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2019年9月26日木曜日

秋の収穫祭とマフィアカ―

初めてウインナコーヒーを覚えたのは「喫茶ニャーゴ」。
カウンターには小さな線路が敷かれており、注文したものがトロッコに乗って運ばれてくる。
白いシャツとベストを着た背の高いマスターと、髪を高々と結った年配のウェイトレスがいる。広くてうす暗い店内で味わったそれは、信じられないほどおいしかった。
別の日には、アーモンドコーヒーというものも飲んだ。
コーヒーの匂いのしみついた壁とアーモンドの香りに、子どもながら酔ったような気分になったものだ。

コーヒー豆ならここのものと決めている。
それは、年に一度たのしいイベントをおこなう「SUNSHINE STATE ESPRESSO」。

そのたのしいイベント「秋の収穫祭」に、今年はマッチ売りの中年が参加します。
マッチ売りが久しぶりすぎて緊張が高まっている。
しかも、その前に締切が迫っているモノがあるのに手つかずだ。

マラソン大会も迫っているのにひとりではやる気が起きないので、誰かに誘ってもらったら練習に参加するようにしている。
先日は12月におこなわれる那覇マラソンのクリニックなるものに誘われて参加。
いつもの練習会とは違う練習もおもしろかったし、コーチが目の醒めるようなイケメンだったので景色もばつぐん。少し無茶しつつ楽しくクリニックを終えて友だちと別れランステに戻る途中、近道をしたつもりが元の場所に戻っていたことに背筋が寒くなった。


先日会ったイタリアンマフィアのクルマは、ナントカいう名前のクラシックなクルマだった。
シックなオリーブグリーンの車体のそのクルマ、なんと助手席のドアが外からしか開けることができないらしい。ということは、お気に入りの女性を助手席に乗せたら、彼がいちいち外からドアを開けにいくか、もしくはそのままあのステキなマフィア邸に・・・

なんという悪いマフィア!
「はっしゃオーライ!」のクリスマスタクシーには、そんな色っぽい仕掛けはありませんのでご安心を。

2019年9月9日月曜日

調子わるくてあたりまえ

どうも最近、酒(を欲する自分のカラダ)の調子がよくないな、と首を傾げながら赤ちょうちんを通りすぎようとしたら、おあつらえむきにひとつ、カウンターの席が空いているのが見えた。うっかり吸いこまれてしまうのは、習慣としか言いようがない。
隣には、お久しぶりねのプロ雀士。
今日はね、食べるものなにも頼んでないんだよ、と力なく笑うので、もともと食欲がないと訊いてはいたけれど、それにしても食べなくて大丈夫ですか、と尋ねると、プロ雀士は大きくためいきをついて、夕方うどんを大盛りで食べたからね、とつぶやいた。
うどんがさ、固すぎて腹がふくれちゃってさ、とぼやくプロ雀士に「土俵そば」を教えてあげればよかった、と考えていると、これから二軒めに行くんだけど、もしイヤじゃなかったら行くかい、とお誘いを受けた。
「おいてけ堀」に来るお客さんからもその名前をよく聞くそのスナックは鳥の名前で、誰もが「ちゃん」付けで呼ぶ。今夜は空いてるな、とひとりごちてプロ雀士が店のドアを開けると、ステキなエプロンをつけた大ママと常連さんが大歓迎。プロ雀士はここでも人気者のようだ。
店は大ママとママ、そしてその息子であるものすごい筋肉の持ち主の男性が切り盛りしており、なぜか関西人のお客さんばかりが席を埋めていた。
どうも最近、酒(を欲する自分のカラダ)の調子がよくないな、とかなんとか言いながら結局楽しくなって飲んで飲んで、灯りの消えた「おいてけ堀」を横目に午前さま。

フンド氏の誕生日当日にトレランの大会を申し込んでしまったので、その埋め合わせに好物のホットドッグを買いに走る。どうやら台風もこちらに向かっているようだし、今夜は飲みたい気持ちになれない(というより誰も飲めとは言っていない)し、今夜はおとなしくしていようか、とコーヒー豆を求めて「喫茶ニャーゴ」へ。
台風は大丈夫そうですよ、がんばってきてください、と店主夫婦に励まされあわてて天気予報を見ると、確かに翌日昼間は晴れの予報。それでスタミナをつけようと焦って食べたマカ入りカレーがよくなかった。

