか、と笑いがこみあげてきた。甲府駅に到着する際に、今ごろRHYMESTERはここでライブ中だな、と思いだして電車を飛び降りたくなったが我慢がまん。

乗換えの駅でホームに降り立つと、風が明らかに冷たくなっている。
昨日駅ビルで購入したものの一度も袖を通していなかったカーディガンが初めて役に立ったのはこのときであった。

2019年10月1日火曜日

初めての信州駒ヶ根ハーフマラソン

文太といつもの道を散歩していたら現れた「3㎞」の看板。
 振り向くと「18㎞」の看板。
翌日は、生まれ育った田舎での「信州駒ヶ根ハーフマラソン」。
どうにもやる気が出ないので、文太に練習に付き合ってもらったものの、みちくさばかりで愉しくて進まなかった。ああ、翌日ここを通るときは、さぞかしくたびれていることだろうなぁ。
文太はなぜかこの道が好きだが、私も好きだ。
文太の選ぶ散歩道と川はセンスがよい。
きんもくせいがあちこちで匂っているのに、ひんやりしていない空気が不思議であった。
翌日は雨の予報だった。
雨の予報だったはずなのに。
どうなってるんだ、と同級生と文句を言っているうちにスタート。

昨日文太と散歩したあたりはスタート後15分ほどだし下りなので、なつかしい風景を眺めながら・・・というわけにもいかず(前週も帰省していたのでさほどなつかしくない)早くもだめな予感。わかっていたこととはいえ、なんだこの坂道は、と毒づきながらヨタヨタ進む。
エイドのアイスを食べていたら見知らぬおじさんが振り返って、それ何個め?と尋ねるので、1個め!と応える。それからそのおじさんと抜きつ抜かれつ、追い抜きざまに互いに声を掛け合い、最後はなんとか追い抜いてへとへとでゴール。(ところであのおじさんは誰だったのだろうか)

見るも無残なタイムであったが、部門別40位でラッキー賞なるものをいただく。
あとはエイドでもおいしくいただいた梨。

大会100選にも選ばれているだけあって、坂道の辛さ以外は文句なくよい大会だった。中央アルプスや南アルプス、天竜川などの写真を撮っているランナーもたくさんいた。
スタッフのおじさんたちの言葉に方言を聞いたのが、知っているだけになんとも脱力ものであった。
暑さのために食欲が湧かず、エイドの手打ちそばを食べることができなかったことだけが心のこり。
山帰りとマラソン帰りの人でごった返す温泉の入り口で、あけびを発見。
種のまわりが甘くておいしい。久しぶりにお目にかかった。

子どもの頃あけびを教えてくれたのは
「メンキー&ノンキー」の名前の由来でもある、幼なじみのノンキー。
あけびは高いところにしか実がならないから、いつも見るだけだった。その場所も、この日のマラソンコースの近くだった。


夕方には帰らないといけないため同級生たちとの打ち上げにも参加せず、文太と名残惜しく散歩。きんもくせいの香りはずっと漂っていた。
疲れているから、ゆっくりね、軽くだよ、と言ったのに、この日は全力で駆け抜ける文太。それ、昨日したかった。
着替えたばかりのCreepy NutsのTシャツは汗で濡れていたが、時間がなかったので汗くさいまま暫しのさよなら。
帰りの車中で本を1冊読み終えた。放心状態だった。
衝撃のラストで衝撃を受けたと同時に、これ前に読んだ、と気付いたからだ。

気分転換にGoogleのニュースを見ると、なんと!Creepy NutsのDJ松永が、ロンドンで行われたDMC世界大会で優勝したとの記事が目に飛び込んできた。
びっしょり汗くさかったTシャツは、いつの間にか乾いていた。

