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2019年12月17日火曜日

今年も元禄市

友だちに連れられて、男らしい店名の立ち飲み屋からしっとりした雰囲気の立ち飲み屋へはしご酒した週末。
今年初の海老しんじょやいわし刺等の新鮮な魚とずっと誰かに聞いてほしかった黒い話題を肴に飲んで飲んで、暗闇に光る銀杏の木を眺めながら歩いて帰宅。立ち飲みのはしごは罪悪感少なめでいいかもしれない。

翌朝は「深川福々」最新号の配布のお手伝い。徒歩圏内にこんなにたくさんステキカフェがあったのか、と驚いたうちのひとつでみんなとランチした後にずっしり重いふかぷくを担いで配り歩く。ごぶさたしていた深川のみなさんは変わりなくて安心。
この日は年に一度の大好きなお祭り・元禄市が朝から行われているために両国(のほんの一部)は大にぎわい。元禄市初日のこの日はご主人の転勤で秋田からやってきた友だち夫婦と待ち合わせており、配布を終えて両国駅へと急ぐ。
秋田で「生活選手」という雑貨店を営んでいた友だちは、仕入れなどでよく上京していて問屋街に程近い両国のホテルを利用していた。ご主人にあのホテルだよ、と説明しながら、東京の地酒が飲める立ち飲みで駆けつけ一杯。秋田に遊びに行ったときは寝起きのぶちゃむくれの顔も見せていたというのに、明るいところでしらふで会うと照れる。

それから回向院でねずみ小僧のお墓を冷やかして、待ちに待った(私が)元禄市へ。
毎年楽しみにしているグリューワインは、こんなに美味しかったっけ、と毎年驚く美味しさで、初めて飲んだという夫婦も感激していた。しめしめ。
道の駅以外で買いものをする姿を見たことがなかった友だちが、光の早さで買いものをしていた。自分の大好きなお祭りで友だちが買いものをしている姿を見るのはうれしい。
さらにそのあと行った「おいてけ堀」で酔った彼女を見たのもおもしろかった。
元禄市は、毎年12月第二週の土日の2日間、討ち入りの舞台となった吉良邸跡地を中心に開催される。小さな小さな吉良邸跡地の周辺のほんの小さなエリアで、ちゃんこや元禄そば、おしるこ、ふかしいもに焼きそばなど町内会が運営するお店や、あなぐらのような近所のイタリアンレストランの供する先ほどのグリューワインにトリッパ、近隣のアパレル会社などの洋服や下着に靴、ここでしか入手できない靴下やメイクブラシにパフ、佃煮や和菓子に大相撲カレンダーも扱うお店などがひしめき、墨田区太鼓連盟の太鼓演奏に相撲甚句まで聞くことができるのだ。そのほかに駅近くの毛糸の会社でも珍しい毛糸や洋服を販売しているし、近隣の小さな会社もお店を出しているので、くまなく歩くことが必須。
祭りの準備を始める様子を横目に「深川福々」の配布に出かけ、お客さんがじわじわ増えて身動きとれない中をかきわけて友だち夫婦と落ちあい、さらっと様子を見て回った翌日にやってきた母と妹一家で何往復もして暗くなるまでお店を見て回り、いろいろなものが売り切れて店じまいをするお店が増えて、母を見送った帰りにはきれいさっぱり、祭りのあとはなくなっていた。

今年いただいたのは元禄そば、焼きそば、ちゃんこ、トリッパ、きびだんご、樽酒、グリューワイン3杯。今年入手したのは大相撲カレンダーにドレッシングと豆。買ってもらったのはステキタオル。
ふくらはぎがやけに疲労していると思ったら、ずっと歩きまわっていた上に週末から立ち飲みのお店ばかり5件も行っていたことを思い出した。

2019年12月10日火曜日

合法的な酩酊

遊びすぎてフトコロが寒い夜。
冷たい風に吹かれて通りがかった「ニューねこ正」。品書きをうらめしく見ると、しめ鯖の文字が輝いていた。呼ばれている!と迷わず暖簾をくぐった。
美人女将の目の前の席を陣取り、ますます選択肢が増えたメニューをウキウキ眺めると、しめ鯖おいしいよ、と美人女将。それ食べるつもりで来ました、と食い気味で答えると、ふぐのから揚げもあるよ、というのでそれもください!と元気よく答えた。

