2019年2月12日火曜日

雪の日に小豆を炊く

ぽっかりできた、自由な休日。

まずは惰眠をむさぼり、家事をこなして、長風呂。
酒のつまみ以外、ほとんどなにも入っていなかった冷蔵庫を食料で満たし、ていねいに料理をつくる。
途中ひと休みして、買ったばかりの文庫本を開く。
ラジオから好きな曲が流れる。
つぼみが大きくなってきた沈丁花の様子を見に、何度もベランダへ。

いただいた小豆を炊いたりなどして、約束の時間より少し早めに家を出る。
街に、体格のよい男の子があふれていると思ったら、「聖地」では白鵬杯をやっていた。
お互いにふんどしを締めあう子どもたちや、リラックスした表情の白鵬を眺めて、得した気分。

久しぶりによい時間を過ごした日のその晩は
会いたかったひとにいっぺんに会えて、おもわず深酒。


いつもすれ違いのあのひとも上階にいたらしいが、こんな酔っぱらい姿を見せるわけにはゆかず、この日もお目通しはかなわず。

2019年2月4日月曜日

わけもなく

わけもなく 家出したくてたまらない ひとり暮らしの家にいるのに(枡野浩一)
この句が頭から離れない時期があった。
今では、家出のことなど考える余地もない。



それはさておき
現在絶賛開催中のイベント「食のお座敷ブックマルシェ」
いつ行かれるのか不明ではあるけれど、必ず行くからそこで待ってろよ。
(誰に言っているのか)

マッチ売りの中年の新作は三点。
ねまちの名店「ぺろりべんとう」さん考案の、おべんとうノート。
表紙の包みをほどくと、三種類のおべんとうが現れる。


 しゃけとあまいたまご焼き、ポテトサラダのおべんとうに
えびフライとチャーハンのおべんとう
おいなりさんとのり巻きの助六べんとう
裏にはだじゃれサイン。
おわかりいただけただろうか。

記憶に残るおべんとうを記録して、すてきなおべんとうノートをつくってみてはいかが?
箸袋コレクションをこちらにまとめてもよいでしょう。


「食のお座敷ブックマルシェ」

2019年1月27日(日)~2月23日(土)
12:00~18:00(最終日~17:00)
※火曜水曜定休 ※2/11~2/20臨時休業
墨田区向島3-6-5 一軒家カフェikkA2F 甘夏書店

2019年1月30日水曜日

帰ってくれてうれしいわ

友と軽く呑んだあとに、あのバーに行こうということになった。
いや、本当は友のひとりが行ってみたいというお店をさがしたが見当たらず、三人で頭を突き合わせて調べたら、たしかに今いる場所でまちがいないのにそこには店自体がなく、狐につままれた気分で途方に暮れていたら、そうだ、この近くにあのバーがある、と思いだしてそこへ向かったのだった。

あのバーがあるにしては小ぎれいなビルだな、といつも違和感を抱いていたそのビルに馴れた調子で入り、そこだけはあのバーに似合っているといつも思っていた扉に手を掛けると、なにかがおかしい。看板がない。
扉もあるしビルの入口に店の名前も書いてあるのに、とまたも途方に暮れる三人。

ひとりならあきらめてさっさと河岸を変えるが、そこは、三人寄ればなんとやら。
スマホをにらんでいた、あきらめない友のひとりが声を上げた。
すぐ近くに移転したみたいだ、行ってみよう。
あっけなく見つけたそのビルは、エレベーターから通路から、あのバーにぴったりの佇まい。
そして、やはりあのバーにぴったりの扉の向こうには、少し広くなっただけで変わっていないあのバーがあった。
これも変わっていない、不思議にうまいハイボールで乾杯してから、へんな夜だね、と口ぐちに言い合う。

しかしここのハイボール、どうしたらこんなにおいしくなるんだろうね、といつものようにハイボールを褒めながらほどよく混みあったカウンターを眺めると、なにやらおつまみのようなメニューがコースターに書かれて画鋲で留めてあるのが目についた。