2019年9月27日金曜日

だがそれでいい

秋が深まったら着たいジャケットを「メンキー&ノンキー」で発見。
そういえばむかしむかし、やはりここである洋服にひとめ惚れしたとき店主に、サイズ大丈夫ですか、とぼそっと言われたことがある。なんと失礼な!と思ったが、試着するまでもなくどう見ても当時の自分には入らない洋服だった。

そういえば、何年になりますか、と唐突に店主。
その日はお彼岸で、フンド氏がお世話になっているお寺さんの秋の法事で、クラシックギターとソプラノ歌手の生演奏と精進料理と、未亡人友だちとのおしゃべりを愉しんだ帰りだった。
店主がジャケットを畳みながら、カラダ、いい感じに戻ってよかったですね、とぼそっと言った。そんなに痩せていましたか私、と訊くと、一時期ね、今の方がいいですよ、と店主は応えた。
そうですかねぇ、とつぶやきながら、半年以上量っていない己の目方はいったい今どうなっているのか、恐ろしくて目を背け続けているとは言えなかった。


エッセイ以外もう全作読み尽くしたと思っていた作家の、未読の本を5冊も発見。
それは仕事帰りの「オロロン書房」にて。
その作家の小説を読みながら湯舟に浸かったり、お酒を飲んだり、眠りに落ちたりする幸せといったらない。これでしばらくは禁断症状に怯えることもない。


相変わらず、マラソンの練習にはやる気が出なくて、締切の迫っている案件も手つかず。
やる気のないときは、やる気が出るまで休むべし、と決めて早や3年。本気出す、と意気込んで早や半年。
季節とともに空の様子や道端の雑草や古ぼけた建物が変わっていくのを眺めながら、焦りがないことに焦る。
とはいえ、秋から冬にかけて行くライブと旅のことで、頭はいっぱい。

2019年9月10日火曜日

いつもと少し違う日

いつもと違う時間にいつもと少し違う道を歩いていたら、見知った顔が横断歩道の向こうからやってきた。
誰だっけ、と考える間もなく、そのひとは頭を下げてこちらにやってくる。
「メンキー&ノンキー」の店主だった。
まだ幼い男の子をだっこして、なにか言いたげにやってくる。



「おいてけ堀」こないだ行きました、すごくよかったですよ、とぼそっとつぶやいて店主は去って行った。彼にだっこされた幼い男の子は不思議そうにこちらを見ていた。
そうだ、「ニューねこ正」で隣り合ったおじさんと「メンキー&ノンキー」の店主の話になって、そのことを店主に伝えたら彼もそこへたまに行くという話からなぜか「おいてけ堀」の話になったのだった。
そうですか、行かれたんですね、あのお店もおいしかったでしょう、と彼の背中に声をかけた。

いつもと違う時間にいつもと少し違う道を歩くと、いつもと違ういつもの人に会うものなのだなぁ、と感心した。
こんな日は、ついでにいつもと違うお昼にしたい。それで久しぶりに「ぺろりレストラン」へ。
なるべく薄い味のハンバーグをカラダが欲しており、ここのスパゲッティハンバーグを思い出したのだ。
サンドイッチもたいへんおいしいのだが、ここ最近弱っている私の胃には一日かけても食べきれないボリュームである。(しばらく肉続きなのはどうなのか、という疑問については考えないこととする)
その日初めての食事であったスパゲッティハンバーグのおかげで夜になっても空腹になることはなく、飲酒する気も失せて早々に寝たおかげか、夢を見た。
待ち合わせ場所にいたフンド氏は以前と変わらなかったが、誕生日にホットドッグを食べたかどうか聞くのを忘れた。

2019年9月3日火曜日

伊勢丹でステキランチを

急逝した父上を見送ったばかりの友だちと酒を酌み交わす。
いつも元気な友だちだけれど今回ばかりはどうかな、と待ち合わせ場所へ急ぐと、彼女は早くも出来あがっていた。忙しかったのが急にヒマになったから、昼から飲んでたのよ、と笑う。
肉親の訃報を告げると、普段陽気な人でも急に神妙な顔つきになるのがイヤでたまらないからあまり報せていないのよ、と言う。よくわかる。

