2020年10月9日金曜日

頭から離れなくて

お昼どきになっても食欲がわかない。そんなときは蕎麦にかぎる。
前の晩に飲み過ぎて胃がもやもやしている。そんなときも蕎麦にかぎる。そうでないときも蕎麦を食べているけれど。
オフィス街のどまんなかとは思えない、昼間でも薄暗くて有線もテレビもラジオもつけていない、高齢のおじいさんひとりでやっているあのお店に行こう。その日はそう決めた。
幹線道路を渡るときに横目で見たそこはシャッターが閉まっており貼り紙がしてあった。見るまでもないと、悪い予感に慣れた私は別のお店へ向かった。

翌朝はお腹の調子をあわせていつものお蕎麦屋さんへ。しばらく早朝ソバの気分になれなかったが、この日は起きた瞬間から紅しょうが天そばで頭がいっぱいだった。
久しぶりのお店はとても混雑しており、ごぶさたの紅しょうが天そばはやっぱりおいしかった。

労働後に歩いていると、先日「ニューねこ正」でごちそうになったおいしいじゃがいものフライのことが浮かんで頭から離れなくなった。
ファストフードのポテトとはまったく別物のあのポテトフライ、また食べたいなぁ、あとかぼすブリまだあるかな、などと考えながら暖簾をくぐると、台風が来ているってのに飲みに来る人いるのかねぇって話してたら来たよ、と常連さん夫婦に笑われ、鼻がきいたね、と美人女将は小皿を差し出した。それは揚げたてのポテトフライであった。

2020年10月5日月曜日

木更津50km走

ただただ、減量のためだけに申し込んだ50km走の練習会。長い距離をだらだら走るのは好きだしなにより大会ではない機会に千葉を走ってみたかった。
休憩は自販機やコンビニで適宜と書いてあったので朝食はいつものおにぎり一個のみで向かったが、ゴールまでに固形物を口にしたのはそれが最初で最後だった。

参加者はほぼ同年代と思われる男女7名。穏やかそうな方たちばかりだが全員スリムでリッパなおみ足をしておられるのが気になった。主催者は若い男性でこれまたスリム。聞くとウルトラマラソンのデビューはいきなり100kmだったらしい。しかも脂肪など見当たらないのに脂肪燃焼・低糖質ランをしているとのこと。
走り出すとすぐに港。こんなに海が近かったのか、とうれしかったが隣の人と話すのが苦しい。日差しは強かったがそれにしてもそんなに肥えたか自分、と息切れしながら郊外へ。木更津勤務30年という年配の男性が説明してくれる周囲の景色やアクアラインを見ながらも苦しくて、ようやく見えたコンビニに狙いを定めて頑張るも通過。あれ、休憩はまだなのかと落胆して次なる自販機を目指す。ここで休憩ですかっと主催者の若い男性に聞くもまだですよ、のつれない答え。信号機もずっと青で日差しは強くなるばかり。しばらくして遠くにまた自販機を発見。こ、ここで、と言いかけるも、ここじゃないですよ、と先を越された。結局最初の休憩は15km走った地点の公園だった。そこにいたねこたちもナニゴトかと振り向くほど短い休憩をはさみ、次なる休憩地点だけを目指す。のどかな田園風景を横目にきんもくせいの香りをこんなにたくさん嗅いでも歯が痛くなるどころか苦しいだけなのは初めてではないか。
途中何度もクラッときたので塩タブレットを口に入れ、我慢できずに歩くことにしてみなさんには先に行ってもらった。
やっと景色を楽しみながら歩けると思ったらそこはニュータウンでつまらない。また田園風景に入ったと思ったら高速道路の脇のうらぶれた雑草だらけの歩道で、それでもかなり元気が出てきた。ぼちぼち走りますか、と小走りを始めてしばらくしたらコンビニ前にランナーのみなさん。なぜなのかわからないが追い付いた。
そういえば主催者の若い男性は何処へ、と思ったら熱中症の症状が出てダウンしたとのこと。それでも後半で合流し、なにがなんだかわからないほどくたびれてゴール。ウスウス気付いていたが、ペースがかなり早かったようだ。なのにまだ足りなくてみんなより多く走って戻ってきた人も、一泊して翌日65km離れた自宅へ走って帰るという強者も。
自己紹介ではみなさん控えめであったが、とんでもないウルトラマラソンを何度も完走していること、100kmくらいでは謙遜の域であること、また熱中症から復活した若い男性はフルマラソンで何度か優勝さえしていることを知って、ひとり場違いだったことを知った秋の夜であった。

