2019年7月31日水曜日

夏服も「メンキー&ノンキー」

脳みそが沸騰するこの季節は、考えごとはしたくない。

毎朝、着る洋服で悩む時間など、たまらなくイヤだ。
そもそも悩むほどの数も持ち合わせていないし、夏場は重ね着の組みあわせを考える必要もないのに。褪せて見える洋服の数々を見ては、ため息をつく。
「メンキー&ノンキー」で、心が弾む洋服を見たい。あとバッグ。
ここに行けば、必ず欲しいものに出会えるから。


先日「メンキー&ノンキー」へ寄ったときのこと。
店主に、一昨日の晩、盛大なくしゃみをしませんでしたか、と訊ねると、したかもしれないと言うので驚いた。一昨日の晩、あなたの噂をしていたんですよ、と言うと、どなたとですか、と訊かれたので初めて会ったおじさんとです、「ニューねこ正」で隣り合わせて話しているうちにこのお店の話になったんです、と答えた。
誰だろう、と店主は首を傾げるも、名前はわからないし顔だって曖昧だ。
あの洋服屋の店名は隠し子の名前らしいよ、とか、あのスーパーマーケットの人たちはとても感じがよいがレジスターのあいつはダメだ、など近所の話に終始しておもしろかった、と言うと店主はピンときたようだった。
「ニューねこ正」いいお店ですよね、ぼくもたまに行きます、と店主が言うので、私は毎週行っています、と胸を張った。

その日見つけたのは、タグまですてきなワンピース。昔、女優が海外旅行に行く際にものすごいおめかしをしていたのを真似て、今度の旅に着ていこうかな。


そうそう
「深川福々」最新号で、角乗り体験取材記を書きました。
(写真は勝手に深川福々のTwitterから拝借しました)
小さいコーナーながら、全身さらしております。
体当たりってこういうこと?脱いでないから違うか。
ばか言ってんじゃニャイよ!(久しぶりのぼっちゃん兄さん)

2019年7月29日月曜日

ビールと花火大会、そしてビール

幼なじみが指定したビールがおいしい小さなそのお店は、たまに通るだけの場所だった。
ごく普通のビールが、店主の手にかかるとすばらしくおいしいものに変身する。

おつまみもどれもおいしくて、特に日本からあげ協会なる団体が絶賛しているというからあげを2個にするか5個にするかで長年の友情にヒビが入りそうになったり、互いに話すことがありすぎてのどが渇いて新たにたのんだビールがまたおいしくて今の今まで話していたことを全部忘れて思い出したりしているうちに、幼なじみの帰りの時間が近づいてきた。
おいしかったです、また来ますね、とあいさつしてお店を出ようとしたら、これよかったらどうぞ、と手渡されたのはその日の夕刊フジ。真ん中あたりに注意してくださいね、いろっぽいページがありますからとの注意付き。

ビールしか飲んでいないのに千鳥足で駅に向かう。そして乗るべき電車を間違えた。
幼なじみの予約しているバスの時間は迫っている。
とにかく降りよう、と適当な駅で下車して別の路線のホームへ急ぐ。
なんとか間に合いそうだけれど念のためついていくよ、と言おうとしてやめた。千鳥足のしゃべり足りないスットコドッコイがついていったら最悪の事態を引き起こしかねない。申し訳ない気持ちで見送る。

へんな汗を流しながら時計をにらんでいると、間に合ったよ、との連絡。心底ホッとしていると、会いたかったひとから突然のお誘い。
酔ってはいるが、ビールしか飲んでないんだと言いきかせて酒場へ。
そのひとと飲むと、いつも愉しい。
ごめんね、なんか一緒に飲みたくなって呼びだしちゃったんだよね、と言われてうれしくなった。いえいえ、ありがたいです、その気持ち。
いつものごとく飲んで飲んで飲まれて飲んで、でも翌朝もきっちり生島ヒロシの声で目覚めた。


週末は、どこへ行っても隅田川花火大会の話題で持ちきりであった。
開催されるか否か、私は昨年に引き続き延期を願っていたが、台風はそれた。

「ニューねこ正」の美人女将は、台風のせいで焼き鳥のおみやげの電話が少ないとぼやいていた。毎年この日は昼過ぎからずっと焼きっぱなしだという。
かわらばん「深川福々」の最新号が発行されて、日中あちこち配布して歩く。
花火大会は夜だというのに、昼過ぎから浴衣姿の男女がちらほら。
配布先でも花火大会の話題で持ちきりであった。

花火大会が実施されるということは、毎年恒例となった「隅田川花火大会LSD」も実施されるということでもあり、日比谷からぞろぞろ走り始めた。
途中、栃の心が丸の内でラグビーボールを持って座っていた。

実は適当に行った場所で全員で今までで一番大きくて迫力のある花火を見ることができて、そして話してみたかったひとたちといろいろ話すこともできて、またもやビールでへべれけの夜であった。

