2020年7月22日水曜日

どじょうも穴子もいない夜

土用のせいかここ最近どうにもうなぎ熱が高まっており、うなぎの串焼き屋さんへ急ぐ。どれだけ急いだかというと、徒歩帰宅を途中でやめて電車に飛び乗ったほどだ。
「くりから」や「めそ」の名を覚えたのは、むかしむかしフンド氏に連れていってもらった白木のカウンターのあのお店。当時はうなぎにまったく興味がなかったが佇まいは好きだった。
変わらない引き戸に手を掛けると、カウンターはいっぱいなのになぜか静かな雰囲気。メニューの短冊を見ると、うなぎの串焼きがすべて完売していた。
この暑いのに向かいの男性が柳川を食べている。柳川はどじょうだ。うなぎがないならどじょう、長ければなんでもよいという考え、嫌いじゃないぜ。
うなぎがなくて落胆したが、気を取り直して飲ることにした。
隣りの日焼けしたおじさんのところに運ばれてきた串カツもおいしそうだが、こちらのげそバターもなかなかどうして。

向かいの男性が大汗をかきかき柳川を食べているのを見るにつけ、うなぎ欲が首をもたげる。あの人が柳川で手を打ったなら私は「おいてけ堀」の穴子でいくか。どじょうがないなら穴子、長ければなんでもよいのだ。
お勘定を済ませた隣の日焼けしたおじさんがちょっといいですか、と声をひそめて近寄ってきた。さっきそちらに運ばれてきたの、あれはなんですか?と聞かれたのでああ、あれはげそバターです、と答えるとバターのいい香りがふわっと漂ってきたからさ、おいしかった?ああそう、今度食べてみるよと笑って出て行った。でもそちらの串カツもおいしそうで実はずっと見ていたんですよ、とは言わなくてよかった。

河岸をかえて「おいてけ堀」へ。
頼むものは決まっているので短冊も見ずにお願いすると、お兄さんの手が止まった。ごめんなさい、今日は穴子終わっちゃったんですよ、と申し訳なさそうに言われた。

別の日にまた来ればいいじゃないの、そもそも本当はうなぎ目当てだったでしょう、としめさばが慰めてくれた。

2020年7月21日火曜日

大相撲7月場所初日

こんなことになる前から本場所のチケットを取ることは難しくなっていたのでふらりと国技館へ、なんてことは何年もできずにいた。今度の日曜日は初日だと知ってはいたが、先行販売の申込みに乗り遅れてあきらめていたところにスモ友から、本場所のチケットまだとれるみたいよ、と耳寄りなお知らせが。それならばと、少し酔ってはいたがポチリ。
単独で国技館に、しかも本場所初日に乗り込んだのはいつ以来か。
通常よりかなり遅い13時開場なので、チケットはあれども炎天下で大行列。Webのみの販売のせいか本気度の高い相撲ファンばかりの様子。若くてきれいな女性もソロでちらほら。もしや関取の彼女では、とゲスな妄想もふくらむ。
緊張感で張りつめた空気の、いつもと違う国技館の門をくぐると手の消毒そして検温。一歩進んでさらに検温。小分けになった消毒液と番組表をもらって席に着く前に売店へ直行。
今場所はお茶屋さんはすべて閉めており売店も減らしているとのことなので、まずはパンフレットを、そして忘れちゃなんねぇお弁当と焼鳥を。と思ったらお弁当の販売はなく焼鳥も10本入りしかなくて断念、ウーロン茶で空腹をしのぐ。(アルコールも禁止)後に空腹に耐えかねて再び売店に行くも焼鳥は売り切れており、ふと見た自販機でちゃんこ(具入りと明記)を発見してポチるも出てきたのは薄い茶色のお湯。なにかが浮いていると思ったら悲しげな乾燥ネギであった。クソ暑い中それをすすったら遠くでコンソメの味がした。
取組は幕下の半分くらいから。今さらながら、時間によっては幕下も塩を撒くんだと知った。海士の島が仕切りでうろたえていたように見えたのが可笑しかった。
久しぶりに見た十両土俵入りで興奮。取組は続くが声援は禁止なので手のひらがしびれるほどに拍手。たまらず声援をおくる声も聞こえたが、その気持ちわかりますよ。
取組を見てから取組表とパンフを交互に見つつ気になる呼び出しさんの声にも反応して忙しくしているとあっという間に幕内土俵入り。いつの間にか幕内にいる豊昇龍とこの日お目当ての照ノ富士の姿に涙がぽろり。近所でたまに見かける関取にもしびれた手で拍手。こんなに集中したことはしばらくなかったのではないか。