よく飲み歩いていた大昔からすると全員ずいぶん酒に弱くなったなぁ、あのときはごちそうになっていたのがいつの間にかワリカンできる仲になったのだなぁ、と感慨深く帰宅。
同席していた傘職人が、デッドストックの変わったパターンの傘があると教えてくれたので翌日突撃。
「しとしとぼっちゃん」の傘とはテイストがまるで違うが、70年代後半のan・anの広告で見かけたようなパターンの傘に狂喜して片っぱしから広げてゆく。今どきの傘よりスリムだけれどかなり重量があるのは、鉄の骨を使用しているから。でもなんでも軽けりゃいいってものではない。おしゃれは辛抱。
ああ、早く雨が降らないかなぁ、これでステキな洋服と出逢えたら、とずっしり重い傘を抱えて夕暮れどきの商店街を歩く。


観たかった展示にふたつ、行くことができた。
「日本の素朴絵」は友だちに奨めておきながら自分が見逃すという何度も犯した失敗をやらかすところだったけれど、奨めた友だちからとてもよかったと聞いて会期終了前日にすべりこみ。
素朴っていい言葉だけど、稚拙とは決して違う。とてもよく描きこまれた大昔の絵から、描いた人の生まじめさが伝わる。建物のパースがおかしいところが特に好きだ。入口に立っていた、いのししを抱えたハニワを見たときから、来てよかった、と思った。

翌日は楽しみにしていたプークさんの人形劇「オッペルと象」を観劇。
途中、よくわからない涙がにじんだのは自分と友だちだけではなかったようだ。
自由になったんだ、の言葉に胸が痛くなったのは自分が年を重ねたせいか。自由とはとても不自由なことだし、これまでのように仲間と仲良くやっていけるのか、などおせっかいなことを考えこんでしまった。

それから思いきって「原田治展」へ。
こちらも、このままでは行かないうちに会期終了になってしまいそうだったので、件の友だち(「MOD BAR BER」のオーナーと親しい、別のサロンの女主人)にお奨めという名の予告をしていた。

原田治といえばオサムグッズのイメージであったが、展示されている雑誌のカット等を見たら、あ、これも、これも原田治だったんだ、と驚くことしきり。昨日傘職人から仕入れたデッドストックの重い傘のパターンによく似たイラストも何点もあり、好きなものすべてがつながっている!と、うれしくなった。

それにしても、いくつもイラストのスタイルを持っている人!さらにイラストだけでなく、多才な彼はアトリエまで設計したという。
なんてステキなアトリエ!


いつもより濃いめの週末、酒場で酒もきっちり飲んだが、最近ちょっと秋の気配。
じゃなくて飽きの気配。観劇後に行った伊勢丹でのランチになにか影響されたのか。
しばらくおとなしくしていようか、河岸を変えようか。

2019年8月20日火曜日

会津柳津ひとり旅

西へ向かうときは東京から、北へ向かうときは上野から。

いくつかある不文律に従って、夏休み突入前夜はフンド氏の父上行きつけの店で一杯。
「相撲茶屋さばねこ」に不文律はビタイチないが、生まれ故郷が会津である父上が行きつけだった店にいるだけで、会津旅の気分が高まるってもんよ。

数時間後に夜行バスに乗り、うとうとしているうちに郡山へ到着。
顔を洗って顔面をつくって会津若松へ。調子にのって会津若松駅で朝ラーをキメて、ついにあこがれの只見線に乗り込んだ。