2019年7月25日木曜日

トンネルぬければ

ごく短いトンネルをくぐるのが好きだ。
向こうになにがあるのかわかる程度の短いトンネルをくぐる。
実家の近くにある、線路をまたぐ小さなトンネルが原点だ。
既に向こうがわが見えているにもかかわらず、このトンネルをくぐったらどんな景色が待っているのだろう、と思いを巡らせていた。
しかし高校生になってもまだそのことを考えていたのは、さすがにぼんやり者であったとあるとき気付いた。実際には電車に乗って何度もくぐっていたのに気付かなかったのも、まぬけであった。


残業でへとへとになって帰宅する途中、いつもの公園に提灯と櫓が取り付けられていた。
ここ何年か近所の盆踊りも見ていないし、会社近くのこのお祭りも見ていない。
なんだかんだで気ぜわしいけれど、愉しい用事ばかりなので、たまの残業もヨシ。
祭りの前の静けさは、たまらなく気分が昂揚する。

今年の夏はなんたってもう、水族館でくらげも見たし
かわうそやイルカショーだって見た。
夏の始まりとしては、これ以上ないのではないか。

しかもこの夏、行くところ・行きたいところ、急にいくつも決まった。
会いたかったひとに会うのも、ひとりで行きたい場所も、初めて挑戦することも準備が必要。それで悩むのも、また愉しい。
今年も、ねまちへいこう。
やることが山積みだから、それをなんとかしてからな。

2019年7月22日月曜日

東京でいちばんおいしいハイボール

いろいろの用足しの合間に、ぽっかり空いた時間とお腹。
さてどうしたものか、と思案をめぐらしているうちに、あのお店が浮かんだ。
そうだ、あのお店の東京一おいしいハイボールで時間をすごそう。
世の中はランチタイム。しかしそのお店はそんな時間からひっそり開店し、夜は意外に早く店じまいをするのだ。
今日ならあのカウンターに並ぶおもしろそうな本をめくりながら、いや背表紙をながめるだけでもおもしろそうだけれど、小さな紙に書かれたおつまみのメニューをじっくり研究することもできそうだ。

変わったつくりのビルの変わった形のエレベーターに乗り込んで目当てのフロアに下り立つと、果たしてそこには、あの扉が待ち受けていた。

時計を見たら開店時間ぴったりで、当然口開けの客であった。
ハイボールをください、と言い、さっそくカウンターに並ぶ本の背表紙を見る。どれもじっくり読みたい本ばかりだ。はやる胸を抑えて、小さな紙に書かれたメニューを見る。どれも味わってみたいおつまみばかりだ。
目を本とメニューにやったまま、東京一のハイボールをすする。
どうしてこんなにおいしいハイボールをつくることができるのか、以前その秘密を訊ねたことがある。特別なウイスキーを使用しているわけではないとのことで、ますます謎は深まった。
「Bar GABGAB」の水割りがおいしいのは、白ママの自宅近くの神社の手水を使用しているからではないか、という話はこの界隈では有名な話。


そういえば朝からなにも食べていなかった。
穴が開くほどメニューを見て気になった「緑のきつね」なるおつまみを頼んで、カウンターに置いてある瓶の中の落花生をつまみながら、気になった本をそっと開く。
こんなおもしろい本を無造作に置いているなんて、私のような客がヘンな気を起こしたらどうするのだ、と喜び怒っているうちに「緑のきつね」の皿が目の前に置かれた。
緑のきつねって、そうか、こういうことか、とにやにやしながら口に運ぶ。

おいしい。
たれている目がさらにたれるほどおいしい。見た目も実においしい。
写真は撮らない。撮ったとしても誰にも見せたくない。
ああ、今すぐ誰かに伝えたいこの気持ち。
あの友だちとあの友だちとフンド氏に自慢したのちに、一緒にここへ来てまた食べたいくらいおいしい。大騒ぎしたい気持ちをぐっとこらえて、2杯めのハイボールに口をつける。おいしい。2杯めも、やっぱりおいしい。