注文の入った焼鳥を女将が炭火の上に置くのを見て気づいた。月命日のおみやをフンド氏に持っていくのを忘れていた。

この日のしめ鯖はやっぱり大当たり。わさびはたっぷりつけた方がおいしいが、そういえば新さんはカラシで食べていた。しめまくったしめ鯖で今度試してみよう。
ほどほどに飲んで食べて、来年の手帳も自慢して、さあそろそろと腰を上げかけたら友だちがやってきた。
これは帰るわけにはいかない、と頼まれてもいないのにお銚子もう一本。
気になっていたことなど話しながら、こりゃ酔ってきたな、と思ったのでお先に失礼しようと立ち上がると、お勘定を済ませた男性と目が合った。
「おいてけ堀」でたまに会うスリムランナー青年であった。
ここでも会うなんて、とうれしくて青年をつかまえて那覇マラソンに出た話をムリヤリ聞かせる。彼は過去に那覇マラソンに数回出ているので、酔っぱらいは差し引いてもこの興奮はわかってくれたに違いない。

あとで訊いたら、彼もかなり以前から「ニューねこ正」に通っているとのこと。
何度か隣り合っていたかもしれないね、と驚く。かなりいい趣味をしているとみた。
フンド氏に手羽先のおみやをあげて、DVDを観て踊りながら弁当のおかず作りを始める。
しかしフトコロはさみしいし冷蔵庫もさみしい。
と思ったら、幼なじみにもらった伊勢みやげと先日友だちの家に遊びに行ったときに持たせてもらったお料理があった。おかずをつくっては飲み、つまんでは飲み、合間に歌って踊ってやっぱり酩酊。

2019年11月26日火曜日

ONCE AGAINをONCE AGAIN

リキッドルームといえば新宿だったが、今は恵比寿。
香月といえば恵比寿だったが、今は六本木。
47都道府県ツアー39箇所めの東京公演で宇多丸さんがそう言ってDさんから古いよ、いつの話だよ、と言われていたが実は私もまったく古かった。
以前は職場も家も恵比寿でリキッドルームは新宿だったし、香月は仕事で遅くなったときに先輩とよく行ったものだ。この日はRHYMESTERが東京へライブしにやってきた(帰ってきた)ので、午前中姪っ子とマラソン大会で走ったあとに急いで向かった。
今回は東京ということもあり、歓声がいつもよりものすごく大きかった。
1曲めからKOHEI JAPANが出てきたときは驚いたが、この日は怒濤の豪華ゲストで特にもう、ジブさんやキエるマキュウが出てきたときには興奮のるつぼ。私的にはBOY KENが出てきた「隣の芝生にホールインワン」がたまらなかった。リリックはアレだけど、あの声が忘れられない。

汗を滝のように流し、涙をボタボタ流し、体感時間20分ほどで夢のような時間は終わった。追い出しの「マクガフィン」は自然に口ずさめるほど覚えた。

帰宅後、今までにない疲れを感じて、でも興奮で眠れず、ワインに口をつけては部屋をうろうろ。
どんなに楽しいことが続いても、こんなことはなかった。
翌日は大寝坊、仕事はなんとか終えたが心ここにあらず。
帰りに飲みに寄った「おいてけ掘」でようやく正気を取り戻した。

2019年11月14日木曜日

さらに マクガフィン

寝ても寝ても眠くてたまらない。
お久しぶりねの「おいてけ堀」でそう話すと、秋だからとちがう?と友だちに言われた。
どんなに早く床についても朝はぎりぎりまで起きられず、お昼前にこっくりこっくりしてお昼後にもこっくりこっくり。
どんなに早く床についても早朝ジョグをキメることができず、さらに早朝そばをキメることもできずにいる。


いつも絵や美術館の話しをする酒友だちが貸してくれた本が重い内容なのになんともいえずおもしろかったので、その本の話を肴にまたもや飲みすぎた。国家の陰謀ではないか、という結論に落ち着いた。
勧められた本を読むのは新鮮だし、勧めてくれた酒友だちのことがわかる気がしておもしろい。
最近読んでいる長編は佳境に入っているのになかなか進まずもどかしい思いでいたら、やっと新しいフェーズに入った。続きが気になって、寝坊したくせに今朝ちょっとだけよ、とベランダで本を開いた。ついにやってしまったか・・・これからどうするんだ平三(主人公)よ、と落ち着かない気持ちで弁当をつめる。


