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2019年5月27日月曜日

やじうま3 やじ犬1

怒濤の土曜日を越えて、待ちに待った予定のない日曜日。


ジムに行ったら、その晩行こうと思っていた酒場の大将にばったり。
ではまた、とマシンに向かうと、激しくトレーニングしている元お隣さんを発見。
和ものが好きなアメリカ人教師・P。ブロークンなイングリッシュを駆使して、再会を喜ぶ。


この日の両国は、例のアレで一日ヘリの音でうるさかった。
「あちら」へ行くときっとえらいこっちゃだろうと、わざと遠まわりしてコーヒー屋さんへ。
それなのに「こちら」がわも、見たこともない人数の警察官。
「こちら」でこんなだったら、「あちら」はいったいどうなっていたのだろう。
ようやくたどりついた「喫茶ニャーゴ」のまわりも、物々しい空気。
いつも絶対に目を合わせない犬も
この日はなぜか両脇に警察官をはべらせて、いつも以上に目を合わせようとしない。

コーヒー豆を挽いてもらいながら店主とぶつくさ文句を言っていたら、ひさしぶりに会う、店舗を持たない古書店の店主がやってきた。
ぼくの家は高速道路出入り口のすぐそばなので、そろそろかなとやじうまがてらコーヒーを買いにきまして、と古書店主は笑った。
ぶつくさ文句を言っていたコーヒー屋さんの店主も、実は・・・とカメラを持ち出した。

帰り道、警察官に抗議??して動こうとしなかった車はそのままであったが、道路を封鎖していたフェンス等の撤去が始まり、張りつめていた空気がふっとゆるんだ気がした。

ジムでばったり会った店主の酒場へ顔を出すと、おさわりNGのかわいこちゃん(ねこ)が出勤していた。今夜はおさわりできないのか、と少し落胆して飲み始めた。
隣り合わせたひととラジオの話で意気投合し、共通の話題であるランよりも盛りあがる。
いやぁ実は今日、「あちら」へ行ってからここに来たんですよ、と唐突にそのひと。
もしや、と思ったら、このひともやじうまであった。

2019年1月30日水曜日

帰ってくれてうれしいわ

友と軽く呑んだあとに、あのバーに行こうということになった。
いや、本当は友のひとりが行ってみたいというお店をさがしたが見当たらず、三人で頭を突き合わせて調べたら、たしかに今いる場所でまちがいないのにそこには店自体がなく、狐につままれた気分で途方に暮れていたら、そうだ、この近くにあのバーがある、と思いだしてそこへ向かったのだった。

あのバーがあるにしては小ぎれいなビルだな、といつも違和感を抱いていたそのビルに馴れた調子で入り、そこだけはあのバーに似合っているといつも思っていた扉に手を掛けると、なにかがおかしい。看板がない。
扉もあるしビルの入口に店の名前も書いてあるのに、とまたも途方に暮れる三人。

ひとりならあきらめてさっさと河岸を変えるが、そこは、三人寄ればなんとやら。
スマホをにらんでいた、あきらめない友のひとりが声を上げた。
すぐ近くに移転したみたいだ、行ってみよう。
あっけなく見つけたそのビルは、エレベーターから通路から、あのバーにぴったりの佇まい。
そして、やはりあのバーにぴったりの扉の向こうには、少し広くなっただけで変わっていないあのバーがあった。
これも変わっていない、不思議にうまいハイボールで乾杯してから、へんな夜だね、と口ぐちに言い合う。

しかしここのハイボール、どうしたらこんなにおいしくなるんだろうね、といつものようにハイボールを褒めながらほどよく混みあったカウンターを眺めると、なにやらおつまみのようなメニューがコースターに書かれて画鋲で留めてあるのが目についた。

そういえば、ここのバーテンさんはお料理がとても上手らしいよ、と友のひとりが言うのでそれを頼んでみると、平凡なメニューのはずのそれは、えもいわれぬおいしさであった。
これは、ほかのものも食べてみなければね、とひそひそ話をしていると、どうぞ、とお店のひとがメニュー表をくれた。