こんな時間を過ごしたのは久しぶりだなぁ、と千鳥足で店を出る。
外は当然明るくて、世の中はまだランチタイムであった。

2019年7月19日金曜日

不審者とタクシードライバー

あれはまだ、ひどく弱っていた頃のこと。
自宅から離れた繁華街の酒場で、当時好きだったギタリストに遭遇して握手してもらった夜。
相当飲んだのにまったく酔えず、寝てもいないのに電車を降りすごしたので戻ろうとして逆方向の電車に乗ってそれに気付いてまた下車、もう一度よく考えて電車に乗りなおすもまた間違えて、やはり酔っているのか、と観念して適当な駅で下車、日曜日の夜の終電にはまだ早い時間、すぐにつかまったタクシーに乗り込むと話し好きな年配の運転手さんで、道々にある暗くて見えない歴史的建造物などをていねいに説明してくださるもこちらは弱っている上に酔っているので、はぁ、としか返事はできず、なぜかこの運転手さんになにもかも話してしまいたいという気持ちが抑えられなくなり、私、弱っている上に酔っているのでこれからおかしなことを話しますけど聞いていただけますか、と前置きしたのちにとりとめのない話を始めたら、驚いたそぶりもなくていねいに聞いてくれたので、誰にも言えなかったことを全部話して、知らない人にも仲のよい人にも胸の内をここまで話したことはそれまでも今もないけれど、こりゃへんな客を乗っけてしまったな、と運転手さんは思っているだろうと申し訳ない気持ちになったのに、タクシーを降りるときに、お客さんは大丈夫ですよ、がんばってください、とやさしい声で言われたことは忘れられないしどれだけ支えになったかわからない。
運転免許は持たないが、夜のだらだらドライブが好きだ。
夜の深い時間帯にラジオを聞きながら景色が流れていくのを見ていると、あの運転手さんを思い出す。


そういえば
酒場で遭遇したギタリスト、お手洗いから戻った彼の手は乾いていた。
と、いうことは・・・

2019年7月17日水曜日

筋肉痛はいつくるの

ある晩帰宅すると、家中が覚えのない香りでいっぱいだった。
秘密の会合で肉を食べに食べて食べ倒してきたあとだったが、全身についた肉のにおいが負けるほど色気のある香り。こんな香りのもの持っていたっけ、と香りのもとを探すと、それはよく熟れたすももと友だちからもらったシナモンだった。


夕方18時に横浜を出発、夜通し走って箱根湯本に翌朝ゴールする、というイベントに参加した。
「しとしとぼっちゃん」の傘なんてあってもじゃまなほどの、豪雨の中を走った。
どうかしてる、と気付いたのはすべて終わって帰宅し、洗濯機を回しているときだった。

本当はゴールしたら即帰りたかったが、くさいのを通り越して最&高にくさくなったこのカラダで始発電車に乗るわけにはいかず、みんなで温泉へ。
昨年は日焼けを気にしながら入ったこの露天風呂、今年は霧雨を浴びながら気持ちよく浸かり、ともに走った仲間たちと痣を見せ合って労をねぎらった。

午前中の電車の中で飲んだビールはじっくりおいしくて、当然眠気を誘うものだった。今が何時なのかここはどこなのか、話していないと脳が溶けだしそうで、とにかくよくしゃべった。筋肉痛はまだ、なかった。



帰宅したらいい香りがした夜の、秘密の会合のこと。
年齢も仕事も立場もいろいろ違う異色のメンツが、近況報告をしながらステーキを次々に平らげる。デザートを食べる段になって話が盛りあがり、あと一軒、あと20分だけ行こう、と夜の喫茶店へ。
こんな時間にコーヒーを飲むことは珍しいが、正直者の集まりなので酔って適当に話すのもナニだ。言葉を選ばず、思ったことをシンプルに伝え合うのは気持ちがよい。


要するに
自分が大切にしていることに土足で踏み込まれると、いくら温和な我々でも怒るよね、という結論に達し、さわやかにお別れした。


そういえば
夜通し60㎞走ってゴールした翌日も練習会で走った。どうかしてる。
筋肉痛はまだ来ない。

2019年7月11日木曜日

ほおずきの香り 紳士のはじまり

あさがお市もほおずき市も終わった。

ほおずきが残り少なくなった夕暮れの浅草寺は、打ち水とほおずきの青臭いにおいで、なんともしんみりした気分になる。
しんみりするとロクなことはない。あわてて酒場へ急ぐ。

こんな夜は「ニューねこ正」ではなく
「おいてけ堀」でぼぅっとするのが気分だ。
フンド氏のお父さまが行きつけだったこのお店は、入口近くのカウンター席が好きだ。
にぎやかだけれどうるさくなく、ちょうどいいお店。



たまには誰とも話さず、スマホも見ずに、ぼんやり飲みたいものだ。
やらねばいけないあれやこれや、憂鬱なあれやこれやをとりとめもなく考えたり、本を読んだり、まわりを見まわしたり。
ふと気づくと、カウンターの離れた席で若者がひとり酒を飲んでいた。
チェックのジャケットが涼しげで、なによりひとりを愉しんでいる様子が好もしい。
ご近所さんが、お勘定時に美人女将に軽口を叩いているのを見て微笑んでいる様子に、私の考える「紳士」の片鱗を見た。

1.美味しい肴があり愉しいお酒が飲める、そんなお店をいくつか知っている。
2.常連ぶったり、お店のひとにタメ口をきくようなことはしない。
3.大勢で行くとき以外、安いだけのお店には行かない。
4.決して最後の客にはならない。

フンド氏から見てとった、私なりの紳士像。私は、今のところ4があやしいかな。



・・・というより、たまにはジムに行こうぜ自分。