2019年9月18日水曜日

アンジーが歌ったのは、銀の腕時計

かっぱ:なんだ、この派手なやつは

かえる:あのひとが持ち帰ってきたんだよ

朝青龍:趣味じゃないでしょ、これ

目覚まし:(無言)
かっぱ:で、持ち主は?

かえる:この派手なやつに電池入れてすぐ寝たよ

朝青龍:使うつもりかよ、これ

目覚まし:(無言)



草木もねむる丑三つ時を少し過ぎたころ、妙にいい声の男が歌い始めた。
飛び起きて歌声の主を探すと、派手に光る見覚えのない目覚まし時計。心臓の音が耳のすぐ近くで聞こえる。
なんだこれ、としばし考えて思い出した。

モンブランマラソンを完走した仲間の凱旋祝いにギョーハイ(餃子とハイボールの会)を催して、おなかいっぱい餃子を食べてハイボールを飲んだのちに、幹事が目覚まし時計をもらったとかで、じゃんけんで勝ってもらったのであった。(正確には、じゃんけんに負けたのに奪い取ってきたのであった)



昔からアクセサリーはシルバー一択で、光りものは好きではないが、一時期ゴールドを好んだこともあった。金の腕時計でとても気に入ったものがあったから。
以前船旅に出かけたときの、ヴィンテージ感あふれる船内の階段も金色が決め手だった。
割れた器を継ぐ金継ぎも、同様の雰囲気を醸し出している気がする。
二段ベッドがせまいのはいいとしても、寸詰まりなのが辛かった。
窓から見えるのは海だけ。船酔いはしないので思う存分波を眺めていたっけ。


というのはウソで、海の近くの博物館に行くつもりが間違えて隣りの船内に入ってしまい、あちこち覗いているうちにすっかり船旅気分に浸ってしまったのだ。
おかげで海の近くの博物館をぐっと愉しく観ることができた。
ただし博物館に着く前まで読んでいた本が夜の話だったので、海がまぶしすぎてしばらく目を開けることができなかった。

2019年9月10日火曜日

いつもと少し違う日

いつもと違う時間にいつもと少し違う道を歩いていたら、見知った顔が横断歩道の向こうからやってきた。
誰だっけ、と考える間もなく、そのひとは頭を下げてこちらにやってくる。
「メンキー&ノンキー」の店主だった。
まだ幼い男の子をだっこして、なにか言いたげにやってくる。



「おいてけ堀」こないだ行きました、すごくよかったですよ、とぼそっとつぶやいて店主は去って行った。彼にだっこされた幼い男の子は不思議そうにこちらを見ていた。
そうだ、「ニューねこ正」で隣り合ったおじさんと「メンキー&ノンキー」の店主の話になって、そのことを店主に伝えたら彼もそこへたまに行くという話からなぜか「おいてけ堀」の話になったのだった。
そうですか、行かれたんですね、あのお店もおいしかったでしょう、と彼の背中に声をかけた。

いつもと違う時間にいつもと少し違う道を歩くと、いつもと違ういつもの人に会うものなのだなぁ、と感心した。
こんな日は、ついでにいつもと違うお昼にしたい。それで久しぶりに「ぺろりレストラン」へ。
なるべく薄い味のハンバーグをカラダが欲しており、ここのスパゲッティハンバーグを思い出したのだ。
サンドイッチもたいへんおいしいのだが、ここ最近弱っている私の胃には一日かけても食べきれないボリュームである。(しばらく肉続きなのはどうなのか、という疑問については考えないこととする)
その日初めての食事であったスパゲッティハンバーグのおかげで夜になっても空腹になることはなく、飲酒する気も失せて早々に寝たおかげか、夢を見た。
待ち合わせ場所にいたフンド氏は以前と変わらなかったが、誕生日にホットドッグを食べたかどうか聞くのを忘れた。

2019年9月9日月曜日

調子わるくてあたりまえ

どうも最近、酒(を欲する自分のカラダ)の調子がよくないな、と首を傾げながら赤ちょうちんを通りすぎようとしたら、おあつらえむきにひとつ、カウンターの席が空いているのが見えた。うっかり吸いこまれてしまうのは、習慣としか言いようがない。
隣には、お久しぶりねのプロ雀士。
今日はね、食べるものなにも頼んでないんだよ、と力なく笑うので、もともと食欲がないと訊いてはいたけれど、それにしても食べなくて大丈夫ですか、と尋ねると、プロ雀士は大きくためいきをついて、夕方うどんを大盛りで食べたからね、とつぶやいた。
うどんがさ、固すぎて腹がふくれちゃってさ、とぼやくプロ雀士に「土俵そば」を教えてあげればよかった、と考えていると、これから二軒めに行くんだけど、もしイヤじゃなかったら行くかい、とお誘いを受けた。
「おいてけ堀」に来るお客さんからもその名前をよく聞くそのスナックは鳥の名前で、誰もが「ちゃん」付けで呼ぶ。今夜は空いてるな、とひとりごちてプロ雀士が店のドアを開けると、ステキなエプロンをつけた大ママと常連さんが大歓迎。プロ雀士はここでも人気者のようだ。
店は大ママとママ、そしてその息子であるものすごい筋肉の持ち主の男性が切り盛りしており、なぜか関西人のお客さんばかりが席を埋めていた。
どうも最近、酒(を欲する自分のカラダ)の調子がよくないな、とかなんとか言いながら結局楽しくなって飲んで飲んで、灯りの消えた「おいてけ堀」を横目に午前さま。