翌日はいつもの練習会メンバーたちとコーチと、一路、山梨県は小菅村へレンタカーでにぎやかに出発。昨夜は初めて、悩みごともないのに一睡もできなかった。

お猪口1杯のハブ酒以外のアルコールは一切口にしなかったしかなり早い時間に床に入ったのに。それはマカのせいや、とコーチに言われ、どうせなら今朝食べればよかったと後悔しても時すでに遅し、ヘンな汗をだらだら流しながら、初めての「多摩川源流トレイルラン」を走った。山を走るのはとても気を張るものなのに、辛すぎて記憶がほとんどない。ただ、いただいたお水と3つめの給水所のぶどうがとんでもなく美味しくて、おもしろいきのこがいくつもあって、わさび沢と川の水がきれいで、時おり吹いてくる風が冷たくて気持ちよかったことだけは覚えている。
台風に追いつかれないうちにと、みんなでしゃぶしゃぶをこれでもか、というほど食べて飲んで、清流を見てきたからか名前に鮎がつくさわやかな店員さんをほめちぎって、全員痛む脚を引きずりながら帰宅。雨が降りだした。

2019年8月30日金曜日

素朴絵展と原田治展と友だちの展示と、あとなんだっけ

特にがんこなわけではないが、コーヒーなら「喫茶ニャーゴ」
新たな本を探すなら「オロロン書房」
勝負酒場なら「ニューねこ正」
(勝負ってなんだ)
傘を探すなら「しとしとぼっちゃん」
等々、決めごとがある。
どのお店も、歩いていて見つけた。
あてもなく歩く、ということをしなくなって久しい。歩かないと愉しいことは落ちていないのに。
音楽やラジオを聴きながら、あるいは長電話しながら歩くのも、景色が違って見えて面白いもの。
ブリブリでゴリゴリな曲に変わると気付けば肩で風切って歩いているし、遠く離れた友と話しているとたとえそこが駅ビルであっても、目の前に海が広がる。

久しぶりに予定のない土曜日、行きたかったところ全部に歩いて行きますか。
(まずは今晩飲みすぎないことが重要)

2019年7月17日水曜日

筋肉痛はいつくるの

ある晩帰宅すると、家中が覚えのない香りでいっぱいだった。
秘密の会合で肉を食べに食べて食べ倒してきたあとだったが、全身についた肉のにおいが負けるほど色気のある香り。こんな香りのもの持っていたっけ、と香りのもとを探すと、それはよく熟れたすももと友だちからもらったシナモンだった。


夕方18時に横浜を出発、夜通し走って箱根湯本に翌朝ゴールする、というイベントに参加した。
「しとしとぼっちゃん」の傘なんてあってもじゃまなほどの、豪雨の中を走った。
どうかしてる、と気付いたのはすべて終わって帰宅し、洗濯機を回しているときだった。

本当はゴールしたら即帰りたかったが、くさいのを通り越して最&高にくさくなったこのカラダで始発電車に乗るわけにはいかず、みんなで温泉へ。
昨年は日焼けを気にしながら入ったこの露天風呂、今年は霧雨を浴びながら気持ちよく浸かり、ともに走った仲間たちと痣を見せ合って労をねぎらった。

午前中の電車の中で飲んだビールはじっくりおいしくて、当然眠気を誘うものだった。今が何時なのかここはどこなのか、話していないと脳が溶けだしそうで、とにかくよくしゃべった。筋肉痛はまだ、なかった。



帰宅したらいい香りがした夜の、秘密の会合のこと。
年齢も仕事も立場もいろいろ違う異色のメンツが、近況報告をしながらステーキを次々に平らげる。デザートを食べる段になって話が盛りあがり、あと一軒、あと20分だけ行こう、と夜の喫茶店へ。
こんな時間にコーヒーを飲むことは珍しいが、正直者の集まりなので酔って適当に話すのもナニだ。言葉を選ばず、思ったことをシンプルに伝え合うのは気持ちがよい。


要するに
自分が大切にしていることに土足で踏み込まれると、いくら温和な我々でも怒るよね、という結論に達し、さわやかにお別れした。


そういえば
夜通し60㎞走ってゴールした翌日も練習会で走った。どうかしてる。
筋肉痛はまだ来ない。

2019年5月27日月曜日

やじうま3 やじ犬1

怒濤の土曜日を越えて、待ちに待った予定のない日曜日。


ジムに行ったら、その晩行こうと思っていた酒場の大将にばったり。
ではまた、とマシンに向かうと、激しくトレーニングしている元お隣さんを発見。
和ものが好きなアメリカ人教師・P。ブロークンなイングリッシュを駆使して、再会を喜ぶ。


