遅刻魔の友人を一時間ほど待つことになり、どうしたものかとあまり知らない街を歩いていると、数ある中でも特に魅力的な赤ちょうちんのひとつの前で足が止まった。
遅刻魔の友人は下戸だし、軽く飲もうかな、と店内を覗くとそこは立ち飲みのお店で、にぎやかだけれどうるさくなく、店内のおじさん客は仲よしで楽しそうだし、さっと飲むにはよさそうだ。
せわしく働くお姉さまは一見の私にもとても親切で居心地もまずまず。さて飲みものをなににしようか、と店内の短冊を見まわして驚愕。とにかく安価だ。増税後の令和のご時世に、本物のせんべろのお店が実在していたなんて。中島らもの時代にせんべろは無くなったと思っていた。
ただし定食にビールなんてのはせんべろとして認めない。ビール1杯でべろべろになるかっての。などと興奮しながら3杯めのホッピーに口をつける。
隣りのテーブルの紳士はこのお店の顔らしく、はい差し入れ、と近くの顔見知りのおじさんにアジフライの皿を渡していた。
最後のしいたけをくわえてホッピーを飲み干したらいい時間。遅刻魔の友人をほろ酔いで迎えると、顔赤いねと言われた。
ただし
もともとこの日行こうと約束していたお店の料理が、おいしいのに苦しくて入らなかったのが誤算であった。
2019年10月4日金曜日
2019年10月3日木曜日
かつお風味のふんどし
いいことがあった友だちと飲んだ帰り道
たまに出くわす「これ」が道に長々と横たわっていた。力士のふんどし。
両国に住んでいるとこういったものが干してあるのをよく見かけるが、深夜の道端で出会うとは。
いいことがあった友だちと会う前に、お久しぶりねの未亡人会会長とその息子さんとご一緒。
みんなご主人と長年「ニューねこ正」へ通っていて、未亡人になってから改めて通うようになった。案外見られているもので、あなたのご主人素敵な方だったわね、などと今も言われる。
いいことがあった友だちは、えいっと出かけたひとり旅がとても愉しかったと写真を見せてくれた。目当ての場所はひとつだったけれど、偶然行った美術館も大当たりだったとのこと。
年若い友だちで、とても賢くてやさしくて愉しみが多い。そんな彼女の話を聞いているうちに禁断の熱燗に手を出してしまった。ふと隣をみると彼女も手酌で熱燗を味わっていた。
その帰り道に出会ったのが、例のふんどしであった。
2019年10月1日火曜日
初めての信州駒ヶ根ハーフマラソン
文太といつもの道を散歩していたら現れた「3㎞」の看板。
振り向くと「18㎞」の看板。
文太はなぜかこの道が好きだが、私も好きだ。
文太の選ぶ散歩道と川はセンスがよい。
振り向くと「18㎞」の看板。
翌日は、生まれ育った田舎での「信州駒ヶ根ハーフマラソン」。
どうにもやる気が出ないので、文太に練習に付き合ってもらったものの、みちくさばかりで愉しくて進まなかった。ああ、翌日ここを通るときは、さぞかしくたびれていることだろうなぁ。文太はなぜかこの道が好きだが、私も好きだ。
文太の選ぶ散歩道と川はセンスがよい。
きんもくせいがあちこちで匂っているのに、ひんやりしていない空気が不思議であった。
翌日は雨の予報だった。
雨の予報だったはずなのに。
どうなってるんだ、と同級生と文句を言っているうちにスタート。
昨日文太と散歩したあたりはスタート後15分ほどだし下りなので、なつかしい風景を眺めながら・・・というわけにもいかず(前週も帰省していたのでさほどなつかしくない)早くもだめな予感。わかっていたこととはいえ、なんだこの坂道は、と毒づきながらヨタヨタ進む。
エイドのアイスを食べていたら見知らぬおじさんが振り返って、それ何個め?と尋ねるので、1個め!と応える。それからそのおじさんと抜きつ抜かれつ、追い抜きざまに互いに声を掛け合い、最後はなんとか追い抜いてへとへとでゴール。(ところであのおじさんは誰だったのだろうか)
見るも無残なタイムであったが、部門別40位でラッキー賞なるものをいただく。
あとはエイドでもおいしくいただいた梨。
大会100選にも選ばれているだけあって、坂道の辛さ以外は文句なくよい大会だった。中央アルプスや南アルプス、天竜川などの写真を撮っているランナーもたくさんいた。
スタッフのおじさんたちの言葉に方言を聞いたのが、知っているだけになんとも脱力ものであった。
暑さのために食欲が湧かず、エイドの手打ちそばを食べることができなかったことだけが心のこり。