今回はフンド氏の父上の生まれ故郷をたどる旅ではなく、先日見た展示で出逢った木版画家・斎藤清氏の美術館に行く旅。思い立ったら行ってしまおうと、強行したのだ。

只見線の車窓からは、私の田舎に似た田園風景が広がる。ぼんやり眺めていると、田圃から突然いのししの子が現れた。
通路を隔てた隣席の中学生に倣って靴を脱いで向かいの座席に足を投げ出し、途中から並走する只見川に見入っているうちに、目指していた会津柳津駅に到着。
しばし鄙びた駅舎を観察したのち、お手洗いの前でもがいていたくわがたを救助して坂道を歩き始めた。
「メンキー&ノンキー」でみつけたワンピースで気持ちだけめかしこんだこの日。
強い日差しの下、日傘を差して大きな只見川を横目に歩き進むと、すぐにおめあての斎藤清美術館に到着。
ぱりっと清潔な暖簾をくぐって中に入ると、窓の外には只見川や山や田圃がひろがり、いっぺんにここが気に入った。作品を見る前にしばし館内を見て歩く。

目的だった木版画の数々はそれはもうすてきだった。
晩年の作品である会津の冬景色は何点もあり、暖かい家の中から雪深いこの地をながめているような気になった。かこさとしさんにも感じることだが、絵を学んでいない人ならではの巧さと味があふれている。
その後立ち寄った彼のアトリエで窓から見える作品そのままの風景に驚き、またアトリエの持ち主であった彼の従姉妹にあたる方のていねいな暮らしぶりや毎日の食事、綿々と続くこの地の人びとの暮らしなどを聞いて、再度美術館に戻りたくなったがおなかも空いた。
会津柳津は、たいていの場所は徒歩で行けるのに見どころの多い不思議なまち。温泉街もあるがこの旅はゼロ泊なので時間がなく、足湯に入ったり魚渕でうぐいをながめたり、この晩おこなわれるという大きなお祭りのために町中がわくわくしているのを感じながら町なかをほっつき歩いたりしているうちに時間がきた。
そばでも食べたかったが時間がなく、通りすがりの商店でメンチコロッケと缶ビールを手に入れて駅へと急ぐ。途中、この地の名物であるあわまんじゅうをお祭りのためにフル回転でつくる湯気に誘われて、それもひとつ。
両国名物「両国の恋人」に負けず劣らず、見ため以上においしいメンチコロッケとあわまんじゅうに、次回は必ず泊まりで来ようと、後ろ髪を引かれすぎて首がもげそうになりながら帰りの電車に揺られた。

2019年8月8日木曜日

どこかで祝っていて

旅の翌日、友の庭で採れた野菜を使って友に教わった料理をつくった。
飲み歩いてばかりの身としては、数多い料理上手の友だちの生活を目にするたびに猛省。もっと早く目覚めていれば、と何度思ったことか。
この気持ちが消えないうちにと、帰宅するやいなや出汁をとったりアレしたりコレしたり。
「レストラン両国駅」か資生堂パーラーか、ってくらい完璧なオムライスにも、いずれ腰を据えて挑戦しよう。
おみやげにもらった純米吟醸を啜りながら没頭していると、玄関のベルが鳴った。
届いたのは、まったく同じ箱ふたつ。
自分で注文したTシャツと、誕生日プレゼントのTシャツ。中身もまったく同じ。届いた日も同じ。まさかのバッティング!でも2倍うれしい。
アラフィフなのに、Creepy nutsのTシャツなんてどうなのよ、と何度も買うのをためらったこのTシャツ、さっそく誕生日の朝に着て出かけた。
とはいえ、前の晩には誕生日のことなどすっかり忘れて「おいてけ堀」へ旅のおみやげを提げて参上、いつもより濃いホッピーにあっという間に酔っぱらって、前後左右不覚のまま帰宅。誕生日がこんなにどうでもよくなる日がくるとは思わなかった。
8月8日はボキの誕生日でもあり、結婚記念日でもあることまで忘れているんじゃなかろうね、と酔ってどこからか採ってきたえのころぐさの向こうでぼっちゃんがうらめしい顔をしていた。