この日の両国は、例のアレで一日ヘリの音でうるさかった。
「あちら」へ行くときっとえらいこっちゃだろうと、わざと遠まわりしてコーヒー屋さんへ。
それなのに「こちら」がわも、見たこともない人数の警察官。
「こちら」でこんなだったら、「あちら」はいったいどうなっていたのだろう。
ようやくたどりついた「喫茶ニャーゴ」のまわりも、物々しい空気。
いつも絶対に目を合わせない犬も
この日はなぜか両脇に警察官をはべらせて、いつも以上に目を合わせようとしない。

コーヒー豆を挽いてもらいながら店主とぶつくさ文句を言っていたら、ひさしぶりに会う、店舗を持たない古書店の店主がやってきた。
ぼくの家は高速道路出入り口のすぐそばなので、そろそろかなとやじうまがてらコーヒーを買いにきまして、と古書店主は笑った。
ぶつくさ文句を言っていたコーヒー屋さんの店主も、実は・・・とカメラを持ち出した。

帰り道、警察官に抗議??して動こうとしなかった車はそのままであったが、道路を封鎖していたフェンス等の撤去が始まり、張りつめていた空気がふっとゆるんだ気がした。

ジムでばったり会った店主の酒場へ顔を出すと、おさわりNGのかわいこちゃん(ねこ)が出勤していた。今夜はおさわりできないのか、と少し落胆して飲み始めた。
隣り合わせたひととラジオの話で意気投合し、共通の話題であるランよりも盛りあがる。
いやぁ実は今日、「あちら」へ行ってからここに来たんですよ、と唐突にそのひと。
もしや、と思ったら、このひともやじうまであった。

2019年4月23日火曜日

春のおべんとう

春のおべんとうは、外で食べるのがよい。
もっというと、水が見える場所なら言うことはない。川とか海、湖、池とかね。
川を眺めて春のおべんとうを食べていたら、思い出した。

むかしむかし、森の中の大きな池のほとりでおべんとうを食べていたときのこと。
その池は木々の緑と水の青が混ざった、なんとも深い紺色でとろりと静かだった。
吸いこまれるようなその水面をみつめながら口を動かしていると、池にかすかな波紋が広がった。
見たこともない大きなかえるが泳いでいた。
少し離れた水面がすうっと動いた。大きな魚の姿が現れた。
透きとおった池を両者が並んで泳いでいたさまと、食べていたおべんとうのことは、忘れるはずがない。


離れた場所にあるギャラリーを教えてもらって行く気になったのは、以前住んでいたまちに近い場所だったから。
電車を乗り継いで、わざとひとつ手前の駅で降りて歩く。

20年ほど前に住んでいたその家は、当時から古かった。
もう取り壊されているだろう、と寂しい気持ちで見に行くと、なんとまだ健在であった。
またここに住むのもいいな、とちらりと考えるも、既にどなたかが住んでおられるようだった。
教えてもらったギャラリーは、以前よく行っていたアンティーク屋さんだった。
珍しくぶらぶらしたくなり、本屋さんをはしごしたり通りかかったギャラリーに立ち寄ったりして、なんとなく気になった喫茶店に入った。
お店のドアを開けたら好きな曲がかかっていた。
店主は声のよく通るおじいさんで、ていねいに淹れてくれたコーヒーはとてもおいしくていい気分でお店を見まわすと、メニューも実に好ましかった。

最近あてもなくぶらぶらするなんてこと、なくなったよねぇと友だちと話していた舌の根も乾かぬうちになつかしいまちをぶらぶらしたその晩は、やっぱりいつものお店で一杯。
その席に座っていてくれると安心しますよ、と店主に言われて、調子に乗って根が生えるほど飲んでしまった。途中、おさわりOKのかわいこちゃん(ねこ)を思うぞんぶん撫でくりまわして、ねこの充電も完了。
帰り道、おさわりOKのかわいこちゃんをいじめるけしからんねこ(店主談)と遭遇したので、あんた、いじめはやめときなさいよ、と僭越ながら進言。けしからんねこは、なんだこのよっぱらい、と怪訝な顔でこちらを見て去って行った。
この日の戦利品のひとつ、すてきな包み紙のお店のドレッシングの封を切って明日のおべんとうのおかずを、もくもくとつくる。
休日以外もどこか水の見える場所でおべんとうを広げようかな、と、もくもくとつくる。