気付くと弓取式になっており、夢のような時間は終わっていた。
本場所終了後のごった返すエントランスでの相撲甚句会のみなさんの甚句を聞くことは叶わなかったが、フンド氏命名の追い出し太鼓つまり跳ね太鼓の音を7月に聞くのは不思議な気持ちだった。

2020年7月20日月曜日

透明人間と まぼろしじゃなかったおそば屋さん

待ちに待った週末、ぱっちり目が覚めたので傘を差して家を出た。
前日アトロクで映画評を聞いた「透明人間」は早朝から観るのに向くだろうか。早朝というほど早い時間でもないけれど朝から映画を観るのは初めてで楽しい。映画はとてもとてもおもしろかった。こんな「透明人間」になっていたとは!
朝からなにも食べていなかったので、さてどうしようかと考え、コロナのニュースが出始めた頃に行ったきりの不思議なおそば屋さんへ向かうことにした。思いきって引き戸に手を掛けてから始まった不思議なあの夜の宴。あの人々は本当にいるのだろうか、と角を曲がる。はたしてそこにあの提灯はあった。暖簾も「営業中」の札も出ている。こんにちは、と声をかけると「いらっしゃ~い」の声。ひょいと顔を出したのは、あのママ。昼間見てもお肌がきれいだ。
どうぞどうぞ、と通されたのはなつかしい座敷。厨房のママさんと話しながら寛いでいると、常連らしき近所の奥さまたちが次々にやってきた。とりあえず目の前のポットの湯でお茶をいれてみなさんに差し出す。どこの誰だか知らない私にも、今日は寒いわねぇとか旦那が薬ばっかり飲んでるけどそんなに薬が好きかねぇとか隣のお風呂屋さんの工事の音がうるさいったらありゃしないのよとか次々に話しかけてくる。なぜか全員うどんを注文しているのがおかしい。力うどんに生姜焼きなんてツワモノもいた。
私が注文した天ざるセットには、天ぷらとざるそばの他にこまごまと小鉢がついており、あの晩の記憶がよみがえった。お勘定を、と立ち上がると、ダメよコーヒー飲んでいかなきゃ、とご近所さんに止められてカップにコーヒーの粉を入れたものとお菓子をつけてハイどうぞ。しばし考えて、目の前のポットの湯を入れた。
あなたのこと思い出したわ、また来てね、とママさんにドーナッツの入った袋を渡された。
夢じゃなかった!

それから何年ぶりかで行ったアンティーク屋さんでステキなテーブルマットやオリジナルのジャケットを見つけて、今日はいい日だと確信。こうなったら完璧な日にしてやるぞと帰宅してからちょびジョグに出かけ、お久しぶりねの「ニューねこ正」に登場。
玉露割りを飲んでいたが、最高の生牡蠣やしめさばなどにがまんならずに枡酒を解禁。
あら枡酒にしたんだ、と美人女将に笑われた。

2020年7月16日木曜日

ふぞろいの林檎たち

「サロン・ド・こけし」の姉妹店にて髪をさっぱり、カラーもばっちりキメてもらって南青山へ。

B-BOY彫刻家・Taku OBATAさんの作品展「Opposite Effects」が青山のギャラリーで先月から行われており会期前から楽しみにしていたのにいつもの行動範囲外へ出ることに必要以上に緊張して先延ばしにしていた結果、ついにこの日で最終日。以前は仕事に買いものにライブによく訪れていた山手線のあっちがわ。いつからか足が向かなくなりそのうちに足を踏み入れるだけで緊張するようになった。
地階にクロコダイルのチョコレートが鎮座する静かなギャラリーで、入るなり作品に見入る。ポーズはもちろん洋服のしわの表現がすごいなぁと、じっくりいろんな方向から見た。ご本人が在廊しており、お客さんに解説しているのを隣で盗み聞き。
粘土のかたまりのようなこれはなんだろうと思っていたら、粘土をこねてまるめたものを木彫りで表現したとのこと。おもしろい!

よいものを見たおかげか、晴れた翌日は木場公園までちょびっとジョグ。植物園でぶどうやざくろの育ち具合をチェックして公園を2周してさようなら。暑い日の一番暑い時間になぜわざわざ出かけたのか。

これまでで一番たくさん映画やドラマを観ている最近、アトロクで小耳に挟んで気になっていた「ふぞろいの林檎たち」を何日かかけて観終わった。
石原真理子の異常なまでのかわいさと小林薫のとんでもないかっこよさ、それと国広富之のなんともいえない感じとひたすら美しい高橋ひとみに夢中になった。観る人によって共感する人物は違うのだろうが、私は最初から中島唱子に胸が痛かった。それにしてもこの時代のドラマはみんなはっきりモノを言うなぁ。

