2019年5月10日金曜日

文太のつぶやき

ひどいめに遭った。
大型連休だとかで帰ってきていたあいつは、ワシの駿足ハード散歩に付き合ってくれるいいやつだと思っていたのだが、とんでもないやつだった。


それは、あたたかい陽射しの降りそそぐ気持ちのよい朝だった。


前日の山登りと深酒にもかかわらず、あいつはワシを散歩に連れ出した。
思慮深いワシは、筋肉痛と二日酔いのあいつをおもんぱかって、とっておきのコースへ案内した。
そこに深くて流れの早い用水路があった。
あさはかなあいつは、そこへワシが飛びこむように仕向けたのだ。


ワシは川に入って水を飲みながら歩くのが好きだ。
ただしそれは浅い川にかぎる。
なぜならワシは、泳げないからだ。


おぼれそうになりながらも、必死に犬かきで応戦するワシを助けもせずに、あいつは、あの馬鹿は、あらぁと阿呆みたいにクチを開けて見ていたのだ。
その目はイエスタデイライスのように濁った目であった。
ほうほうのていで用水路から脱出したずぶぬれのワシは、放心状態でしばらく遠くを見ていた。
それをあの馬鹿は・・・
あのスットコドッコイは・・・



文太くんって泳げないんだねぇ、ショックで茫然としちゃって、などとおもしろおかしく触れ回りおった。
ワシのオトコの沽券が・・・
むろん、あいつは家族や同級生らにひどい!と責められたらしいがあたりまえだ。
あのようなバカたれライスは、ウン10年ぶりに行くと言っていた夏山登山で、けむりきのこでも踏んづければよいのだ。



※けむりきのことは、ほこりたけのこと。
踏んづけると、けむり(ほこり)が出るのです。
こんなおいしそうな姿はしていないし、もちろん食べることはできない。
大きくなる前の柿の実に、かたちが似てるかな。

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