2019年3月25日月曜日

ねこにやさしく

うっかりしていたら、三月場所が終わっていた。
今場所は、TVで一瞬目にしただけだった。
「深川福々」の会議で三月場所の話題になったときにも、まだ初場所が終わったばかりなのになぁ、などとスットコドッコイなことを考えていた。


その「深川福々」は、先週発行された。
今回は「ふかがワンダーランド」の記事を書いた。
・・・まずは体幹を鍛えないとね、というのが、取材直後の感想であった。
温故知新コーナーでは、あの辺の方なら誰もが知っているあの方のマル秘写真が!
大江戸線 清澄白河駅などでお手にとってみてください。


体幹については、先日コーヒー豆を買いにいったときにも話題になった。
コーヒー屋さんは、私が以前出たことのあるマラソン大会にご夫婦で出られるとか。
病み上がりの奥さまはしきりに不安がっておられたが、とにかくいい大会だから楽しんできて、と伝えた。そして体幹鍛えましょうと誓い合った。

病気を克服してから味覚が鋭くなったのか、奥さまは市販のルウでつくるカレーを受け付けなくなったという。
オムライスとえびフライの名店なら、教えてあげられたのになぁ。



ごぶさたしていた、義理の両親のお墓参りに行った。
自宅近所のお花屋さんでスイートピーの花束をつくってもらったので、道中ずっといい香りが漂っていた。
お隣さん(お墓の)とこの大木が伐採されており、切りかぶの形の複雑さにしばし見入る。すみれが咲いていた。


とある休日、今夜はここに行くと朝から決めていたお店へ。
隣り合ったひとと、しばしねこ談義。
彼女の写真を見せるようにいそいそと、まだ3歳のかわいこちゃんの写真を見せてくれたそのひとと話しながら、先代のアヨちゃんやぼっちゃんのことを思い出した。
ねこにやさしいひとと話すと安心するなぁ、と気づけば酔いが回っていた。

2019年1月28日月曜日

「食のお座敷ブックマルシェ」始まりました

「食のお座敷ブックマルシェ」
2019年1月27日(日)~2月23日(土)
12:00~18:00(最終日~17:00)
※火曜水曜定休
※2/11~2/20臨時休業
墨田区向島3-6-5 一軒家カフェikkA2F 甘夏書店


4年前に初めて出した本気、今年は既に2回出しました。
2019年は、ハナからオラついてます。


今回は、おべんとうノート3種類。
包みを開けると、おべんとうがあらわれます。
中身は「甘夏書店」さんでご覧になってください。
たった3冊しかないけれど。
裏にはだじゃれ風サインを入れてみました。
思いつきです思いつき。

おべんとうノートとは、宴会・仕出しからお花見弁当で人気の「ぺろりべんとう」さん考案のノート。

おいしかったお弁当の内容や食べた場所を描いたり、旅先で食べたお弁当の包み紙や箸袋を貼ったりして、すてきなアルバムをつくろうって魂胆です。
古書店さんが持ち寄った「食」がらみの本も相当気になるので、早く行きたくてたまらない。


4年前、義兄からの(無茶な)誘いで本気を出してからこのかた、くらげのようにのらりくらりと生きてきた。
義兄はすごいな、友だちみんなえらいな、それにくらべて・・・と考えたり考えなかったり。でも、やればできるじゃん自分、とうれしくなった。
ありがたいことです。


ありがたいといえば
ここのところ海に連れていってもらったり、自分から行ったりもしていて
ほんとうはマラソン大会もあったのだけれど、いっぺんにふたつのことをできないのと体調がよくなかったのとで、走るのは断念。
そのおかげで、おべんとうに集中できた。


走らないと決めたので、すでにとってあったホテルを拠点に、とにかく海を見ようと決めていた。
夕日が溶けるように落ちるのを見届けてから、ねらっていたお店へ。
やけにぎらぎらした大将がくれた昆布のメメってのが、いい香りでおいしかった。
明日は雪が降るらしいよ、と聞いてはしゃいでいた店の女の子には残念であったが、翌日は快晴。

