2019年4月18日木曜日

そば屋へ行くつもりじゃなかった

例によって深酒した翌朝、目覚めるととてもよい気分であった。
この時間なら軽く朝ジョグをキメられる。

しかし布団の中であれこれ考えているうちに、考えが変わった。
そうだ、あのおそば屋さんへ行こう。

今朝はいつもの「おはよう!商店」をやめて
朝ソバとしゃれこむのだ。


いそいそと「土俵そば」への道を急ぐ。
「土俵そば」は早朝からお店を開けており、フライト前の「はとエアライン」の機長や夜間飛行を終えた「こうもりエアライン」の機長、「はっしゃオーライ!」のタクシードライバーなどで、うす暗いうちからにぎわっている。
ハナニラやパンジー、エニシダでにぎやかな店先で店主にあいさつして、のれんをくぐる。
おそばを注文して、なぜ今朝はここにしようと思ったのかと考える。
久しぶりに行く大相撲五月場所が愉しみだからか。
先日、ジムで臥牙丸関のトレーニング姿に目を奪われたからか。
パンパンにつまったおいなりさんをながめながらおそばを食す。
おいなりさんの隣のおにぎりもはちきれんばかりに丸々としており、やはり臥牙丸関は大きかったな、と改めて思う。

いつもと少し違う道を歩く。
築100年をとうに超えた、以前からちょっと好きな建物は健在であったが、それにしてもあちこち変わったなぁときょろきょろして歩く。
通勤途中であることをうっかり忘れた、ある朝のはなし。

2019年4月11日木曜日

花見でなく、つぼみ見

毎年呼んでもらっている花見へ、今年も行くことができた。

花見というものは、時期にアタリをつけるのが難しい。
この花見も例外ではなく、かつては三分咲きだったり、花吹雪だったり、にわか雨だったり、したこともあった。

目的地が近づくにつれて、桜の花が少なくなっていく。
たしかつい先日この近辺を通ったときも、桜はこれっぽっちも咲いていなかった。
誘ってくれた友だちも心配していたっけ。
でも、桜なんて口実に過ぎない。目的は、一年ぶりにみんなに会うことと
地元の酒蔵の、新酒発表会。

その前に、ホストクラブ山の店へ。
ナンバーワンホスト・石松は、変わらずマウンティングの嵐であった。
ひとしきり遊んだあとに、今年初めての(店主さえもまだ賞味していない)山菜をいただく。きれいな緋色をまとったウドは、今まで食べたどのウドよりおいしかったなぁ。
いつも無口な店主の息子から今年から始めるというトレイル大会について話を聞くうちに、なんだか走りたくなってきた・・・気がした。

お花見はやはり「つぼみ見」であったが、久しぶりに会うみんなと豪華すぎるお料理とおいしい新酒で、気持ちよく酔った。隣に座った山男が音楽をかけてくれた。

隣の団体はご当地アイドルのオフ会だったらしく、山男はシャレで握手会の列に並びにいった。それを眺めていたら、なにやらむずむずしてきた。
アイドルといえば「R.Y.O.G.O.K.U」を唄って踊る彼らもアイドル。

カラオケではアイドルの曲しか唄わないと言っていた仕事関係のひとと別の日に10年ぶりに再会したが、おとなしく無口で五月人形のようだった彼は、ご立派になられていた。

2019年4月10日水曜日

春雷

その日を心穏やかに迎えることができてよかった。
何年たっても悲しいこの日だけれど、朝からいい予感しかなかった。


時間を決めずにふらりと行った場所にて。
もの想いに耽っていたら、後ろから声をかけられた。振り向くと、以前お世話になったひとであった。

今や傘職人のそのひとは、たいへん義理堅い。
この場所でばったり会えたことは、ありがたいことだった。
あたたかい甘茶をいただきながら、これからどうするの、と訊かれるもそこはノープラン。

ひとまず電車に乗ってかばんを開くと、旅の本と駅弁の本が入っていた。
ノープランとかいってやる気まんまんじゃないの。
離陸直前の「はとエアライン」に乗りかえて、結局いつもの場所へ。
砂浜にたくさんのさくら貝が、と思ったら、さくらの花弁であった。
途中、犬のすーちゃん(仮名)と出会って、しばし遊ぶ。
すーちゃん(仮名)を連れていたおじさんは、毎朝5時にふたりでこの浜へ散歩に来るとのこと。この日は朝、雨降りだったので、偶然ここで出会うことができたというわけ。
肌寒い日であったが、おじさんは海パン一丁になってシュノーケリングを始めた。
すーちゃん(仮名)とおじさんと別れ、魚も食べず、酒も飲まず、春のケーキも食べずに「はとエアライン」に乗り込む。
グッバイビールをキメてうとうとしているうちに雨が降りだした。