昂奮して頼んだいくつかのおつまみは、どれも想像を超えたおいしいものばかりで、何度も空になるグラス。


そういえば、メニューに価格がないね


あきらめない友のひとりがぽつりとつぶやいた。
顔を見合わせる三人。
三人寄ればなんとやら(再び)っていうしさ、三人もいればなんとかなるよ、皿洗いなら任せてよ、と口ぐちに言いながらも、頬がひきつる面々。


あのバーがぼったくりバーだったらおもしろいかも、などと失礼なことを考えながら結局なにごともなく、濃い香水の香りの漂う夜のまちを帰った。



そういえば
何年ぶりかで宿泊した海の近くのホテルでエレベーターを待っていると、低くジャズが流れていることに気付いた。

それはヘレン・メリルの「帰ってくれてうれしいわ」
ただの偶然だけれど、にくい選曲だなぁと、にやにや笑いが止まらなかった。

2018年12月14日金曜日

プロ雀士はメランコリック

はとたちがパンくずでサッカーをしているのを横目に、いつもの道を急ぐ朝。
昨夜、酒場で隣り合わせた、食欲のないプロ雀士のことを思い出す。
ママとジビエの話をしていたら
「ボクにはねぇ、食欲ってものがないんだよ」
と、プロ雀士は唐突に話し出した。

彼の前には、レモンサワーと食べかけのあじの開き。
何杯飲んだのか知らないけれど、おつまみはそれだけなのだろうか。
おなかが空くことはないんですか、と尋ねると、あるけど食べるのが億劫でね、と言う。
人間の三大欲求のひとつの「食欲」がないとは、いったいどういうことなのか。
興味を持って次々に質問をした。

三大欲求のうち、ふたつについては聞いたが、その次はやめておこうと思ったら。
反対側の隣で既にでき上がっていたゴルチェとその仲間たちが、食欲と睡眠欲を除いたもうひとつについて、あっけらかんと訊いてきた。

そういえばゴルチェも、女性を泣かせていたな。(しつこい)
覚えてるんだぜ。(しつこい)
枯れているように見せかけてゴルチェも・・・(やめとけ)
禁断の4杯めを飲み干して、お先に、とあいさつしようとしたら
「おにぎりとメンチね」
とプロ雀士。
食欲がないって、どのクチが言ったんだ~!
と心の奥で叫んだのは、言うまでもない。

2018年11月2日金曜日

日本シリーズにGは出ていませんよ、とは言えなかった夜

毎度おなじみの酒場へ登場。
ひとつだけ空いていた席にすべりこむと、「そこだと、テレビ見えないでしょう」と、マスター。
そういえば日本シリーズをやっている。
すぐ隣には酩酊した老紳士。
野球といえば、東京ドームのほど近くの友だちのお店で、その日敗けたGファンのお客さんたちが肩を落として飲んでいるなか、アンチGのフンド氏が、それと知らずに大声でGをディスりにディスって、お客さんたちがみな帰ってしまった夜を思い出す。
たのむから、ここでGのワルクチ言うなよ~と懇願していた、彼の友だちの顔も。

「失礼ですが、どちらを応援しているのですか」
酩酊紳士が尋ねてくる。
う~ん、なんとなく見てるだけです、と力なく笑う。
「こちらにはよくいらっしゃるのですか」
酩酊紳士が尋ねてくる。
「常連さんだよ」
なぜか、マスターが答える。

いつの間にか「常連さん」になっていたのかぁ。
フンド氏が聞いたら呆れるだろうなぁ。
Gファンの酩酊紳士は上機嫌で、まだなにか話したそうだったので、私スポーツは相撲しか見ないんです、と言うと、顔を輝かせた。
「私は生まれも育ちも両国です 木村庄之助は後輩です」
それから出るわ出るわ、式守伊之助だの栃錦だの初代若乃花だのの秘話が。
熱心に見ていた日本シリーズ、点が入ったことにも気付かずに、酩酊紳士は口角泡を飛ばして、キングス江戸弁とでもいうべき正統派の江戸弁で、おもしろい話しを聞かせてくれた。