2020年10月1日木曜日

KING OF STAGE vol.14

KING OF STAGE vol14 47都道府県ツアーDVD&Blue-Lay発売記念イベントのRHYMESTERインターネット公開サイン会の興奮と熱狂も冷めやらぬうちに、その現物が届いた。
あわてて梱包を開けて、まずはサインの確認。ない、ない、と同梱されていた納品書の注意書きも見ずに焦ったが、丁寧に袋に入れて段ボールで挟んでくれていた。あのサイン会は夢じゃなかったんだ、としみじみ。
激しくお手洗いへ行きたかったのに、Blu-rayディスクをプレーヤーに入れてしまった。
しばらく生で観ていないライブとたった1年前のライブハウスの映像にさっそく涙腺がゆるむ。それどころか嗚咽。密なんて言葉を知らなかった1年前に戻りたい。

発売日当日のアトロクはRHYMESTER全員がゲストだというのでON AIR時刻に合わせて遠回り帰宅。
新木場での「ONCE AGAIN」がかかってまた涙がじわり。何度も聴いているのにたまんないなぁとしみじみ歩いていたら、本編が始まる前に読まれたメールで脚が止まった。昨夜、酔って幼なじみに送ったメッセージと同じ文面で送ったメールが読まれている。ライトアップの始まった橋の上でマスクの上から口を押さえた。顔から火が出た。そして数日前から日に日にひどくなっていた頭痛がウソのように消えた。
本編が始まり、今度は笑いを堪えるためにマスクを押さえる。まさか私の田舎の虫の話が出るなんて。すべて聞き終えてからあわてて幼なじみにメッセージを送り「ニューねこ正」へ。とびきりのつぶ貝を堪能して興奮を鎮め、帰宅後はまたBlu-rayを観てSpotifyで先ほどのアトロクを聞き直し久しぶりに幸せな気分でおやすみなさい。
まだ始まっちゃいねぇよ、の「キッズ・リターン」のラストのセリフとともに思い出す「ONCE AGAIN」のリリックがやけに沁みた満月の夜であった。

2020年9月29日火曜日

公開サイン会とMid 90'sと千秋楽

観たい映画があり映画館へ赴いたが2日連続で満席で観ることができず。
ネット予約ができないのはココロモチとしては好きだけれど、ちょっと離れた場所だとがっかり度もたいしたもので、このままスゴスゴ帰宅するのもナニなので次に観たい映画を観に別の映画館へ向かった。最後の1席。砂かぶり席で観てきた。

最新のMovie Watch Menで映画評を聞いたばかりの「Mid 90’s」は最初から最後までスティーヴィーにくぎ付け。表情といいしぐさといい目が離せなかった。そして若いのににじみ出るレイの苦悩とやさしさが切なかった。
ものすごく素敵な俳優ばかりだったな、と後で調べてみたら登場した俳優さんのほとんどがプロのスケートボーダーだった。ということは、スケートボードを始めたばかりでへたくそだったあのシーンも演技だったのか。しかもあんなせつない表情までできるなんて。

それにしてもあんなに中田ルミ、ではなくて中ダルミなしで映画を観たのは久しぶりだったが、そのあとTV桟敷で観た大相撲九月場所千秋楽もすごかった。
正代の優勝を見届けたあと、興奮冷めやらずにRHYMESTERインターネット公開サイン会を3度目の視聴。そういえばPUNPEEの配信ライブも3回観た。自分のニックネームが呼ばれたところは4回見た。酒はひかえめの夜だった。

それにしても、ライブに行きたいなぁ。

2020年9月25日金曜日

電車を止めるな!

先日乗った電車で気になるポスターを発見。控えめすぎるほど小さなものだったが、それは映画のポスターだった。
経営困難といわれる(というか自らいっている)銚子電気鉄道の映画。ぬれせんべいやまずい棒が有名で、なかなかナイスなおみやげ物も数多く扱う会社なのでおみやげ屋さんをのぞくのがいつも楽しみだったが、ついに映画まで!
これは観なければ、と労働帰りに会場のライブハウスへ。ライブハウスなので予告の代わりにどなたかの曲がSEで流れる。ビールを飲み干していざスタート。
まったく期待していなかったが、なかなかどうして、おもしろい。「カメラを止めるな!」へのオマージュ(オマージュ?)だということを忘れて、なんという救いようのないラストなんだ、と唖然。しかし最後に納得。
こないだ乗ったばかりの電車と見たばかりの景色や駅舎になぜか地元愛のようなものがじわじわ湧いてきた。
おみやげに1日乗車券をもらったので、またあの電車に乗りに行こう。
「おとうさんのぼうし」も美味しかった。

珍しくほのぼのしたパッケージと名前のお菓子だが、「ぼうし」は倒産「防止」ともかけているらしい。そのセンス好きだなぁ、銚子電気鉄道。

2020年9月23日水曜日

海は?