山帰りとマラソン帰りの人でごった返す温泉の入り口で、あけびを発見。
種のまわりが甘くておいしい。久しぶりにお目にかかった。
子どもの頃あけびを教えてくれたのは
「メンキー&ノンキー」の名前の由来でもある、幼なじみのノンキー。
あけびは高いところにしか実がならないから、いつも見るだけだった。その場所も、この日のマラソンコースの近くだった。
夕方には帰らないといけないため同級生たちとの打ち上げにも参加せず、文太と名残惜しく散歩。きんもくせいの香りはずっと漂っていた。
疲れているから、ゆっくりね、軽くだよ、と言ったのに、この日は全力で駆け抜ける文太。それ、昨日したかった。
着替えたばかりのCreepy NutsのTシャツは汗で濡れていたが、時間がなかったので汗くさいまま暫しのさよなら。
帰りの車中で本を1冊読み終えた。放心状態だった。
衝撃のラストで衝撃を受けたと同時に、これ前に読んだ、と気付いたからだ。
気分転換にGoogleのニュースを見ると、なんと!Creepy NutsのDJ松永が、ロンドンで行われたDMC世界大会で優勝したとの記事が目に飛び込んできた。
びっしょり汗くさかったTシャツは、いつの間にか乾いていた。
2019年9月27日金曜日
だがそれでいい
秋が深まったら着たいジャケットを「メンキー&ノンキー」で発見。
そういえばむかしむかし、やはりここである洋服にひとめ惚れしたとき店主に、サイズ大丈夫ですか、とぼそっと言われたことがある。なんと失礼な!と思ったが、試着するまでもなくどう見ても当時の自分には入らない洋服だった。
そういえば、何年になりますか、と唐突に店主。
その日はお彼岸で、フンド氏がお世話になっているお寺さんの秋の法事で、クラシックギターとソプラノ歌手の生演奏と精進料理と、未亡人友だちとのおしゃべりを愉しんだ帰りだった。
店主がジャケットを畳みながら、カラダ、いい感じに戻ってよかったですね、とぼそっと言った。そんなに痩せていましたか私、と訊くと、一時期ね、今の方がいいですよ、と店主は応えた。
そうですかねぇ、とつぶやきながら、半年以上量っていない己の目方はいったい今どうなっているのか、恐ろしくて目を背け続けているとは言えなかった。
エッセイ以外もう全作読み尽くしたと思っていた作家の、未読の本を5冊も発見。
それは仕事帰りの「オロロン書房」にて。
そういえばむかしむかし、やはりここである洋服にひとめ惚れしたとき店主に、サイズ大丈夫ですか、とぼそっと言われたことがある。なんと失礼な!と思ったが、試着するまでもなくどう見ても当時の自分には入らない洋服だった。
そういえば、何年になりますか、と唐突に店主。
その日はお彼岸で、フンド氏がお世話になっているお寺さんの秋の法事で、クラシックギターとソプラノ歌手の生演奏と精進料理と、未亡人友だちとのおしゃべりを愉しんだ帰りだった。
店主がジャケットを畳みながら、カラダ、いい感じに戻ってよかったですね、とぼそっと言った。そんなに痩せていましたか私、と訊くと、一時期ね、今の方がいいですよ、と店主は応えた。
そうですかねぇ、とつぶやきながら、半年以上量っていない己の目方はいったい今どうなっているのか、恐ろしくて目を背け続けているとは言えなかった。
エッセイ以外もう全作読み尽くしたと思っていた作家の、未読の本を5冊も発見。
それは仕事帰りの「オロロン書房」にて。
その作家の小説を読みながら湯舟に浸かったり、お酒を飲んだり、眠りに落ちたりする幸せといったらない。これでしばらくは禁断症状に怯えることもない。
相変わらず、マラソンの練習にはやる気が出なくて、締切の迫っている案件も手つかず。
やる気のないときは、やる気が出るまで休むべし、と決めて早や3年。本気出す、と意気込んで早や半年。
季節とともに空の様子や道端の雑草や古ぼけた建物が変わっていくのを眺めながら、焦りがないことに焦る。
とはいえ、秋から冬にかけて行くライブと旅のことで、頭はいっぱい。
2019年9月26日木曜日
秋の収穫祭とマフィアカ―
初めてウインナコーヒーを覚えたのは「喫茶ニャーゴ」。
カウンターには小さな線路が敷かれており、注文したものがトロッコに乗って運ばれてくる。
白いシャツとベストを着た背の高いマスターと、髪を高々と結った年配のウェイトレスがいる。広くてうす暗い店内で味わったそれは、信じられないほどおいしかった。