フンド氏の誕生日当日にトレランの大会を申し込んでしまったので、その埋め合わせに好物のホットドッグを買いに走る。どうやら台風もこちらに向かっているようだし、今夜は飲みたい気持ちになれない(というより誰も飲めとは言っていない)し、今夜はおとなしくしていようか、とコーヒー豆を求めて「喫茶ニャーゴ」へ。
台風は大丈夫そうですよ、がんばってきてください、と店主夫婦に励まされあわてて天気予報を見ると、確かに翌日昼間は晴れの予報。それでスタミナをつけようと焦って食べたマカ入りカレーがよくなかった。

翌日はいつもの練習会メンバーたちとコーチと、一路、山梨県は小菅村へレンタカーでにぎやかに出発。昨夜は初めて、悩みごともないのに一睡もできなかった。

お猪口1杯のハブ酒以外のアルコールは一切口にしなかったしかなり早い時間に床に入ったのに。それはマカのせいや、とコーチに言われ、どうせなら今朝食べればよかったと後悔しても時すでに遅し、ヘンな汗をだらだら流しながら、初めての「多摩川源流トレイルラン」を走った。山を走るのはとても気を張るものなのに、辛すぎて記憶がほとんどない。ただ、いただいたお水と3つめの給水所のぶどうがとんでもなく美味しくて、おもしろいきのこがいくつもあって、わさび沢と川の水がきれいで、時おり吹いてくる風が冷たくて気持ちよかったことだけは覚えている。
台風に追いつかれないうちにと、みんなでしゃぶしゃぶをこれでもか、というほど食べて飲んで、清流を見てきたからか名前に鮎がつくさわやかな店員さんをほめちぎって、全員痛む脚を引きずりながら帰宅。雨が降りだした。

2019年9月6日金曜日

ハブ酒とチャンピオン、か・ま・せ!

先週から楽しみにしていた「アフター6ジャンクション」のスタジオ生ライブをうっかり聞き逃した。
ため息をつきたくなるほどむし暑い朝であったが、Radikoタイムフリーの再生が始まったと同時に足取りが軽くなったのは、前日に入手したハブ酒のせいだけではなく、聴き逃したのがCreepy Nutsだったから。

今や日本一のMCと日本一のDJのふたり。彼らの音楽もラジオも大好きだけれど、なによりお互いのことを尊敬していてお互いのことを好きなところが好きだ。
20分強のスタジオライブ、途中でRが放つ「DJ松永、かませ!」のひとことが「チャンピオン、かませ!」に変わっていたことに、口角が上がるのを抑えられなかった。
その直後のプレイはもちろんかっこよかったし、あれほどの音で聴かせてくれた技術スタッフのスキルと愛、そしてライブはもちろん尊敬する宇多丸と話すふたりの様子も、ふたりが去ったあとに宇多丸が語った彼らの音楽の良さも、すべてが私の口角を上げ続けた。


ハブ酒は以前、友だちにもらってから好きになった。
ハブご本人は入っておらず、懸念していた匂いもまったくもってさわやかで味もくせがなく、いまいちな白ワインにプラスするとあら不思議。たちまち美味しいお酒になるのだ。
「BAR GABGAB」の常連ならば、あのふしぎに美味しい水割りのお水で水割りにしても美味しいはず。

2019年9月3日火曜日

伊勢丹でステキランチを

急逝した父上を見送ったばかりの友だちと酒を酌み交わす。
いつも元気な友だちだけれど今回ばかりはどうかな、と待ち合わせ場所へ急ぐと、彼女は早くも出来あがっていた。忙しかったのが急にヒマになったから、昼から飲んでたのよ、と笑う。
肉親の訃報を告げると、普段陽気な人でも急に神妙な顔つきになるのがイヤでたまらないからあまり報せていないのよ、と言う。よくわかる。