いつもの海は飽きたので、以前何度も行ったけどゆっくり見られなかった別の海へ向かった。
朝食は駅弁に決めていた。こないだの駅弁がなんともおいしかったので今日は同じところの別の駅弁。菜の花に見立てたその駅弁もやはりとても美味しかった。
目的地は荒くれた海。毎年マラソンで走って横目で見ていただけなのでゆっくり見たくて行ったのだが、歩いて行ける場所だとそれなり。でも気はすんだので駅へ引き返した。
魚が有名なまちだがやはりここは町のお蕎麦屋さんへ。涼しい日だったので、まずはおでんで熱燗でもやるかとお願いしたら、三人でつつけそうな大きな土鍋がぐらぐら煮たって登場。いわしのつみれがおいしくて鶏天が入っていたのがおもしろかった。
電車に揺られて一冊だけ持ってきた本を開く。結局、どこへ行くかより長く電車に乗ることが好きなんだなぁと今さら気付いた。

2020年9月21日月曜日

好きなものはなに

安藤鶴夫の著作などで名前だけは知っていた大津絵を観に朝から東京ステーションギャラリーへ歩いて向かう。
大津絵は、なるほどこういうものだったのかと納得していると、だからなにって感じぃ~との声が。そこがいいのになぁ。意味がないようであるようなものが好きだ。地口行灯にも似ている。
自分の好きなものがだんだん見えてきてもっと何かを観たくなったので、ステキ朝食を自分にごちそうしながら考えることに。
そういえばギャラリーが再開されたときになぜか民芸っぽい展示を観に行ったなぁ。民芸か、さっき観た大津絵の保存されている場所に日本民藝館って書いてあったな。調べてみると、現在はアイヌ民芸の展示をしているとのこと。よし、モノはついでだ、とステキ朝食を平らげたが、おっと先にフンド氏の両親のお墓参りに行ってから。

フンド氏の両親のお墓はキリスト教のお墓なので線香等は不要。お花だけを持って途中でお義父さんのお酒とお義母さんのコーヒーを買っていったものだがずいぶん前にそのお店は無くなった。
今回は帰りによく寄ったラーメン屋さんまで無くなっていた。かなり古いお店で、キンキン声のおばさんがいて懐かしい味のラーメンだった。これで行くラーメン屋さんが無くなってしまった。
気を取り直してこれまたよく行っていた喫茶店で珍しくプリンを注文。固くておいしいプリンだった。
それから日本民藝館へ。10年以上ぶりに小田急線に乗り初めての駅で下りて複雑な道を行く。幼なじみから教えてもらったラジオの再放送がおもしろくて何度も膝から崩れ落ちそうになりながらも、ようやく到着した日本民藝館の門前で最後まで聞き終えたのち、気持ちを切り替える。
ここにもやはり大津絵が何点かあり思わず声が出そうになった。たまたま見た、獣を狩って解体するためのナイフの柄とケースを作る過程に気が遠くなった。
芸術ではないけれど、実用のためのものだけれど芸術的。うーんこれが民芸なのか。おみやげのために大量に描かれた大津絵も初午のために描かれた地口行灯も、芸術ではないけれど味がある。結局味が好きなんだ。自己流に分析して納得し時計を見ると、大相撲中継が始まっている時間。あわててラジオで聞き始める。
空腹をおぼえたがせっかくだから神保町へ寄って佐々木一郎さんの「稽古場物語」を手にとってみたい。書店の二階から一階のエスカレーターに少し稽古場のイラストが展示してあり、思った以上におもしろそうだったので即購入。
早く読みたくていつもはあまり行かない酒場の縄のれんをくぐる。よく冷えた白ワインにハモの天ぷらなどつまみながら、いい買いものをしたなぁと「稽古場物語」をめくる。塩らっきょうで最後のワインを飲み込んで、帰宅後は大相撲の動画を見返したりPUNPEEのライブ配信を見返したり。かばんの整理をしたら先ほどのお店のレシートが出てきたので何気なく見てみたら、食べた覚えのないやきとんが4本も印字されていた。確かに少々お高いと思ったよ。がっくりうなだれてふて寝を決め込んだ。