別の日には、アーモンドコーヒーというものも飲んだ。
コーヒーの匂いのしみついた壁とアーモンドの香りに、子どもながら酔ったような気分になったものだ。
コーヒー豆ならここのものと決めている。
それは、年に一度たのしいイベントをおこなう「SUNSHINE STATE ESPRESSO」。
そのたのしいイベント「秋の収穫祭」に、今年はマッチ売りの中年が参加します。
マッチ売りが久しぶりすぎて緊張が高まっている。
しかも、その前に締切が迫っているモノがあるのに手つかずだ。
マラソン大会も迫っているのにひとりではやる気が起きないので、誰かに誘ってもらったら練習に参加するようにしている。
先日は12月におこなわれる那覇マラソンのクリニックなるものに誘われて参加。
いつもの練習会とは違う練習もおもしろかったし、コーチが目の醒めるようなイケメンだったので景色もばつぐん。少し無茶しつつ楽しくクリニックを終えて友だちと別れランステに戻る途中、近道をしたつもりが元の場所に戻っていたことに背筋が寒くなった。
先日会ったイタリアンマフィアのクルマは、ナントカいう名前のクラシックなクルマだった。
シックなオリーブグリーンの車体のそのクルマ、なんと助手席のドアが外からしか開けることができないらしい。ということは、お気に入りの女性を助手席に乗せたら、彼がいちいち外からドアを開けにいくか、もしくはそのままあのステキなマフィア邸に・・・
なんという悪いマフィア!
「はっしゃオーライ!」のクリスマスタクシーには、そんな色っぽい仕掛けはありませんのでご安心を。
2019年9月25日水曜日
デビルズカットと天使の分けまえは似て非なるもの
幼なじみが教えてくれた山間の秘湯・通称「天国」はわけあって今月いっぱいで閉めることになった。それが悲しくて、どんな顔して幼なじみに会ったらよいものか、と考えていたが、顔を合わせればマシンガントーク。
ぶどう園で藤稔やブラックビート、安芸クイーンにナガノパープルなどを思うぞんぶん食べて天国へ。
久しぶりの天国は雨に濡れていた。
雨でも晴れでも天国は天国。家族にも場所を明かしたくないほど素敵な場所なのだ。
ホストのすーちゃんに接待してもらって、ドンペリならぬ鹿ジャーキーを貢いだ。お料理もやっぱりおいしくて、この時間がもう味わえないなんて考えられなかった。豪快に笑うあのひとの不在もたまたまとしか思えず、これからもまた幼なじみに頼んだら連れていってもらえる気がする。とはいえ去りがたくて、2時間ほども風呂に浸かったり、風呂上りに大相撲をTV桟敷で鑑賞したり、気付けば最後の客になっていた。
翌日は、毎年恒例となったウィスキー&ビアキャンプ。
以前、花見という名の日本酒の新酒発表会でともに長野日報の一面を飾ってしまった酒友だちのイタリアンマフィアの運転で、幼なじみにとともに一路スキー場へ。
イタリアンマフィアは常に笑顔を絶やさない、とてもすてきな家で好きなものに囲まれて暮らしているダンディなひとなのだが、たまに姿が見えないと、誰か殺りに行ってるのかな、などと不名誉な噂をされてしまうワイルドな風貌を持っている。この日も日焼けした顔にサングラスが似合いすぎていたが、実はシードルのためのりんご畑で日焼けしたなんて誰も信じないだろうな、とぼやいていた。
山の天気は変わりやすいというが、ここまでとは、というほどころころ変わる陽射しと風。それでも晴れ女の幼なじみのおかげで雨に降られることはなく、珍しいウィスキーを舐めたりクラフトビールを飲んだり。おいしいお酒ばかりだったが、特に印象に残ったのが、キューバ革命以前のラム。
私の知っているラムとはまったく違う、ヴィンテージな味。ちびちび舐めては香りを嗅いで、飲み干したあとのグラスの匂いでしばらくうっとりした。
音楽をテーマにした、見たことのないウィスキーもずらり。
これらはワンショットずつお土産にできるというので、迷わずHIPHOPを選んだ。
ここのところ、お酒がおいしく思えなくなっていたのに、この旅でいっぺんに回復した。
翌日は全身からウィスキーの匂いがしたほどいろんなお酒を飲んだけれど、おいしいおつまみとゆるい雰囲気で愉しく酔った。運転免許を持っていないために、毎回このふたりにお世話になってひとり気楽に酔っているのが申し訳ない・・・