宇宙初オンエアの新曲を聴き終えたあと、あまりのカッコよさに思わず立ち上がった夜。
こんなカッコいい曲を作ってしまったの!と興奮していてもたってもいられなくなったが配信は再来週。これを爆音で聴きながら走りたいな、と思ったが、まずは早起きをしなければ叶わないこと。

2019年9月10日火曜日

いつもと少し違う日

いつもと違う時間にいつもと少し違う道を歩いていたら、見知った顔が横断歩道の向こうからやってきた。
誰だっけ、と考える間もなく、そのひとは頭を下げてこちらにやってくる。
「メンキー&ノンキー」の店主だった。
まだ幼い男の子をだっこして、なにか言いたげにやってくる。



「おいてけ堀」こないだ行きました、すごくよかったですよ、とぼそっとつぶやいて店主は去って行った。彼にだっこされた幼い男の子は不思議そうにこちらを見ていた。
そうだ、「ニューねこ正」で隣り合ったおじさんと「メンキー&ノンキー」の店主の話になって、そのことを店主に伝えたら彼もそこへたまに行くという話からなぜか「おいてけ堀」の話になったのだった。
そうですか、行かれたんですね、あのお店もおいしかったでしょう、と彼の背中に声をかけた。

いつもと違う時間にいつもと少し違う道を歩くと、いつもと違ういつもの人に会うものなのだなぁ、と感心した。
こんな日は、ついでにいつもと違うお昼にしたい。それで久しぶりに「ぺろりレストラン」へ。
なるべく薄い味のハンバーグをカラダが欲しており、ここのスパゲッティハンバーグを思い出したのだ。
サンドイッチもたいへんおいしいのだが、ここ最近弱っている私の胃には一日かけても食べきれないボリュームである。(しばらく肉続きなのはどうなのか、という疑問については考えないこととする)
その日初めての食事であったスパゲッティハンバーグのおかげで夜になっても空腹になることはなく、飲酒する気も失せて早々に寝たおかげか、夢を見た。
待ち合わせ場所にいたフンド氏は以前と変わらなかったが、誕生日にホットドッグを食べたかどうか聞くのを忘れた。

2019年9月9日月曜日

調子わるくてあたりまえ

どうも最近、酒(を欲する自分のカラダ)の調子がよくないな、と首を傾げながら赤ちょうちんを通りすぎようとしたら、おあつらえむきにひとつ、カウンターの席が空いているのが見えた。うっかり吸いこまれてしまうのは、習慣としか言いようがない。
隣には、お久しぶりねのプロ雀士。
今日はね、食べるものなにも頼んでないんだよ、と力なく笑うので、もともと食欲がないと訊いてはいたけれど、それにしても食べなくて大丈夫ですか、と尋ねると、プロ雀士は大きくためいきをついて、夕方うどんを大盛りで食べたからね、とつぶやいた。
うどんがさ、固すぎて腹がふくれちゃってさ、とぼやくプロ雀士に「土俵そば」を教えてあげればよかった、と考えていると、これから二軒めに行くんだけど、もしイヤじゃなかったら行くかい、とお誘いを受けた。
「おいてけ堀」に来るお客さんからもその名前をよく聞くそのスナックは鳥の名前で、誰もが「ちゃん」付けで呼ぶ。今夜は空いてるな、とひとりごちてプロ雀士が店のドアを開けると、ステキなエプロンをつけた大ママと常連さんが大歓迎。プロ雀士はここでも人気者のようだ。
店は大ママとママ、そしてその息子であるものすごい筋肉の持ち主の男性が切り盛りしており、なぜか関西人のお客さんばかりが席を埋めていた。
どうも最近、酒(を欲する自分のカラダ)の調子がよくないな、とかなんとか言いながら結局楽しくなって飲んで飲んで、灯りの消えた「おいてけ堀」を横目に午前さま。

フンド氏の誕生日当日にトレランの大会を申し込んでしまったので、その埋め合わせに好物のホットドッグを買いに走る。どうやら台風もこちらに向かっているようだし、今夜は飲みたい気持ちになれない(というより誰も飲めとは言っていない)し、今夜はおとなしくしていようか、とコーヒー豆を求めて「喫茶ニャーゴ」へ。
台風は大丈夫そうですよ、がんばってきてください、と店主夫婦に励まされあわてて天気予報を見ると、確かに翌日昼間は晴れの予報。それでスタミナをつけようと焦って食べたマカ入りカレーがよくなかった。

