2019年5月9日木曜日

スパゲッティハンバーグのひみつ

幼なじみが建てた別宅はためいきが出るほどすてきだ。実際に、ためいきが止まらなかった。予定になかった「愛しのあのひと」(とふたりで呼んでいる)こと、お気に入りのお店のうなぎを食べて、さらにすてきなお店をはしご酒。

幼なじみの別宅のあるまちは、思い出のあるまち。
の、はずだったが、あれからもうウン十年。思い出の名残は皆無であった。


「ぺろりレストラン」の看板メニュー、スパゲッティハンバーグが誕生したのも、料理人の思い出から。
もう何度聞いたかしれないけれど、何度聞いてもせつない料理人の初デート。


こぢんまりしたそのレストランは、料理人が必死で調べたお店。
そのお店でふたりが選んだのは、スパゲッティミートソース。とてもおいしいと彼は思ったのだけれど、彼女は半分残していた。
気に入ってもらえなかったのかな、と彼はがっかりして、それはにがい思い出になったが、そこから長い月日を経てスパゲッティハンバーグと「ぺろりレストラン」が生まれたのだ。

彼女もきっとおいしいと思ったに違いないですよ、初デートで胸がいっぱいで食べられなかっただけだと思うんです、と料理人に言いたいけれど、まだ言っていない。

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