そういえば、ここのバーテンさんはお料理がとても上手らしいよ、と友のひとりが言うのでそれを頼んでみると、平凡なメニューのはずのそれは、えもいわれぬおいしさであった。
これは、ほかのものも食べてみなければね、とひそひそ話をしていると、どうぞ、とお店のひとがメニュー表をくれた。

昂奮して頼んだいくつかのおつまみは、どれも想像を超えたおいしいものばかりで、何度も空になるグラス。


そういえば、メニューに価格がないね


あきらめない友のひとりがぽつりとつぶやいた。
顔を見合わせる三人。
三人寄ればなんとやら(再び)っていうしさ、三人もいればなんとかなるよ、皿洗いなら任せてよ、と口ぐちに言いながらも、頬がひきつる面々。


あのバーがぼったくりバーだったらおもしろいかも、などと失礼なことを考えながら結局なにごともなく、濃い香水の香りの漂う夜のまちを帰った。



そういえば
何年ぶりかで宿泊した海の近くのホテルでエレベーターを待っていると、低くジャズが流れていることに気付いた。

それはヘレン・メリルの「帰ってくれてうれしいわ」
ただの偶然だけれど、にくい選曲だなぁと、にやにや笑いが止まらなかった。

2019年1月28日月曜日

「食のお座敷ブックマルシェ」始まりました

「食のお座敷ブックマルシェ」
2019年1月27日(日)~2月23日(土)
12:00~18:00(最終日~17:00)
※火曜水曜定休
※2/11~2/20臨時休業
墨田区向島3-6-5 一軒家カフェikkA2F 甘夏書店


4年前に初めて出した本気、今年は既に2回出しました。
2019年は、ハナからオラついてます。


今回は、おべんとうノート3種類。
包みを開けると、おべんとうがあらわれます。
中身は「甘夏書店」さんでご覧になってください。
たった3冊しかないけれど。
裏にはだじゃれ風サインを入れてみました。
思いつきです思いつき。

おべんとうノートとは、宴会・仕出しからお花見弁当で人気の「ぺろりべんとう」さん考案のノート。

おいしかったお弁当の内容や食べた場所を描いたり、旅先で食べたお弁当の包み紙や箸袋を貼ったりして、すてきなアルバムをつくろうって魂胆です。
古書店さんが持ち寄った「食」がらみの本も相当気になるので、早く行きたくてたまらない。


4年前、義兄からの(無茶な)誘いで本気を出してからこのかた、くらげのようにのらりくらりと生きてきた。
義兄はすごいな、友だちみんなえらいな、それにくらべて・・・と考えたり考えなかったり。でも、やればできるじゃん自分、とうれしくなった。
ありがたいことです。


ありがたいといえば
ここのところ海に連れていってもらったり、自分から行ったりもしていて
ほんとうはマラソン大会もあったのだけれど、いっぺんにふたつのことをできないのと体調がよくなかったのとで、走るのは断念。
そのおかげで、おべんとうに集中できた。


走らないと決めたので、すでにとってあったホテルを拠点に、とにかく海を見ようと決めていた。
夕日が溶けるように落ちるのを見届けてから、ねらっていたお店へ。
やけにぎらぎらした大将がくれた昆布のメメってのが、いい香りでおいしかった。
明日は雪が降るらしいよ、と聞いてはしゃいでいた店の女の子には残念であったが、翌日は快晴。

地元のボランティアのみなさんと、おもしろいコスプレのランナーを見つけては笑い合って、道行くひとを片っぱしから応援。知らないひとばかりなのに、なぜあんなに楽しかったのか。
寒さに耐えきれなくなるまで海を見て、コーヒー屋さんへ。
朝はマラソン会場でここのコーヒーをいただきました、と余計なひとことも言わずにいられないほど、ゆったりした気分でソファーに身をしずめた。

2019年1月18日金曜日

マンネリ上等

好きな本は、病的にくりかえし読む。
「両国図書館」でも、同じ本ばかり読むことがある。
短編でも流れのある本は、辛抱強く最初から読む。
あらすじを知っているにもかかわらず、読み終えたあとにほっとするのは、変わらない。