翌日はいつもの練習会メンバーたちとコーチと、一路、山梨県は小菅村へレンタカーでにぎやかに出発。昨夜は初めて、悩みごともないのに一睡もできなかった。

お猪口1杯のハブ酒以外のアルコールは一切口にしなかったしかなり早い時間に床に入ったのに。それはマカのせいや、とコーチに言われ、どうせなら今朝食べればよかったと後悔しても時すでに遅し、ヘンな汗をだらだら流しながら、初めての「多摩川源流トレイルラン」を走った。山を走るのはとても気を張るものなのに、辛すぎて記憶がほとんどない。ただ、いただいたお水と3つめの給水所のぶどうがとんでもなく美味しくて、おもしろいきのこがいくつもあって、わさび沢と川の水がきれいで、時おり吹いてくる風が冷たくて気持ちよかったことだけは覚えている。
台風に追いつかれないうちにと、みんなでしゃぶしゃぶをこれでもか、というほど食べて飲んで、清流を見てきたからか名前に鮎がつくさわやかな店員さんをほめちぎって、全員痛む脚を引きずりながら帰宅。雨が降りだした。

2019年8月8日木曜日

どこかで祝っていて

旅の翌日、友の庭で採れた野菜を使って友に教わった料理をつくった。
飲み歩いてばかりの身としては、数多い料理上手の友だちの生活を目にするたびに猛省。もっと早く目覚めていれば、と何度思ったことか。
この気持ちが消えないうちにと、帰宅するやいなや出汁をとったりアレしたりコレしたり。
「レストラン両国駅」か資生堂パーラーか、ってくらい完璧なオムライスにも、いずれ腰を据えて挑戦しよう。
おみやげにもらった純米吟醸を啜りながら没頭していると、玄関のベルが鳴った。
届いたのは、まったく同じ箱ふたつ。
自分で注文したTシャツと、誕生日プレゼントのTシャツ。中身もまったく同じ。届いた日も同じ。まさかのバッティング!でも2倍うれしい。
アラフィフなのに、Creepy nutsのTシャツなんてどうなのよ、と何度も買うのをためらったこのTシャツ、さっそく誕生日の朝に着て出かけた。
とはいえ、前の晩には誕生日のことなどすっかり忘れて「おいてけ堀」へ旅のおみやげを提げて参上、いつもより濃いホッピーにあっという間に酔っぱらって、前後左右不覚のまま帰宅。誕生日がこんなにどうでもよくなる日がくるとは思わなかった。
8月8日はボキの誕生日でもあり、結婚記念日でもあることまで忘れているんじゃなかろうね、と酔ってどこからか採ってきたえのころぐさの向こうでぼっちゃんがうらめしい顔をしていた。

2019年8月2日金曜日

すべて夏のせい

お世話になっている方に、ビアガーデンへ連れていってもらった。
ビアガーデンといえば灼熱のデパート屋上のイメージしかなかったが、そこは涼しい風が通る屋上庭園。ほどよい広さでにぎやかだけれどうるさくなく、おつまみもおいしかった。
少し酔ってから思いきって飲んだ「カレービール」は、キワモノではなくクセになる味。
お世話になっているその方との久しぶりの再会も愉しく、あとで送ってもらった写真を見たらとても遠くの場所に行っていたような気がした。

これからもう一軒行くんでしょう?と言われたが、いえいえ今夜は帰りますよ、とお別れするも、いつものひとからお呼び出し。今夜もビールしか飲んでないぞ、と前日も行った「おいてけ堀」へ急ぐ。
ひどく暑いからか、最近酔いがまわるのが早い。
前日もこのお店で相当酔ったし今夜はおとなしくしていよう、と決心したが、縄のれんをかきわけた先にいたいつものひとの顔をみて破顔一笑。さらにその3つ隣の席には、たまに顔を合わせるランナー青年。話したいことがたくさんある。おとなしくなどできるわけもなく、わいわい飲み始めた。
「おいてけ堀」の大将とママは昔、大きな洋館のレストランの広い庭でのビアガーデンに行ったという。想像してみたらあまりにすてきなので、みんなでため息をついた。