「サロン・ド・こけし」の姉妹店のオーナーのバイブルである「まゆ子の季節」を読み始めた。「ふぞろい」といい、古すぎない雰囲気が不思議。ハナから専門的だがおもしろくて移動中の車内でも没頭。40巻以上あるらしいのでしばらくは楽しめそう。


旅に出たい。
旅の途中の車内で、たとえば長いトンネルの中で、または長い夜をもてあました旅先の宿で、ゆっくり本を読みたい。

2020年7月8日水曜日

よふかしのうた

姪たちと約100個のぎょうざをつくって食べた週末が明けて、いよいよダイエットに本腰をいれますか、と決心した徒歩帰宅の途中、飲みに誘われあっさり翻意。ダイエット中だというのに磯辺焼きをふたつも食べてしまった。

帰宅すると、映画を観るには遅いが寝るには早い時間。ならば見逃したドラマでもとPC前にスタンバイして、ひさしぶりに顔ブローチの続きに手をつけた。気付けば酒も飲まずに午前様。よい気分で床につくも、読みかけの本がおもしろくて時間をぬすまれた。めったにない愉しいよふかし。
ダイエットは今日からだ、と朝からはりきってお弁当をつくり、いつものことながら労働中の意識は不明だが退勤後は大股で徒歩帰宅。毎朝通る「真夜中のスバゲッティ」の店の前でしばしテイクアウトのタパスをにらみつける。入ったこともないお店なのに「真夜中のスパゲッティ」の名前だけでファンになってしまった。「真夜中」という言葉になんともひそやかな空気を感じる。
この晩は、先日視聴したRHYMESTERの飲み―ティングを最初から見ようと決めていた。いそいそと酒の肴を用意してスタンバイ。ダイエットは意識している。
飲み―ティングは硬軟のバランスがとてもよくて本当におもしろかった。つくりかけの顔ブローチが目に入ったのでちょっとだけよ、と手をつける。配信は終わり酒も尽きたが顔ブローチは止まらず、ふと気づけばまた午前様。さらに昨夜読了を我慢した本の誘惑に負けてまたよふかし。
ところで
意識は高まっているが、ダイエットはいつから始まるのだろうか。

2020年7月2日木曜日

君の名前で僕を呼んで

北イタリアの乾いた景色やプール、おいしそうなアプリコットに、過ごしたこともないステキな夏を懐かしく思い出した。永遠に続くと思われたあの夏。ビタイチ過ごしてませんけど。
主人公エリオのパパがなんともチャーミングでいいなぁと思っていたら終盤の彼の言葉で涙がこぼれた。やさしく説得力のある愛ある視線と言葉。そしてラストの、暖炉の炎を見つめるエリオの表情にも涙がじわり。

涙を拭ってCKBの「Ivory」を聴きながら、せつない夏だったなぁとしみじみ。梅雨も明けてないし夏らしい日を過ごしてもいないのに。
いろいろな余韻に浸りながらPCを背に唐突にほうれん草をゆで始める。次は「夜のビブラート」のライブ(feat.RHYMESTER!)、そしてほうれん草を夜のスパゲッティのお店のドレッシングで和えていると始まった「マクガフィン」で画面に釘付け。ふたつも感動したあとにでも鳥肌が立つ自分に、もう復活か、とオリバーの声が聞こえた気がしたがそれは全然意味が違うぜ。

2020年7月1日水曜日

夏はイヤだよ イヤだよ夏は

ラン友に誘われて、何ヵ月ぶりかの日比谷ライド、そしてみんなで街ランへ。
全員お久しぶりねで、会えてうれしいのに名前が出てこない。
街ランなのに苦しくてたまらなかったのは肥えたせい。コーチに太ったなぁ、とズバリ言われて返す言葉もなし。
汗を流して、日比谷の路上でみんなと飲んですっきり帰ってきた翌日は、ダイエットのためにつつましく帰る途中で飲み友だちに誘われて「おいてけ堀」。
いつの間にか3人か4人で飲む間柄になったこの不思議なグループだが、この日は珍しくサシ飲み。翌日の博多出張で夜はうなぎを予定しているその友だちはそれはもう嬉しそうだった。強い風の吹きこむ店内はあまり見ない顔ばかりだった珍しい夜。

先日届いたCKBの新譜がとてもよくて、この夏はこれをヘビロテすることに決めた。
(残念ながら『両国のひと』ではない)
この曲にぴったりの出来事があれば文句なしだが、夏は暑いのでむつかしいことを考えたくない。そもそもなにかが起こるとも思えないし起きなくてよい。目下の関心事は、朝ソバをキメるタイミングがいつ来るかだ。