さみしい、と思う夜はまったくないけれど、夜になるとつい足が向いてしまうのが「ニューねこ正」
かれこれ、もう20年近く通っているだろうか。
お勘定をすませたお客さんの「ごちそうさま、うまかったよ」のひとことを背中で聞くのが、自分のことのようにうれしいのは、変わらない。



「レストラン両国駅」のメニューは、たったふたつ。
うす焼きたまごでケチャップライスを巻いたオムライスに、身の大きいえびフライ。
姿の見えないマスターの、うんちくを語らない姿勢が好もしいし、変わらないこのふたつのメニューでずっと勝負している、その心意気やよし。



「ぺろりレストラン」のメニューも、たったふたつ。
クリスマスには、ピザなんかも出ますけどね。
料理人の初デートのせつない思い出から生まれたスパゲッティハンバーグと、料理人も記憶がさだかでないほど昔からある焼きそばサラダは、季節ごとの付けあわせのフルーツ以外、ずっと変わらない。



この世に生まれて、たった5日しかたっていない赤ちゃんに逢いに行った。
赤ちゃんは、ねこの兄さんと人間の姉さんに囲まれて、小さな口であくびをしていた。
人間の姉さんたちには覚悟のようなものが生まれており、小さななりをしていても自覚が芽生えているように見えた。
赤ちゃんの父親も母親も、赤ちゃんも姉さんたちも、そうか、これからのひとたちなんだな、と既に余生をおくっている私は、今さらながら思った。

2019年1月17日木曜日

玉カフェ.福の市 開催中です

東向島「玉ノ井カフェ.」さんで絶賛開催中の「玉カフェ.福の市
~2019年1月29日(火)まで

玉ノ井カフェ.
東京都墨田区東向島5-27-4
https://ameblo.jp/tamanoicafe/

私の愉しみを増やしてくれるニクいあの方のおかげで、ふとひらめいてお赤飯をつくりました。
これができ上がった数日後に、現実におめでたいことが起きるとは。
お赤飯にしてよかった。


あとは、子どもが抱っこされると強い子に育つと言われるおすもうさんシリーズ。
「横綱土俵入り」と
 「清酒 綱取り」と
 「相撲茶屋 さばねこ」



横綱がまたひとり、引退した。
先代の親方がいてくれたらと益体もないことを、彼が大関になってから何度も考えた。
でも、耳を塞ぎたくなる、心無い言葉を吐く人たちの声を聞かずに済むから、これからは大丈夫。(どこから目線?)



なつかしい友だちからメールが来た。
一緒によく行ったライブハウスに、ひさしぶりに行くんだ、とのこと。
(そこには白いシャツに黒のタイトスカートのウェイトレスはいない。いるのは『ライブハウスねんね』だけ)

私はというと、もう3年近く、そこには行っていない。
ジャズにもあのベーシストにも飽いたわけではないが、どうにも間が空いてしまった。
今年また行ってみよう。


そういえば、寄席にもめっきり行っていない。
噺家さんなんて何人もいるし、ディグろうと思えばできるのに、生来のメンドクササが邪魔をして・・・
今年は新規開拓できそうな予感。
しかし席亭ってのは、身近にけっこういるものなのだなぁ。

2019年1月11日金曜日

まだまだ続くだろう

iPodのシャッフル機能は、まれに「わかってる」選曲をすることがある。

本文まで行きつけない本のまえがきに泣かされてむくみ顔の翌朝、慣れないブーツで歩いていると、朝から聴いてはならない曲に変わった。
(当然「R.Y.O.G.O.K.U」ではない)

やめてよ~とiPodを取り出そうとするも、手がかじかんでうまくいかない。
たくさんの人が行き交うなかで、ついに涙が出てきた。

らしくない。
こんな朝は「おはよう商店」の朝ごはんで気分をアゲるしかない。
生きていくということは、おなかが空くことよのう。