今週半分は、お弁当作りをさぼった。
やる気のないとき無理につくったお弁当はおいしくないので、やる気になるまで待とう。
弁当箱の入った袋を見て、何が入っているの、と訊かれ、愛妻弁当だよと答えたら、え、彼氏?というので愛妻だよ、と言うと、え、女と付き合っているの、と言われたので面倒になって、そんなところかな、と答えたことがあった。
あんまり暑いと、何もかも投げやりになってしまう。

2019年7月11日木曜日

ほおずきの香り 紳士のはじまり

あさがお市もほおずき市も終わった。

ほおずきが残り少なくなった夕暮れの浅草寺は、打ち水とほおずきの青臭いにおいで、なんともしんみりした気分になる。
しんみりするとロクなことはない。あわてて酒場へ急ぐ。

こんな夜は「ニューねこ正」ではなく
「おいてけ堀」でぼぅっとするのが気分だ。
フンド氏のお父さまが行きつけだったこのお店は、入口近くのカウンター席が好きだ。
にぎやかだけれどうるさくなく、ちょうどいいお店。



たまには誰とも話さず、スマホも見ずに、ぼんやり飲みたいものだ。
やらねばいけないあれやこれや、憂鬱なあれやこれやをとりとめもなく考えたり、本を読んだり、まわりを見まわしたり。
ふと気づくと、カウンターの離れた席で若者がひとり酒を飲んでいた。
チェックのジャケットが涼しげで、なによりひとりを愉しんでいる様子が好もしい。
ご近所さんが、お勘定時に美人女将に軽口を叩いているのを見て微笑んでいる様子に、私の考える「紳士」の片鱗を見た。

1.美味しい肴があり愉しいお酒が飲める、そんなお店をいくつか知っている。
2.常連ぶったり、お店のひとにタメ口をきくようなことはしない。
3.大勢で行くとき以外、安いだけのお店には行かない。
4.決して最後の客にはならない。

フンド氏から見てとった、私なりの紳士像。私は、今のところ4があやしいかな。



・・・というより、たまにはジムに行こうぜ自分。

2019年7月4日木曜日

ひとりでもふたりのように

少し遅い時間に「ニューねこ正」ののれんをくぐると、いつもの席のひとつ向こうに会いたかった彼女。
いつもの席に腰を下ろすなり美人女将は、鼻がきいたね、と笑った。

少し遅い時間だったせいか、お店の空気がほぐれていた。
自分の好みがしっかりしている、スタイルのある彼女と話すのは楽しい。落語には一家言ある彼女とは、いつか落語会にご一緒したいと思っている。

「最後の客にだけはなるなよ」とフンド氏にきつく言われていたのに、この日は最後の客になってしまった。腰を上げようとすると、美人女将がすいかを2皿差しだした。毎夏の愉しみ・富里のすいかだ。鼻がきいたとは、このことでもあったのか。


別の日、やはり少し遅い時間に「おいてけ堀」の縄のれんをかきわけると、一番好きな席にはいつものようにプロ雀士。今夜はプロ雀士とのんびり話そう、とカウンターへ向かうと、手前のにぎやかな大テーブルから手を振る、会いたかった人。
失礼します、と大テーブルに相席させてもらうと、他のみなさんは、全員ここで出会った関西人とのこと。私も以前大阪に住んでいました、と言うと、じゃあみんな関西人やな、と乾杯。
会いたかった人がいつも以上に巻き舌で饒舌なのは、ご一緒しているみなさんが今どきめずらしいほど人情に厚いやさしい人たちだったからだろう。

雨が降り始めた中、一同なぜかタクシーに乗り込む。
今日知り合ったばかりの、トウの立った若輩者まで連れて「スナック女将」によく似たスナックへ。
「スナック女将」と違うのは、男前で歌の上手いおとうさんがいるところ。
みなさんに促されておとうさんが歌った曲を私は知らなかったが、とてもいい喉をしていらした。
店には若いサラリーマンたちとひとり客がちらほら、聞くと全員関西人であり、そして領収書を切る人は皆無であった。

思いがけず愉しい夜。
また会いたい人が増えたと思うと、酒場ののれんをくぐるのも、わくわくする。

2019年6月24日月曜日

キャンプだホイホイホイ

キャンプというものをしたことがなかった。
飯盒炊さんなら経験はあったが、集団行動が苦手なインドア派。
思春期のころからそういうときに積極的に手を出す・働くのが照れくさく、一周まわってなにもしないというのが身について、キャンプなんてリア充のするこった、と遠ざかっていた。