酩酊紳士が帰り、「席うつりなよ」とマスターがしきりに言うので、お言葉に甘えて移動。
空いた席にママが座り、細い指にショートホープをはさんで紙にペンを走らせる。
煙を吐くさまが、なんともかっこいい。
その晩、店を出ていつものように小窓の向こうのマスターに手を振ると、ママも一緒に手を振ってくれた。

仲のいい夫婦っていいなぁ、ぼくたちみたいに、と言っていたフンド氏を思い出す。
両国に住んでいてよかった、と思える瞬間。

2018年8月23日木曜日

つかのまの紅一点

いつものお店をのぞいたら、超のつくほどの満席。
仕方ないのでいったん帰宅して、返す刀で再登場。
相席でいいよね、とスリムママが通してくれたのは、
すっかりでき上がっている紳士たち三人のテーブル。

失礼します、と椅子を引くと
「オレもいま来たんだよ」
と向かいの紳士。
な~んだ
たまに隣り合わせて話すおじさんばかりじゃないの。
三人とも地元生まれ・地元育ちで
きれいな江戸弁を操る。
こないだ終わったばかりの祭りの話でしばし盛りあがった。
たいへんきれいな酒飲み紳士たちであった。
「おっ紅一点!」
と言うので辺りを見回すと
スリムママ以外は見事にオトコ客のみ。

こんな「紅」ですいません、と小さくなりながらも
となりのおじさんのウインナいためは、ちゃっかりいただいた。

2017年10月4日水曜日

秋の夜長は「ザ・両国」と

きんもくせいが香るこの季節
ゆうべは、角を曲がったら
びんづけ油の匂いが漂っていた。
そりゃそうだ
両国だもの。

でも、意外な匂いも悪くないかも、と
翌日は自分の香りを変えてみた。
「サロン・ド・こけし」のマダムと
「MOD BERBAR」のオーナーを見習って、
少しはおしゃれをしないと。


脚の筋を傷めているため
飲酒とスポーツを禁じられている。
患部を温めてはいけない、というので
熱燗はお預け。
ビールを少し飲んで、おとなしく寝・・・
る前に、
「ザ・両国」もストレートで少々。

興がのって
長崎みやげのさつま揚げと
会津みやげのまこもだけを
長崎おでんのつゆで煮込んで、
ちょっとだけよ、と
つまんでいるうちに、
秋の夜は更けていく。

2017年8月29日火曜日

それは、できない約束

よく晴れた休日、ウイスキー蒸留所へ
つれていってもらった。
「ザ・両国」の蒸留所は、
国技館地下の焼き鳥工場の、さらに地下にあるらしいが
そこは、森の中であった。

森の中のバーで飲んだウイスキーは
えもいわれぬうまさで、店内にも、よい香りがただよっていた。

友だちは、車でつれていってくれたので飲めず
それだけが残念。
「はとエアライン」を手配するんだった。
ついでに「ニャーニャーホテル」も。
しかし
泊りがけで行ったら、たいへんなことになりそうだ。


泊りがけといえば、そのあと
べつの森の中で、泊りがけでやっているお祭りにも
つれていってもらった。

たのしい話を聞いたり、あれこれ食べているうちに満腹。
さらに帰りの車中で
ともだちからもらった、ぶどうやトマトにも、手を出してしまった。
翌日の皇居一周タイムトライアルが、さんざんな結果だったのは
食べすぎのせい。

せめて週に一日は、晩酌をやめる、と宣言した
その舌もかわかぬうちに、ドイツビールを鯨飲。
どのクチが言ったんだ、と
ぱんぱんになったおなかを抱えて、ぼやく帰り道。