よく飲み歩いていた大昔からすると全員ずいぶん酒に弱くなったなぁ、あのときはごちそうになっていたのがいつの間にかワリカンできる仲になったのだなぁ、と感慨深く帰宅。
同席していた傘職人が、デッドストックの変わったパターンの傘があると教えてくれたので翌日突撃。
「しとしとぼっちゃん」の傘とはテイストがまるで違うが、70年代後半のan・anの広告で見かけたようなパターンの傘に狂喜して片っぱしから広げてゆく。今どきの傘よりスリムだけれどかなり重量があるのは、鉄の骨を使用しているから。でもなんでも軽けりゃいいってものではない。おしゃれは辛抱。
ああ、早く雨が降らないかなぁ、これでステキな洋服と出逢えたら、とずっしり重い傘を抱えて夕暮れどきの商店街を歩く。


観たかった展示にふたつ、行くことができた。
「日本の素朴絵」は友だちに奨めておきながら自分が見逃すという何度も犯した失敗をやらかすところだったけれど、奨めた友だちからとてもよかったと聞いて会期終了前日にすべりこみ。
素朴っていい言葉だけど、稚拙とは決して違う。とてもよく描きこまれた大昔の絵から、描いた人の生まじめさが伝わる。建物のパースがおかしいところが特に好きだ。入口に立っていた、いのししを抱えたハニワを見たときから、来てよかった、と思った。

翌日は楽しみにしていたプークさんの人形劇「オッペルと象」を観劇。
途中、よくわからない涙がにじんだのは自分と友だちだけではなかったようだ。
自由になったんだ、の言葉に胸が痛くなったのは自分が年を重ねたせいか。自由とはとても不自由なことだし、これまでのように仲間と仲良くやっていけるのか、などおせっかいなことを考えこんでしまった。

それから思いきって「原田治展」へ。
こちらも、このままでは行かないうちに会期終了になってしまいそうだったので、件の友だち(「MOD BAR BER」のオーナーと親しい、別のサロンの女主人)にお奨めという名の予告をしていた。

原田治といえばオサムグッズのイメージであったが、展示されている雑誌のカット等を見たら、あ、これも、これも原田治だったんだ、と驚くことしきり。昨日傘職人から仕入れたデッドストックの重い傘のパターンによく似たイラストも何点もあり、好きなものすべてがつながっている!と、うれしくなった。

それにしても、いくつもイラストのスタイルを持っている人!さらにイラストだけでなく、多才な彼はアトリエまで設計したという。
なんてステキなアトリエ!


いつもより濃いめの週末、酒場で酒もきっちり飲んだが、最近ちょっと秋の気配。
じゃなくて飽きの気配。観劇後に行った伊勢丹でのランチになにか影響されたのか。
しばらくおとなしくしていようか、河岸を変えようか。

2019年8月30日金曜日

素朴絵展と原田治展と友だちの展示と、あとなんだっけ

特にがんこなわけではないが、コーヒーなら「喫茶ニャーゴ」
新たな本を探すなら「オロロン書房」
勝負酒場なら「ニューねこ正」
(勝負ってなんだ)
傘を探すなら「しとしとぼっちゃん」
等々、決めごとがある。
どのお店も、歩いていて見つけた。
あてもなく歩く、ということをしなくなって久しい。歩かないと愉しいことは落ちていないのに。
音楽やラジオを聴きながら、あるいは長電話しながら歩くのも、景色が違って見えて面白いもの。
ブリブリでゴリゴリな曲に変わると気付けば肩で風切って歩いているし、遠く離れた友と話しているとたとえそこが駅ビルであっても、目の前に海が広がる。

久しぶりに予定のない土曜日、行きたかったところ全部に歩いて行きますか。
(まずは今晩飲みすぎないことが重要)

2019年8月26日月曜日

思春期がやってきた

山登りの帰りには、大盛り蕎麦を食べた。
私、3人前じゃなくて大盛りを頼んだんですけどって言いたくなるほどの量だった。
誰より早く完食した。


年齢ひと桁の姪たちは、すでに大人と同じ量の食事を食べる。
ある日の遅めのランチ、やつらはステーキとハンバーグを平らげていた。
普段なら選ばない、中学生男子の喜びそうなボリュームのあるメニューを選んだのは、姪たちに煽られたわけでは決してなく、朝からなにも食べていなかったから。
もちろん完食した。


別の日のランチは、餃子のおいしいまちの中華屋さん。
前日の食べすぎのため朝食は抜いたが、昼どきになるとお腹は空くのね。
禁断の昼酒も手伝って、ものすごい量の餃子が次々に胃袋に吸い込まれていく。
当然完食した。


50の声が聞こえる年になったというのに、食欲が衰えない。
最近では、酒よりも食いに走っているケがある。もちろんその結果もきっちり出ている。
以前、今が思春期なんじゃない?と誰かに言われたときにはまさか、と笑ったが、もしかして・・・
せっかく父さんと一緒に脂肪分を持って行ってあげたのに!