でもやっぱり運転免許はとらない方がいいと思いますよ。
ぶどう園で藤稔やブラックビート、安芸クイーンにナガノパープルなどを思うぞんぶん食べて天国へ。
久しぶりの天国は雨に濡れていた。
雨でも晴れでも天国は天国。家族にも場所を明かしたくないほど素敵な場所なのだ。
ホストのすーちゃんに接待してもらって、ドンペリならぬ鹿ジャーキーを貢いだ。お料理もやっぱりおいしくて、この時間がもう味わえないなんて考えられなかった。豪快に笑うあのひとの不在もたまたまとしか思えず、これからもまた幼なじみに頼んだら連れていってもらえる気がする。とはいえ去りがたくて、2時間ほども風呂に浸かったり、風呂上りに大相撲をTV桟敷で鑑賞したり、気付けば最後の客になっていた。
以前、花見という名の日本酒の新酒発表会でともに長野日報の一面を飾ってしまった酒友だちのイタリアンマフィアの運転で、幼なじみにとともに一路スキー場へ。
イタリアンマフィアは常に笑顔を絶やさない、とてもすてきな家で好きなものに囲まれて暮らしているダンディなひとなのだが、たまに姿が見えないと、誰か殺りに行ってるのかな、などと不名誉な噂をされてしまうワイルドな風貌を持っている。この日も日焼けした顔にサングラスが似合いすぎていたが、実はシードルのためのりんご畑で日焼けしたなんて誰も信じないだろうな、とぼやいていた。
山の天気は変わりやすいというが、ここまでとは、というほどころころ変わる陽射しと風。それでも晴れ女の幼なじみのおかげで雨に降られることはなく、珍しいウィスキーを舐めたりクラフトビールを飲んだり。おいしいお酒ばかりだったが、特に印象に残ったのが、キューバ革命以前のラム。
私の知っているラムとはまったく違う、ヴィンテージな味。ちびちび舐めては香りを嗅いで、飲み干したあとのグラスの匂いでしばらくうっとりした。
音楽をテーマにした、見たことのないウィスキーもずらり。
これらはワンショットずつお土産にできるというので、迷わずHIPHOPを選んだ。
ここのところ、お酒がおいしく思えなくなっていたのに、この旅でいっぺんに回復した。
翌日は全身からウィスキーの匂いがしたほどいろんなお酒を飲んだけれど、おいしいおつまみとゆるい雰囲気で愉しく酔った。運転免許を持っていないために、毎回このふたりにお世話になってひとり気楽に酔っているのが申し訳ない・・・
でもやっぱり運転免許はとらない方がいいと思いますよ。
2019年9月18日水曜日
アンジーが歌ったのは、銀の腕時計
かっぱ:なんだ、この派手なやつは
かえる:あのひとが持ち帰ってきたんだよ
朝青龍:趣味じゃないでしょ、これ
目覚まし:(無言)
かっぱ:で、持ち主は?かえる:この派手なやつに電池入れてすぐ寝たよ
朝青龍:使うつもりかよ、これ
目覚まし:(無言)
草木もねむる丑三つ時を少し過ぎたころ、妙にいい声の男が歌い始めた。
飛び起きて歌声の主を探すと、派手に光る見覚えのない目覚まし時計。心臓の音が耳のすぐ近くで聞こえる。
なんだこれ、としばし考えて思い出した。
モンブランマラソンを完走した仲間の凱旋祝いにギョーハイ(餃子とハイボールの会)を催して、おなかいっぱい餃子を食べてハイボールを飲んだのちに、幹事が目覚まし時計をもらったとかで、じゃんけんで勝ってもらったのであった。(正確には、じゃんけんに負けたのに奪い取ってきたのであった)
昔からアクセサリーはシルバー一択で、光りものは好きではないが、一時期ゴールドを好んだこともあった。金の腕時計でとても気に入ったものがあったから。
以前船旅に出かけたときの、ヴィンテージ感あふれる船内の階段も金色が決め手だった。
割れた器を継ぐ金継ぎも、同様の雰囲気を醸し出している気がする。
二段ベッドがせまいのはいいとしても、寸詰まりなのが辛かった。
窓から見えるのは海だけ。船酔いはしないので思う存分波を眺めていたっけ。
というのはウソで、海の近くの博物館に行くつもりが間違えて隣りの船内に入ってしまい、あちこち覗いているうちにすっかり船旅気分に浸ってしまったのだ。
おかげで海の近くの博物館をぐっと愉しく観ることができた。
ただし博物館に着く前まで読んでいた本が夜の話だったので、海がまぶしすぎてしばらく目を開けることができなかった。
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