しかし

キャンプとキャンプ料理のプロ(ディレクター=D)におんぶ&だっこのキャンプ in 河口湖は、最高だった。


週末は雨予報だったにも関わらず、まったく降られなくて(仲間に聞いたら、どうやら私以外は晴れ男女)山々や船を眺めながら、ぺちゃくちゃ喋りながら、きょろきょろしながらのランは心から気持ちよかった。
テーマが「ゆるラン」だったのでさほど走っていないが、ランのあとの温泉も気持ちよかった。

Dが数日前から仕込んでくれた燻製はDが担当し、あとはDの指示でおもしろいごちそうができ上がってゆく。桜のチップの燻される匂いは、思ったより主張の激しい、でもクセになる匂い。

私が担当になった餃子ピザは、とても簡単な上にすぐ食べられるので、自分のレシピにこっそり頂戴しよう。Dや仲間たちの焼いた肉など、実は高価な食材ではないそうだけれど、とても味わい深くてしっかりと噛みしめた。

ふと気づけば、包丁を使ったり調味液をつくったり、食べるものは食べ、飲むものは飲み、とてもリラックスしていた。ついに来たか、リア充のときが。
飲み疲れた仲間たちが先に寝て、明日の朝食の準備も終わり、さてこれからどうするのか、とDに尋ねると、薪を燃やすんだよ、と事もなげに言う。
燃やす?ただ燃やすの?と聞くと、そうだよ、燃やすんだよ、と禅問答。
男性は、火と棒が好きだっていうからねぇ、というとDともうひとりは不思議そうな顔。

きっと炎を見つめながら内緒話なぞするのだろう、と考えるも、ただ炎を見つめてワインをすする中年三人。炎に夢中になる。なんだこれ。クセになりそう。


翌朝もまさにラン日和。
朝食前に軽く行ってみよう、と、湖に浮かぶ六角堂を見に行ったり、願いが叶うという鐘を鳴らして鳴らしたあとに願いごと何にしよう、とあわてたり、ラベンダーやバラの香りを胸いっぱい嗅いだりして気持ちよく走った。


¥100で1分半利用できるシャワーでもたついて泡を残したまま立ちつくしたり、おいしすぎておかわりした朝食の片づけを終えて、慌ただしくコテージを後にする。
いいところあるよ、とD主導で行った神社がとてもおごそかで、樹木信仰という言葉の意味が少しだけ理解できた気がした。
そういえば、河口湖にいながら富士山の存在を完全に忘れていた。
看板につられてその先の山中の滝へ。
すがすがしいってこのことだね、と言いながら山道を下り、滝に沿って木製の階段を上がり、気付けば山道を走る中年たち。次回のキャンプ、2日目はトレラン練習でここに来よう、と早くも次のプランも決定。

帰りに地元のとうもろこし・甘々娘(かんかんむすめ)を手に思案していると、夏になったら今度はここにメグミが並ぶよ、俺がつくってるんだメグミ、とごま塩ヒゲのおじいさんが言う。あの、そのメグミってとうもろこしのことですか、と尋ねると、甘いぞぅ、トンネルの向こうの畑で作ってるからよ、と立て板に水の勢いで話してバイクで去って行った。


その晩は、カラダが自然にかわいこちゃんのいるお店へ。
こんばんは、と縄のれんをかきわけると、大将とたまに会う常連さんが笑っていた。ちょうどさっきまで噂していたんですよ、と言う。かわいこちゃんはまだ出勤していなかった。
話をするうちに、日本酒からなぜかうどんの話になり、長崎港のうどんを思い出した。
九州出身のその常連さんは、桜島からのフェリーの中で食べたうどんが最もおいしかったという。ああ、そういう話、大好物なんだよなぁと酒が進む。だって港だし、船だし、うどんだし。さらに、スポーツマンで話し好きな大将が実は人見知りで絵が好きな少年だったと聞いて、驚きのあまりまた酒が進む。

キャンプ効果なのか、肝臓まで回復していることに気付いた。

愉しく飲んで帰宅する途中、携帯電話が鳴った。大将からだ。
いま、たった今帰ってきました、ごめんなさい遅くなって、と弾む声で大将は、かわいこちゃんの出勤が遅れたことを詫びた。