毎年この日の晩は「ニューねこ正」と決めている。
海へ行ったのに魚を食べなかったのは、ここでゆっくりしたかったから。
美人女将と話していると、雷が鳴った。
あと半分だけ、と言ったのにしっかり1本熱燗をつけてもらって、大切な一日は終わった。

2019年4月4日木曜日

三助よ、背中を流しておくれ

先日行った温泉にて、男湯にのみ、ねこの三助が来たらしい。
その三助は突然露天風呂に現れて
「ンニャ~(お背中流しましょうか)」と声をかけてきたとのこと。
丁重にお断りすると、しばらく湯気にあたってからどこかへ歩いて行ったらしい。

後に玄関で会った三助に、なぜ女湯に来なかったのだ、と不満をぶつけるも、三助は
「ンニャ~(またどうぞ)」とつれない返事。



「すべすべ温泉ねこぞの」には三助だけでなくすべすべマッサージ師もいるし、湯ぶねでちょっと一杯だってできる。
湯ぶねで飲るなら「男の酒 綱取り」がおすすめ。
個人的には、熱燗が好きだ。

むかしむかし行った温泉では、たしかビールを飲んだ。
初夏だったか。当然フンド氏は男湯、私は女湯でそれぞれ缶ビールのプルタブを開けた。
女湯でひとり缶ビールはちょっとナニであった。

2019年4月2日火曜日

おしゃれをしよう、自分のために

憂鬱の象徴でしかなかった桜が珍しく美しく見えたある夜のこと。
友が、急に語りだした。

「実は、話していて全然楽しくなかった」
「実は、少しずつ、すーっとイヤになった」
「実は、正直1ミリも尊敬できなかった」
「実は、ばかだなぁってずっと思ってた」
「実は、どうしても好きになれなかった」

付き合っているような、いないような男への、ずっと我慢していた本音。
まださよならしていないのに、すべて過去形であることから、友にその男への気持ちが無いことがわかった。

たしかに・・・
あなたには、あの男は違うと思ってた、ひどくださいし、やさしくないし、と、こちらまでうっかり本音がこぼれ落ちた。友は大きく頷いた。



いらない男のことはさっぱり忘れて、新しい洋服を見に行こう。
おしゃれは自分のためにするもの。おしゃれはスタイルだから。


なんてことを教えてくれたのは、
いつも控えめな「スナック女将」のママだったか、それとも
美と人生のプロフェッショナル「サロン・ド・こけし」のマダムだったか。



好きな洋服と好きなヘアメイク、こんなに心弾むものはないのに隣にいるのがアレじゃあねぇ、と友は歯を見せて笑った。
ちげぇねぇ ちげぇねぇ

2019年4月1日月曜日

活字中毒ではなく依存症

田辺聖子依存症になり、貪るように読んでいた時期があった。
多作な著者なのでしばらく困ることはなかったが、ついにディグの壁にぶちあたった。
女流作家が苦手だったので新規開拓が難しく、信頼する本屋さんに愚痴をこぼすと、こんなのどうでしょう、と次にお邪魔したときに用意してくれていた。
長時間の移動中、座席が狭いのも忘れるほど一気に読んだ。
用意していたワインは封も切らず、読み終わってからも同じところを繰り返し読んだ。

出てくる女たちがみんな好きなタイプだし、なにより溜飲が下がりまくった。私の悩みごとなんてこれっぽっちも話していないのに、なぜこんなにぴったりくる本を用意してくれたのだろう!

さらに、最近入手したブルーレイやCDなどが、ことごとく大当たり。
眠たいのに、いつまでも見入り聴き入る毎日。

これからは、おいしいものしか食べないしおいしい酒しか飲まないぞ、と決意した。(そんなことはどこにも書いていないし唄ってもいないが)
がまんしていた「ぺろりレストラン」のスパゲッティハンバーグだって、いずれ食べちゃうんだから。

2019年3月29日金曜日

春はきらいよ

むかしから、春は憂鬱でしかない季節。
その理由は年齢とともに変わったが、憂鬱さは度合を増している。

そんなときは
「両国のひと」を熱唱してごまかすか
それとも
「R.Y.O.G.O.K.U.」を踊って暴れてごまかすか。
もしくは
ごぶさたしている「ライブハウスねんね」に行って
深いシダの森にいるような、あのウッドベースを聴きながらしばし現実逃避してごまかすか。
どちらにしても、解決しないものはごまかすほかない。



ねまちに、しばらく行っていないなぁ。
クソみたいな毎日に、めためたになる週末。

ジェーン・スーを見習って何がクソなのか書き出してみて分析すること、星野源を見習ってクソなことを嘆くのではなくそれでも生きていくのだと考えること、このふたつをタトゥーにして心に刻んでおこう。