地元のボランティアのみなさんと、おもしろいコスプレのランナーを見つけては笑い合って、道行くひとを片っぱしから応援。知らないひとばかりなのに、なぜあんなに楽しかったのか。
寒さに耐えきれなくなるまで海を見て、コーヒー屋さんへ。
朝はマラソン会場でここのコーヒーをいただきました、と余計なひとことも言わずにいられないほど、ゆったりした気分でソファーに身をしずめた。

2018年10月31日水曜日

匂いを嗅ぐ

近所のお寺でもらった、かりんのおしりの匂いを嗅ぐ。
かりんのおしりは、きりっとした晩秋の匂い。


椅子には、あの古道具屋さんの匂いがまだしみついている。
甘さのない、枯草のような匂い。


朝は一杯のコーヒーを淹れる。
コーヒーは朝の匂い。


寝る前には、部屋を好きな匂いで満たす。
旅に出るときの、浮足立った匂い。
寝るのも、旅に出るようなものだから。


「サロン・ド・こけし」の女主人のオードトワレの香りが好きだ。
あまくてスキャンダラスな、背筋が伸びる匂い。
女主人にとても似合っていて、時間とともに変化するどの香りも好きだ。


寝るときに身にまとうのはシャネルの5番を数滴よ、とマリリン・モンローのように言ってみたいものだけれど、そんなことをほざいたら通報ものだなぁ。
「きせかえブティック メンキー&ノンキー」には、似合う洋服だけでなく、そのときに必要な香りや花なんかも、あるんです。

2018年10月29日月曜日

セネガルの夜は更けて

打合せをしている間ずっと、階下のレンタルスペースからのおいしそうなにおいと複雑なリズムにのせた激しい歌声が気になっていた。
すべてが終わって階下を確認すると、そこにはすらりと背の高い、無駄な肉のついていない、おもいおもいのおしゃれをした黒人男性のみが食事や歌、おしゃべりを愉しんでいた。

これはいったいなんなのだろうね、と友と呆然と眺めていると、ギンガムチェックの布に身を包んだひときわ長身の男性が「どうぞ、セネガルの料理を食べていってください」と、きれいな日本語で言った。
先ほどからのおいしそうなにおいに空腹を刺激されていた私たちは、おそるおそる建物の中へ入った。


オーソドックスな味付けのサラダに始まり
 セネガルの主食らしい短いビーフンや
 大きなチキンやクスクス、
 これまた大きなラム肉
 デザートに、ドーナッツや なつめやし
 くだものもきれいに盛り付けてあった。
驚くべきことにすべて無料で、道行く誰にでもふるまわれていた。



海外出張の多かった友は、セネガルはイスラム教だよね、イスラム教は人に施すことで徳が高くなるらしいよ、だからありがたくいただこう、と言った。

味はどう?おいしい?と声をかけられたり、お肉ばかり食べてちゃだめだよ、野菜も食べなきゃ、と笑われたり。
セネガル男性たちのファッションは実にさまざまで、セクシーなスーツでドレスアップしていたり、民族衣装に身を包んでいたり、太い首飾りをしていたり。

お言葉に甘えて、おなかいっぱいごちそうになりながらも、これは夢かなぁと友と確認し合う。

誰にともなく、ごちそうさまでした、とお礼を言って外へ出た。
外で煙草を愉しんでいたセネガル男性に、なぜ無料なのか訊ねると、その日はイスラム教のマガルトゥーバというお祭りなのだそうで、世界中の信者がお祝いしているんだ、とのことだった。始祖のアーマドゥ=バンバがいかにすばらしいかをアツく説明してもらい、夜22時までやっているから、おなかが空いたらまたおいで、と言われた。

お酒一滴も飲んでないのに酔っちゃったね、と友と「喫茶ニャーゴ」へ。
いまセネガルのごちそうをいただいて、と言うと店主は、ぴったりのコーヒーを淹れてくれた。
さっきまでのできごとが夢でないことを確認するように、まわりのみなさんにセネガルのお料理について語る、語る。帰り道で会ったひともつかまえて、語る、語る。
なんだか落語のようなできごとだったけれど、落語とちがうのは、サゲがなかったこと。
サゲどころかマクラもないような、ある日の不思議なできごと。